㉚【鑑定スキル】の弱点
背の高いほうの女が、見事な仕草で剣を鞘に収めて近付いてくる。
同じように【鑑定スキル】を試みるが、こちらも同じように弾き返された。
「……ッ」
「おや、私にも【鑑定スキル】を使ったのかい? 私のスキルで弾いてしまうから、痛かっただろう。すまないな」
(……僕の手に負える相手じゃない)
この女たちはいったい何者?
"小僧。そうしょげるな。こやつの【スキルツリー】の豊富さは目を見張るものがあるからのう"
「今日はよくしゃべるな、グランディエル」
呆れたように肩をすくめる仕草が絵になる。
(……驚いた。かなり背が高いんだな……)
すぐ近くにいると、女の背が自分より高いことに気付いて、アンドリューは目を見張った。
もう父の背は追い越したし、兄ともそう変わらないくらい今年に入って伸びている。毎日骨が軋んで痛いのは成長痛だと、侍医に言われていた。
"よいではないか。伸びしろのある人間に出会うのも久々だからな……伸ばすのも停滞するのもその者次第じゃが"
(やっぱり剣がしゃべってる)
間違いなく剣がしゃべっているのが近くにいるとよく分かる。鞘が微かに震えるからだ。
「……もう一つ教えて上げないのかい? エル。【鑑定スキル】の弱点を」
ペシっと鞘を叩いて苦笑しながら女が言う。
"あうちっ"という剣の声は完全に無視されている。
(聖剣……なのに)
「……あらあらケイさん。──そうね。あの子たちとも縁があるみたいだし……」
そう言って小柄な女のほうが微笑んだ。
「あまり【鑑定スキル】を信用しないほうがよくてよ? 貴方たちが倒した悪魔はそれほど強い奴じゃなかったから、ちゃんと鑑定出来たかもしれないけれど、悪魔族の王族には通用しないし、【偽装スキル】を持つ者もいるの……」
「というか、結局は魔力総量がものを言うんだよな。頑張って鍛えるといい」
言葉だけ捉えれば『何を偉そうに』となるのかもしれないが、目の前の女はどこまでも自然体なのがよく分かる。元々面倒見のよい資質の持ち主なのだろう。
器が違う──
素直にそう思える何かがあったので、アンドリューは頷く。
自分だってこれからだ。聖剣も言ってたじゃないか。伸びしろはまだあるはず。




