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パーティをクビになった荷運び、実はアイテムボックス容量が無限だった ~王国軍の補給を一人で支えています~  作者: 水原伊織


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第九話 英雄ではなく荷運び――無限収納が命をつなぐ

「補給だぁぁぁ!!」


兵士たちが雪原へ飛び出してくる。

その勢いに、俺のほうが少し驚いた。


「回復薬があるぞ!!」

「食料だ!!」

「毛布まで来た!!」


疲弊し切っていた兵士たちが、次々と物資へ群がる。

中には、その場で泣き崩れる者までいた。


「助かった……」

「生き残れる……!」


隊長格の男も、呆然と物資の山を見つめていた。


「本当に……来たのか……」


彼はゆっくりこちらを見る。


「お前、一人で来たのか?」


「そうだけど」


「馬車なしで?」


「邪魔だったから置いてきた」


隊長の顔が引きつった。

周囲の兵士たちまで固まる。


「邪魔……?」

「この吹雪の中を……?」

「いや待て、補給量おかしいだろ……」


俺は首を傾げた。

そんなに変か?


その時、一人の若い兵士がこちらへ走ってきた。


「もしかして……!」


息を切らしながら、俺の肩を掴む。


「グラン砦から来た人ですか!?」


「ああ」


兵士の目に涙が浮かぶ。


「伝令が来てたんです……!

“補給を運ぶ化け物が来た”って……!」


……誰だそんなこと言ったの。


その時、砦奥から苦しげなうめき声が響く。


「っ……!」


兵士たちの顔が曇る。


隊長が低く言った。


「負傷兵が多い」


「回復薬は?」


「もう尽きていた」


なるほど。


俺は収納を開く。


――《排出》。


大量の回復薬箱を、診療所前へ並べた。


兵士たちが息を呑む。


「まだあるのかよ……」

「どんだけ入ってるんだ……」


その時、診療所から白衣の女性が飛び出してきた。


「回復薬!?」


箱を開け、中身を見た瞬間、彼女の顔色が変わる。


「高級回復薬まで……!?」


「重傷者用に持ってきた」


「…………」


数秒固まった後、

彼女は勢いよく俺の両手を掴んだ。


「ありがとう……!」


ものすごい勢いだった。


「これで助かる命があります!」


……そんなにか。


正直、俺はまだ実感が薄い。

今までだって、ただ荷物を管理していただけだ。


---


「おい見ろ」


兵士の一人が呟く。


診療所へ運ばれていく回復薬。

温かい食事を受け取る兵士たち。

毛布に包まり、安堵して泣く若い兵。


その光景を見ながら、隊長が静かに言った。


「補給ってのは、こんなに重要だったんだな……」


俺は少し苦笑した。


「今さらか?」


「……違いない」


隊長まで笑う。


その時だった。


見張り台から、再び鐘が鳴った。


ゴォォォン!!


空気が変わる。


兵士が叫ぶ。


「魔物群接近!!」


またか。


だが今回は、兵士たちの顔が違った。


誰も絶望していない。


武器がある。

回復薬がある。

食料もある。


戦える。


隊長が剣を抜き、ニヤリと笑った。


「今回は負ける気がしねぇな」


兵士たちが歓声を上げる。


その中で、俺だけが別のことを考えていた。


……これ。

前線まで物資を直接出せば、もっと楽なんじゃないか?

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