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パーティをクビになった荷運び、実はアイテムボックス容量が無限だった ~王国軍の補給を一人で支えています~  作者: 水原伊織


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第二十九話 無限収納の正体

「……あれ、“レクトの収納空間側”から来てます」


王女の言葉で、空気が凍りついた。


「は……?」


俺も固まる。


収納空間?

あれが?


空の裂け目から、巨大な黒い腕がさらに伸びる。


ギギギギ……。


空間そのものを軋ませながら、

異形がこちらへ近づいてくる。


兵士たちは完全に恐慌状態だった。


「なんだあれぇぇ!!」

「砦壁よりデカいぞ!?」

「無理だ!!」


騎士たちも顔を青くしている。


---


## ◆ 収納空間の“正体”


だが、セレフィナだけは必死に何かを考えていた。


「……そういうことですか」


バルクが聞く。


「分かったのか?」


セレフィナは裂け目を見上げたまま言う。


「レクトの収納空間は、“倉庫”ではありません」


嫌な前振りだ。


「別世界接続型です」


全員が沈黙した。


意味が分からない。

俺も分からない。


セレフィナは続ける。


「本来、収納魔法は小規模圧縮で成立しています」

「だがレクトの容量は異常」

「つまり、内部へ物を保存しているのではなく――」


そこで言葉を切る。


「どこか別の空間へ、送り込んでいる」


兵士たちが青ざめる。

バルクが引きつった顔になる。


「……じゃあ何か?」


「今まで収納してた大量物資や魔物は」


セレフィナが頷く。


「全部、“向こう側”へ落ちていた可能性があります」


……俺、とんでもないことしてないか?


---


## ◆ “向こう側”の怒り


裂け目の奥から、咆哮が響いた。


グォォォォォォッ!!


空気が震える。


兵士の一人が膝をついた。


「う、動けねぇ……!」


圧だけでこれか。


その時、俺はふと気づく。


「あれ?」


セレフィナが即反応する。


「どうしました!?」


俺は裂け目を見る。


「なんか怒ってる?」


全員が固まった。


……いや、だって、よく見ると、あの黒い目。

めちゃくちゃこっち睨んでる。


セレフィナが青ざめた。


「まさか……」


王女も何かに気づく。


「レクト」

「なんだ」

「あなた、収納空間へ何を入れてきました?」


俺は少し考える。


「土砂」

「大量物資」

「雪巨人」

「砦喰らい」


言うたびに、周囲の顔色が悪くなる。


そして最後に。


「あ、あと燃えてる貯水池」


セレフィナが頭を抱えた。


「最悪です……」


「えぇ……」


セレフィナは真顔だった。


「向こう側の存在から見れば」


「突然、大量のゴミと怪物を投げ込まれ続けたんですよ?」


……あ。


それはちょっと怒るかもしれない。


---


## ◆ “向こう側”の主


その時だった。


裂け目が、完全に開いた。


バキィィィン!!


空が砕ける。


そして、巨大な“何か”が、ゆっくり姿を現した。


黒い巨人。

空間そのものみたいな存在。


兵士たちが絶望した声を漏らす。


「終わった……」


その異形は、真っ直ぐこちらを見たあと。


なぜか、俺だけを指差した。


そして言った。


「――返せ」


低い声が、世界に響いた。

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