表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『辺境伯一家の領地繁栄記』第二章:スキル育成記~最強双子、成長中~  作者: 鈴白理人
今日もアクアオッジ家は平和です

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/34

㉛二人の女の正体


 エルと呼ばれた少女が穴のあったほうへ手を伸ばすと、小さな布がふわふわと踊りながら吸い寄せられるように手に収まった。

 火柱の中に吸い込まれて、とてつもない高温の只中にあったはずなのに、燃えることも、焦げることすらなく綺麗な布片のまま、初めて見た時の艶を保っている。



「……その布」

 アンドリューは驚きで目を見開いた。



 忘れもしない……


 アクアオッジ領の商業都市で、双子たちが母親の誕生日プレゼントとして購入した魔王国の裁縫針箱に、不死鳥(フェニックス)の羽根を使ったフェルトが入っていた──もう五年も前のことだ……



「あらあら? 見たことあるのね? この不死鳥(フェニックス)のフェルトは火を鎮めるのに母に借りてきたの」


(母、だって!? ということは……)

「……貴女たちは……」



「アンドリュー! どこだ! 無事か!?」


 最後まで言い終わる前に、ざわざわと人の気配がしたかと思うと、兄の声がした。


「まあ、大変。ケイ、彼が来ちゃうわ。逃げましょ♪」

「おっと……王太子殿下か。了解。じゃあな! 少年」


 声とは反対方向に二人が音も無く立ち去り、姿が見えなくなった途端、兄が凄まじい速度で走って来る。日頃から冷静な王太子の顔はなく、理性よりも弟を失いかねない恐怖が先に立っていることが一目でわかった。


「アンドリュー! 無事か!」


(いつもこの兄は心配してくれるんだな……)

 面映ゆいが有難くもあり、アンドリューは心が温かくなる。



「はい。二人の女性が浄化を──」

 そこまで言うと、いきなりがばっと両肩を掴まれて揺さぶられた。

(すごい力だ。どうしたんだ兄上は……)


「やはり、聖女がいたのか! 光柱が立ったからそうだとは思ったのだが──」


 この慌てようはどういうことだろう? それに聖女?

「……兄上?」


「い、いや……なんでもない。聖女は何か言ってなかったか?」


 王宮で父も話していた通り、やはりエルと呼ばれていたのは聖女だったようだ。


(兄上から逃げると言っていたことは……言わないほうがいい気がする)

「いえ……なにも」


「そうか……」



 黒装束の男たちは拘束され連行されていった。

 この後尋問することになるだろうが、タウン・ハウスに何があったのか詳しく知らされていなかったようだから、肝心な情報を聞き出すことはできないだろう。




 ◇ ◇ ◇



 

 

 エルとケイという呼び名が、名の頭文字からだと分かったのは、王宮に帰ってきてからだった。


 エル=Lydia(リディア)、ケイ=Kara(カーラ)

 どうして本来の名前を使っていないのかは分からないが──

 


 アンドリューはその名前が、双子の二人の姉の名なのだということを知っている──


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ