第十話 前線へ直接補給――無限収納が戦術を変える
「……これ、前線まで直接出せばいいんじゃないか?」
俺の呟きに、周囲の兵士たちが固まった。
隊長が眉をひそめる。
「何を言ってる?」
「いや、だから」
俺は砦外の戦場を見る。
魔物群と交戦中の兵士たち。
補給兵が必死に矢や回復薬を運んでいる。
だが遅い。
雪で足を取られ、何人も転倒していた。
「わざわざ運ばなくても、必要な場所に直接出せばいいだろ」
数秒の沈黙。
「……は?」
隊長が間抜けな声を出した。
その時だった。
前線から悲鳴が響く。
「第三班、矢が尽きる!!」
「回復薬もない!!」
まずいな。
俺は雪原へ踏み出す。
「お、おいレクト!?」
◆ 前線へ
隊長の制止を無視し、前線近くまで歩く。
兵士たちが魔狼に押し込まれていた。
盾役の兵士が叫ぶ。
「矢を!! 早く!!」
だが補給兵はまだ遠い。
間に合わない。
なので。
――《排出》。
次の瞬間、兵士たちの真横に大量の矢箱が出現した。
「なっ!?」
弓兵たちが目を見開く。
さらに、
回復薬箱。
予備の剣、盾。
必要物資を、戦線後方へ次々と直接出していく。
兵士たちが叫んだ。
「補給が湧いたぞ!!」
「なんだこれ!?」
「回復薬が目の前にある!!」
混乱しながらも、兵士たちは即座に物資を使い始める。
◆ 戦況が変わる瞬間
そこからは、戦線が一気に押し返し始めた。
「いける!!」
「押し返せぇぇ!!」
弓兵の矢が止まらない。
前衛は傷を即座に回復。
武器破損も即交換。
今まで絶対に起きなかった光景だ。
隊長が呆然と呟く。
「補給兵が……要らん……?」
「いや要るだろ」
俺は即座に否定した。
「あの人たちいないと整理できないし」
実際、物資管理はかなり大変だ。
種類も量も多い。
俺一人だと、何がどこにあるか分からなくなる。
「それでも異常だ!!」
隊長が叫ぶ。
周囲の兵士たちも頷く。
「前線に直接補給とか聞いたことねぇぞ!!」
「戦いながら回復薬補充できるとか何だよこれ!!」
「無限に戦えるじゃねぇか!!」
……無限ではないと思う、多分。
◆ 雪巨人
その時だった。
ズシン。
地面が揺れた。
兵士たちの顔色が変わる。
雪原奥。
吹雪の向こうに、巨大な影が現れていた。
「――雪巨人だ!!」
誰かが叫ぶ。
現れたのは、砦より大きな白い巨人。
Aランク級魔物。
兵士たちの顔から血の気が引く。
隊長が舌打ちした。
「最悪だ……!」
雪巨人は、普通の魔物とは違う。
生半可な攻撃では止まらない。
しかも今、前線は消耗している。
だが、俺は巨人を見上げながら、ふと思った。
……あれ。
もしかして。
「かなり大きい物でも収納できるのか?」
その瞬間、周囲の兵士たちが、一斉にこちらを振り向いた。




