㉘集った者たち
「……始めるぞ」
蒼竜ヴィアスソライルの青紫の瞳が穴の上に浮かぶ黒玉を射抜いた次の瞬間、空気が幾重にも振動し空気が爆ぜた。
白銀の髪が巻き起こった風になびくと、背から透明な竜翼の幻影がばさりと広がり、瘴気を圧するように羽ばたいた。
澄んだ歌声が光の精霊たちの歌声を導き、ついで背の高い女が聖剣を掲げると、螺旋を描いて光が満ちる。そこに竜の幻翼が力強く羽ばたいて、夜空に白と蒼の奔流が迸り、眩い光柱がドン、と音を立てて出現した。
轟音が怨嗟の声を呑み込んで、瘴気が絶叫のような音を立てて消失していく。
黒玉は最期の抵抗のように脈打ち、表面に黒い裂け目が幾筋も走った。
瘴気が何度も吹き出し、光柱から飛び出しては逆流して伸び上がる。
喉の痛みに耐えながら、だろうか……背の低いほうの女はクライマックスに至る声を高く上げ、口の中に血の味が広がっても詠唱を止めなかった。
聖剣を掲げた女の腕は震え、いつもなら重量を感じない聖剣だったが、今にも取り落としそうな重圧に耐えながら姿勢を崩さない。
蒼竜の幻翼は何度か羽ばたいたあと、大きく揺らいで搔き消えた。
上半身をぐらりと傾けた人姿の蒼竜が膝をつく。
「ヴィアスソライル!!」
アンドリューが駆け寄ろうとすると、蒼竜が片手を上げて「来るな」と制した。
次の瞬間──
蒼竜ヴィアスソライルが本来のドラゴンの姿に戻り、姿を現した時の風圧と羽ばたきで周囲の塀が吹き飛ぶ。
聖なる歌と光と、力強く羽ばたいた蒼竜の翼から放たれた風が一つとなって、怨嗟を押し流す奔流へと変わった。
黒玉は悲鳴を上げるように砕け散ると、粉々になった欠片ごと光柱とともに上昇し、夜空へと吸い込まれていった。
轟音が途切れた瞬間──世界から全ての音と気配が引きはがされたかのように、光と音と風が一斉に消え失せ、静寂が訪れる──
(……終わったのか?)
アンドリューは無意識に息を詰めていたことに気づき、ようやく大きく息を吐きだした。




