Episode1:THE SCHOOL EDIOT
「えぇ~前回の授業の最後に話したとおり『水』とはH2Oの分子構造で出来ている物。いわゆる物質だ。今日勉強するのはその物質がもたらす力学になるぞ。みんなは『水圧』っていう言葉を目にしたことはあるか? または耳にしたことでもいいぞ? 小室。どうだ?」
「わかりません」
「何?」
「わからんよ。ハゲ」
小室流美。進刻高校1年の夏。やる気がなくなっていた。
「担任の俺を相手にいい度胸だ。停学処分から戻ってきて反省なしか。おい」
「殴れば?」
「何だと?」
「虐めようとしてきた奴がいたからやり返しただけだよ。何で私が2人を相手に愉快犯で暴力を働くワケ? ハゲのアンタはその本で気にいらない生徒がいれば、頭をポンポン叩くって言うのにさ。懲戒休職だってないでしょ?」
クスクスと笑い声があがる。
「笑うな! いいだろう!! 小室!! あとで職員室に来い!!!」
流美がいるクラスの担任であり、物理教師にして水泳部と陸上部の顧問を担う高畑清志は今よりも激しく生徒を叱るのに手をあげる教師であった。
事の発端は流美が所属している陸上部の練習後に同部活に所属する生徒2人に恐喝を受けたことからだ。それも黒人であるが為に部活をやめろという内容で。流美はそもそも中学時代に陸上部で好成績を残し全国大会に出場した経歴がある。しかし、3年生の時に大きな怪我を負ってしまって引退を余儀なくした。残りの中学生活を部のマネージャーとして励むことに。しかし、それをいい事に彼女へ辛辣な嫌がらせが始まる。靴のなかに画鋲を入れられて『走れないアフリカ人はアフリカに帰れ』と言った置手紙が靴箱の中に入れられる事も……
それでも彼女は誰にも相談しなかった。
学校推薦で私立高校である進刻高校に入部。中学時代に自分へ嫌がらせをしてくる輩は男子だったし、男子のいない女子高なら嫌な思いをせずに陸上部に没頭できる。そう思っていたが……
「歯が折れたっていうのだぞ? 謝ったのか?」
「別に。やめないと痛い目をみるって言われたから先に痛い目に遭わせただけ」
「いいか。俺が本や手で戒めのために頭を叩くのとお前が気に入らない奴を殴るとでは意味が違う。どんなにお前に正義があっても、手をあげてしまったのなら、お前は立派な悪党だ。そうでなくす為には真っ当に生きろ。謝る時にはちゃんと謝る。お前が中学時代に立派なランナーだったことはよく聞いている。大会にもまだ間に合う。水野さんも火村さんも隣のクラスだ。大したことじゃないだろう」
「何であの2人にサンづけなんだよ。バカヤロウ」
「そりゃ……それだけ認められているからだ。日々の行いは評価されるものなの。もう時間になる。今日の部活に間に合わせろ。まだ間に合うから。まだな。未来を棒に振るな」
高畑は流美の肩をポンポンと軽く叩いて立ち上がる。
間もなくチャイムが鳴る。
流美は溜息をつく。
彼女は「あの野郎のせいで遅刻だよ」と言おうとしたところで背後から小突く奴がでてきた。
そこに立っているのは髪が赤い女子生徒。同じ赤の上履き。同じ1年生?
「こんなところなんてサボらない?」
「サボる?」
「今日、退学届けだして」
「へぇ。お疲れ様でした」
流美はそう言い残してそそくさと次の授業がある教室へ向かう。
「放課後! 学校近くの歩道橋の下! 待っているね!」
彼女の大声が嫌に残る。
ーー映画「ギャルズ・リターン」にコメントを!
倉木リアナ:久しぶりの映画出演でした。個人的に思いだしたのはドラマ「碧」の服部碧でしたけど、彼女とはまたひと味違う……特殊な青春時代を生きた役だったと思います。観ていて辛い場面っていうのが結構多いと思うんですけど、でも、そのなかでキラリと光るモノが私の演じる流美だったり、すず監督が演じる里琴だったりにあると思います。伝わるといいな。すずさんは本当に素敵な監督さんにして女優さんです。ぜひ劇場で観て体感してください♪♪♪




