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『辺境伯一家の領地繁栄記』第二章:スキル育成記~最強双子、成長中~  作者: 鈴白理人
今日もアクアオッジ家は平和です

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㉙発動しない【鑑定スキル】


 蒼竜ヴィアスソライルは、やっと終わったとばかりに羽を広げた。

「先にドラゴン留まりに戻っておく」


「分かった」

 

 バサッと音がしたかと思うと、ドラゴンはあっという間に飛び上がり、見えなくなった。


(相変わらずあっさりしているんだな)

 だが、その淡白なところが、アンドリューには心地よかった。

 周りには隙あらば近寄ってくる人間が後を絶たないから──


 だからこそ、メリルのことを気に入っている自覚もある。

(僕の身分に媚びへつらわない、数少ない一人でもあるから……)

 名前を間違えないで言ってくれる日はくるのか。それはまた別の問題だ。


(それに……)

 ドラゴンが自分の側にいるのが何となく腑に落ちた。


(王宮に戻ったら、話し合わないといけないだろうな……)

 おそらく最初からこういう事態を想定していたのだろう。アクアオッジ家と繋がりがあるのも条件だったのかもしれない。


 今後も、この国が数々の陰謀に巻き込まれていくのは間違いない──




「あらあら。ドラゴンは素早いわね」


 メリルに会いたい……王子がそう思っていると、背の低いほうの女が痛そうに喉をさすりながら、かすれた声で言った。


 無理もない。

 聖竜の手を借りなければならないほど、滅するのが手ごわい呪物でもあったのだ。


 

「塀は『呪いの核』が外部に漏れないように設置したのでは?」


 アンドリューは質問する。目的が同じだということが分かったので、それくらいは許されるだろう。『設置した急ごしらえの塀がいい働きをした』という言葉が気になったのだ。


「……ふふっ、逆よ。あの塀は中に入れないように、ではなく、外にいるわたくしたちの動向を掴まれないように作らせたの」


「……え?」

(それは、どういう?)

 また疑問だ。余りにもいろんなことが一気に押し寄せて、混乱気味のアンドリューはそう思った。


「塀で囲ったこの場所は、敵をおびき寄せる囮として作らせたの。見事に引っかかってくれたと思わない? 予定外の男の子も釣れちゃったけれどね」


(男の子、だって? 自分だって僕とそう変わらない年じゃないか)

 丁寧な言葉使いだが、アンドリューとそれほど目の前の少女は年は違わない。二、三歳ほど年上だろうか、という年齢に見える。


 ──鑑定してみるしかない。素性も分からないままなのだから。



 アンドリューの瞳に蒼光が煌めき、目の前の女性をまっすぐ見つめた。


【鑑定スキル】


 左目にいつもの魔法陣が出現し──その途端、バチッと魔法陣がはじけ飛び、雷のような閃光が走って、瞬間的な痛みに思わず王子は左目を手で覆った。脳膜に焼き付いた残像がしばらく消えず、冷たい汗が背を伝う。


「……ッ!!」


「……あら……貴方、【鑑定スキル】持ちなのね……。いいことを教えて上げるわ。相手の魔力総量のほうが多くて、鑑定されることを望んでいない場合はそうなるのよ」


(なんだって……!?)


 鑑定能力に自信のあったアンドリューは、余りの衝撃に目を見開いた。



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