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パーティをクビになった荷運び、実はアイテムボックス容量が無限だった ~王国軍の補給を一人で支えています~  作者: 水原伊織


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第三十話 収納空間の主

「――返せ」


低い声が、世界そのものを震わせた。


兵士たちは完全に硬直している。


空に現れた黒い巨人。

その異形が、真っ直ぐ俺を見ていた。


そして、明確に怒っている。


「えっと……何を?」


俺が聞くと、周囲がざわついた。


「聞くのかよ!?」


「そこ!?」


バルクが頭を抱えている。


だが、黒い巨人は答えた。


「静寂を」


静寂?


巨人は続ける。


「均衡を」


「秩序を」


なんか壮大だな。


その時、セレフィナが、青ざめた顔で呟いた。


「空間管理者……」


「知ってるのか?」


王女が聞く。


セレフィナは震える声で答えた。


「古代帝国の禁書にのみ存在する概念です」


嫌な予感しかしない。


「世界の裏側」

「異空間層」

「空間維持機構」


難しい。


つまり?


セレフィナは、

信じられないものを見る顔で言った。


「レクトの収納先、“世界の管理領域”です」


……はい?


兵士たちも固まっている。


バルクが遠い目になった。


「お前さぁ……」


「いや知らないって」


本当に知らない。


すると黒い巨人が、再び口を開く。


「我は監視者」

「境界の管理者」

「侵入者を拒絶する者」


長い。


だが次の瞬間、その黒い顔が、わずかに歪んだ。


「……だが」


妙な間があった。


「貴様は異常だった」


なんか怒られる流れだ。


「通常、異物は少量」


「だが貴様は違う」


巨人の声が響く。


「山」


「湖」


「怪物」


「砦級魔獣」


「燃焼物」


「土砂」


数えるな。


恥ずかしい。


兵士たちもなんか気まずそうな顔してる。


そして、巨人は静かに言った。


「特に“砦喰らい”」


「あれ暴れすぎ」


知らんがな。


その瞬間、砦内の兵士たちから、変な笑いが漏れた。

緊張しすぎて、逆におかしくなってる。


黒い巨人は急に黙った。


そして、じっと俺を見る。


「……しかし」


嫌な間だ。


「貴様の世界、魔力濃度が低すぎる」


「は?」


「崩壊寸前だ」


空気が変わった。


セレフィナの顔色が変わる。


王女も真剣な顔になった。


巨人は続ける。


「本来、空間裂け目など発生しない。だが世界が弱っている…境界が薄い」


その黒い目が、ゆっくり空を見上げる。


「近いうちに、“外側”が来る」


兵士たちが息を呑む。


外側?


なんだそれ。


----


その時だった。


黒い巨人が、突然こちらへ手を伸ばした。


兵士たちが絶叫する。


「来るぞぉぉ!!」


その巨大な手は、俺の前で止まった。


「貴様」


黒い巨人は静かに言う。


「責任を取れ」


嫌すぎる。


さらに続ける。


「世界を支えろ」


もっと嫌だった。

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