第十二話 王命と急報――荷運びに国家が動き出す
「――至急、王城へ出頭せよ。王命である」
書状を読み上げた瞬間、
砦中の空気が凍りついた。
兵士たちがざわめく。
「王命……?」
「王城直通って、国家レベルじゃねぇか……」
「そりゃAランク魔物収納したしな……」
なんか俺が国家危険物みたいな扱いになってないか。
使者がこちらをじっと見つめる。
「あなたがレクト殿ですね?」
「そうだけど」
「……本当に荷運びなのですか?」
「荷運びだが」
使者は黙った。
完全に納得していない顔だった。
◆ バルク到着
その時、砦の門が開き、バルクが雪を払って入ってきた。
「王命だと?」
書状を見た瞬間、彼は頭を抱えた。
「……早すぎる」
「何が?」
「お前の情報が王都に届くのがだ」
バルクは深くため息をつく。
「普通なら数週間はかかる」
「今回は?」
「半日だ」
……嫌な予感しかしない。
◆ 砦の復活
その時、砦奥から歓声が上がった。
「負傷兵が回復したぞ!!」
「温かいスープだ!! 食えるぞ!!」
昨日まで死にかけていた兵士たちが、
今は笑っている。
絶望の砦が、
一晩で息を吹き返していた。
隊長が静かに言う。
「……本当に救われた」
彼は真っ直ぐ俺を見る。
「お前が来なければ、この砦は終わっていた」
「大げさだろ」
「大げさじゃない」
周囲の兵士たちも頷く。
「補給切れは死だ」
「食えなきゃ戦えねぇ」
「回復薬がなきゃ仲間が死ぬ」
その言葉には、
戦場を生きてきた者の重みがあった。
俺は視線を逸らす。
……慣れないな、こういうの。
ただ荷物を運んでいただけなのに。
使者が小さく呟く。
「……王国が放っておくわけないか」
「?」
「いえ、何でも」
だがその顔は、明らかに深刻だった。
◆ 王都へ
翌朝。
俺は王都へ戻るため、軍用馬車に乗り込んでいた。
砦の入口には、見送りの兵士がずらりと並んでいる。
「また来てくれよ!!」
「次は酒用意しとくぜ!!」
「補給官殿ーー!!」
……補給官で定着してるな。
その中から、あの若い兵士が駆け寄ってきた。
弟がいると言っていた兵士だ。
「ありがとうございました!」
彼は深く頭を下げる。
「弟、生きてました!」
……そうか。
俺は少しだけ笑った。
「それは良かった」
兵士は涙ぐみながら、何度も頭を下げる。
その様子を見て、バルクが呟く。
「お前、自覚ないだろ」
「何が?」
「人を救ってる自覚だ」
……そうなのか?
俺は首を傾げた。
◆ 王都からの急報
その時だった。
王都方面から、
雪煙を巻き上げながら騎馬隊が突っ込んでくる。
速い。
尋常じゃない速度だ。
先頭の騎士が馬から飛び降り、叫んだ。
「レクト殿はいるか!!」
なんだ今度は。
騎士は息を切らしながら続ける。
「王都で大規模火災が発生!!」
砦中の空気が凍る。
「避難物資と消火用水の輸送が間に合いません!!」
そして、騎士は俺を見て叫んだ。
「至急、力を貸してください!!」
……また補給か。
いや、
補給“だからこそ”俺の出番か。




