第三十二話 収納事故
【王国軍補給物資】
その文字を見た瞬間。
砦内が静まり返った。
兵士たちが、
ゆっくり俺を見る。
「……レクト殿?」
「なんだ」
「まさかとは思いますが」
嫌な流れだ。
隊長が震える声で言う。
「今まで収納した物資」
「はい」
「たまに落としてました?」
……あ。
俺は少し考える。
そういえば。
収納したあと、
たまに妙な振動があった気がする。
監視者が、
静かに口を開いた。
「貴様の収納」
「時々“漏れる”」
最悪だった。
兵士たちがざわつく。
「漏れるってなんだよ!?」
「収納じゃねぇのか!?」
「配送事故じゃねぇか!!」
やめてほしい。
その時。
コンテナの扉が、
ゆっくり開いた。
ギィィ……。
中には。
大量の保存食。
回復薬。
そして。
なぜか雪巨人の腕。
「ぎゃぁぁぁ!!?」
兵士たちが悲鳴を上げる。
俺もびっくりした。
「なんで混ざってるんだ?」
監視者が即答する。
「整理不足」
「すみません……」
怒られた。
監視者は真面目な声で続ける。
「本来、異界収納には区画管理が必要」
「危険物」
「生物」
「魔力物資」
「可燃物」
「分類必須」
完全に倉庫管理講習だった。
その時。
王女が小さく笑う。
「……なるほど」
「何が?」
「レクトは今まで、“世界規模の倉庫”を無免許運営していたわけですね」
言い方が酷い。
だがセレフィナまで頷いた。
「しかも管理者不在で」
やめてくれ。
すると監視者が、
再びこちらを指差した。
「故に教育必要」
嫌な予感しかしない。
「本日より」
「異界物流講習開始」
兵士たちが吹き出した。
「講習!?」
「世界崩壊寸前なのに!?」
監視者は真面目だった。
「基礎大事」
正論だった。
その時。
また別の裂け目が開く。
全員が身構える。
そして。
ドサドサドサッ!!
空から大量の物が降ってきた。
兵士たちが慌てて避ける。
落ちてきたのは。
大量の木箱。
さらに。
巨大な岩。
燃えた荷車。
そして。
「うわぁぁぁぁ!!」
人が落ちてきた。
全員が固まる。
地面へ転がった男は、
ボロボロの姿で叫ぶ。
「やっと出られたぁぁ!!」
……誰?




