表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パーティをクビになった荷運び、実はアイテムボックス容量が無限だった  作者: 水原伊織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/4

第三話 国家級依頼

「今まで、一度も限界になったことがないんだ」


その言葉で、その場の空気が凍った。


商人も。


護衛も。


ギルド職員も。


全員が、

化け物を見る目で俺を見ている。


……そんなに変か?


確かに普通のアイテムボックスよりは大きいと思う。


だが俺は、

昔からこれが普通だった。


「レ、レクトさん……」


ミリアが恐る恐る口を開く。


「普通の収納スキルって、

木箱数個が限界なんですけど……」


「そうなのか?」


「そうなのか!? じゃないですよ!!」


ギルド職員たちが一斉に叫んだ。


俺は少し傷ついた。


すると商人が、

突然俺の手を掴む。


「頼む!! 明日も来てくれ!!」


「え?」


「いやもう護衛なんかよりあんたが欲しい!!」


「お、おい」


「報酬は払う! だから契約してくれ!」


周囲の冒険者たちがざわつく。


「マジかよ……」


「荷運び一人に頭下げてるぞ……」


「いやでも、あれ見たらな……」


その時だった。


ギルド奥の階段から、

重たい足音が響く。


現れたのは、

大柄な男だった。


灰色のコート。


胸には王国紋章。


周囲の空気が変わる。


「あれ……王国兵站局の……」


誰かが呟いた。


兵站局。


王国軍の補給を管理する部署だ。


男は真っ直ぐこちらへ歩いてくる。


そして。


「君がレクトか」


低い声で言った。


「……そうですが」


男は俺をじっと見る。


まるで品定めするように。


「先ほどの収納、見せてもらった」


……見られてたのか。


「単刀直入に言おう」


男は低く告げる。


「王国軍は現在、北方遠征で補給問題を抱えている」


周囲がざわついた。


北方遠征。


最近激化している魔物討伐戦線だ。


輸送路が長すぎて、

補給隊が壊滅しかけていると聞いた。


男は続ける。


「馬車輸送では間に合わん。食料も、武器も、

回復薬も足りない」


そして。


「君の力が必要だ」


ギルド中が静まり返った。


王国軍からの直接依頼。


普通の冒険者なら、

一生に一度あるかどうか。


だが俺は、

別のことが気になっていた。


「……ちなみに報酬は?」


その瞬間。


ミリアが吹き出した。


周囲の冒険者たちも笑い始める。


重かった空気が少し崩れた。


だが兵站局の男だけは真顔だった。


「成功すれば金貨五百枚」


笑い声が止まる。


金貨五百枚。


一般冒険者なら、

十年は遊んで暮らせる額だ。


「さらに王国契約職員として迎える用意もある」


……そこまでか。


男は真剣だった。


つまり王国軍は、

本当に補給で困っている。


俺は少し考える。


正直、

軍とか国家とかには関わりたくない。


面倒そうだし。


だが――


「北方って、かなり物資不足なんだろ?」


「ああ」


「保存食は?」


「不足している」


「回復薬」


「足りん」


「冬装備は?」


男が黙った。


……なるほど。


かなり酷いな。


俺は小さく息を吐く。


そして答えた。


「分かった。引き受ける」


その瞬間。


兵站局の男が、

初めて表情を崩した。


「助かる」


----


その頃――


勇者パーティ《蒼銀の剣》は。


王都の診療所で、

絶望していた。


「ポーションが……ない……」


青ざめたガルドが呟く。


包帯だらけのリシェルが震える。


「なんで……こんなことに……」


誰も答えられなかった。


今まで当たり前に存在していた補給。


それが、

どれだけ異常だったのか。


彼らはようやく、

理解し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ