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パーティをクビになった荷運び、実はアイテムボックス容量が無限だった ~王国軍の補給を一人で支えています~  作者: 水原伊織


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第三話 王国兵站局から国家級依頼が来る

「今まで、一度も限界になったことがないんだ」


その言葉で、場の空気が凍りついた。


商人も。

護衛も。

ギルド職員も。


全員が、化け物を見るような目で俺を見ている。


……そんなに変か?


確かに普通よりは大きいと思うが、

俺にとっては昔からこれが“普通”だった。


「レ、レクトさん……」


ミリアが恐る恐る口を開く。


「普通の収納スキルって、木箱数個が限界なんですけど……」


「そうなのか?」


「そうなのか!? じゃないですよ!!」


ギルド職員たちが一斉に叫ぶ。


……ちょっと傷ついた。


すると商人が、突然俺の手を掴んだ。


「頼む!! 明日も来てくれ!!」


「え?」


「護衛なんかより、あんたが欲しい!!」


「お、おい」


「報酬は払う! だから契約してくれ!」


周囲の冒険者たちがざわつく。


「マジかよ……」

「荷運び一人に頭下げてるぞ……」

「いやでも、あれ見たらな……」


その時だった。


---


## ◆ 王国兵站局の男


ギルド奥の階段から、重たい足音が響く。


現れたのは、大柄な男だった。

灰色のコート。

胸には王国紋章。


周囲の空気が一変する。


「あれ……王国兵站局の……」


誰かが呟いた。


兵站局――

王国軍の補給を統括する部署。


男は真っ直ぐこちらへ歩いてきた。


「君がレクトか」


低い声。


「……そうですが」


男は俺をじっと見つめる。

まるで“資源価値”を測るように。


「先ほどの収納、見せてもらった」


……見られてたのか。


男は名乗る。


「王国兵站局・第三補給監査官、バルド=ハーシェンだ」


肩書きの重さに、ギルドがざわつく。


「単刀直入に言おう」


バルドは低く告げた。


「王国軍は現在、北方遠征で補給問題を抱えている」


北方遠征。

最近激化している魔物討伐戦線だ。


「輸送路は凍結し、補給隊は三度壊滅した。

 食料も、武器も、回復薬も足りない」


ギルド中が静まり返る。


「君の力が必要だ」


王国軍からの直接依頼。

普通の冒険者なら一生に一度あるかどうか。


だが俺は、別のことが気になっていた。


「……ちなみに報酬は?」


ミリアが吹き出した。

周囲の冒険者たちも笑い始める。


重かった空気が少し崩れた。


だがバルドだけは真顔だった。


「成功すれば金貨五百枚」


笑い声が止まる。


金貨五百枚。

一般冒険者なら十年は遊んで暮らせる額だ。


「さらに王国契約職員として迎える用意もある」


……そこまでか。


つまり王国軍は、本当に補給で困っている。


俺は少し考える。


軍とか国家とか、正直面倒だ。

だが――


「北方って、かなり物資不足なんだろ?」


「ああ」


「保存食は?」


「不足している」


「回復薬」


「足りん」


「冬装備は?」


バルドが黙った。


……なるほど。

かなり酷いな。


俺は息を吐く。


「分かった。引き受ける」


その瞬間、バルドが初めて表情を崩した。


「助かる」


---


## ◆ その頃、《蒼銀の剣》


王都の診療所。


「ポーションが……ない……」


青ざめたガルドが呟く。


包帯だらけのリシェルが震える。


「なんで……こんなことに……」


誰も答えられなかった。


今まで当たり前に存在していた補給。

それがどれだけ異常だったのか。


彼らはようやく理解し始めていた。

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