第十一話 Aランク雪巨人、収納完了――荷運びが規格外すぎる
「……かなり大きい物でも収納できるのか?」
俺の呟きに、周囲の兵士たちが凍りついた。
隊長が絶叫する。
「待て!! その発想はやめろ!!」
だがもう遅い。
雪原の向こう――
吹雪を割って、白い巨影が姿を現した。
ズシン。
ズシン。
一歩ごとに地面が震える。
兵士たちの顔が一斉に青ざめた。
「Aランク級……!」
「砦戦でもギリギリの相手だぞ……!」
吹雪で視界は最悪。
援軍も魔導士もいない。
普通なら“詰み”の状況。
だが俺は、別のことを考えていた。
「生き物って収納できるのか?」
「試すなって言ってるだろ!!」
隊長の悲鳴が吹雪に消える。
◆ 雪巨人の一撃
雪巨人が腕を振り上げた。
氷塊が空を裂く。
直撃すれば砦ごと吹き飛ぶ。
「来るぞ!!」
兵士たちが叫ぶ。
俺は雪巨人へ手を向けた。
――《収納》。
世界が止まった。
次の瞬間。
雪巨人が、
消えた。
吹雪だけが静かに流れていく。
「…………は?」
兵士の一人が、魂が抜けた声を出した。
◆ 兵士たちの脳が追いつかない
「消えたぁぁぁ!?」
「どこ行った!?」
「え、何が起きた!?」
隊長が頭を抱える。
「なんで収納できるんだよ!!」
いや、俺も驚いている。
収納空間を意識すると――
雪巨人が普通に入っていた。
……入るんだ。
兵士たちが震える声で言う。
「……倒したのか?」
「いや、生きてる」
「生きてるのかよ!!」
混乱がさらに加速する。
その時だった。
収納空間の中で、
ドンッ! ドンッ! と暴れる音が響いた。
……うるさいな。
俺は少し考える。
そして。
――《排出》。
◆ 雪巨人、処理完了
ドゴォォォォン!!
雪巨人が、遥か後方の雪山へ射出された。
山肌に激突し、
巨大な雪崩が巻き起こる。
白い巨体はそのまま雪に飲まれ、
完全に埋まった。
静寂。
兵士たちが口を開けたまま固まる。
やがて隊長が震える声で言った。
「……今、何した?」
「収納して捨てた」
「説明になってねぇ!!」
その瞬間、兵士たちが爆笑し始めた。
「ははっ……!」
「Aランク魔物を荷物扱いすんな!!」
「補給官じゃなくて災害だろ!!」
絶望寸前だった空気が、
一気に吹き飛んだ。
「勝てるぞ!!」
「こんなの味方にいるとか反則だろ!!」
「補給官最強!!」
いや、俺は荷運びなんだが。
◆ 王都からの使者
その時、砦側から兵士が駆けてきた。
「隊長!! 大変です!!」
「今度は何だ!!」
兵士は興奮した顔で叫ぶ。
「王都から使者が!!」
「……王都?」
嫌な予感しかしない。
使者が差し出した書状には、こう書かれていた。
――至急、王城へ出頭せよ。王命である。
……やっぱり嫌な予感しかしない。




