第十六話 王城――王国兵站局長への任命
王城。
王都中央にそびえる白亜の巨大建築を見上げ、
俺は素直に思った。
「でかいな……」
「感想が田舎者なんだよなぁ」
隣を歩くバルクが呆れる。
いや、実際でかいだろ。
王城前には重装騎士たちが整列していた。
その数、軽く百を超える。
普通の冒険者なら足が震える光景だ。
だが騎士たちは、俺を見るなり一斉に敬礼した。
「レクト殿!」
「王国を救った英雄へ敬礼!」
……やめてほしい。
居心地が悪い。
◆ 王城内部へ
そのまま俺たちは王城内部へ案内される。
赤い絨毯。
巨大な柱。
豪華すぎる装飾。
歩くだけで疲れる。
すると、前を歩いていた第二王女が振り返った。
「緊張していますか?」
「場違い感はあります」
「ふふ」
王女が少し笑う。
その時、廊下の向こうから複数の貴族らしき男たちが現れた。
俺を見るなり、露骨に眉をひそめる。
「……平民?」
「しかも冒険者風ではないか」
「本当にこの者なのですか?」
聞こえてる。
案内役の騎士が低い声で答えた。
「王都火災を鎮圧し、北方砦を救った人物です」
貴族たちが固まる。
一人が乾いた声を出した。
「……この若者が?」
まあ、そうなるよな。
だが次の瞬間。
「失礼だぞ」
静かな声が響いた。
第二王女だ。
空気が一変する。
王女は貴族たちを真っ直ぐ見た。
「彼がいなければ、北方戦線は崩壊していました」
誰も反論できない。
さらに続ける。
「王都火災による延焼被害も、彼が止めています」
貴族たちの顔色が変わった。
中には青ざめる者までいる。
物流。
補給。
それが止まる意味を、
この国の上層部ほど理解しているからだ。
その時、一人の太った貴族が汗を拭きながら言った。
「ま、まさか……」
震える声で続ける。
「最近の物流混乱も……」
「はい」
王女が頷く。
「彼を失った影響です」
静寂。
貴族たちが言葉を失う。
……そんなにか?
俺が首を傾げていると、バルクが小声で言った。
「お前、自分の仕事量を理解してないんだよ」
そうだろうか。
◆ 国王の登場
その時だった。
奥の巨大扉が開く。
ゴゴゴ、と重い音。
騎士たちが一斉に膝をつく。
「国王陛下のおなり!!」
空気が張り詰めた。
玉座の間。
そこにいたのは、白髪混じりの壮年の男。
ただ座っているだけなのに、妙な威圧感がある。
王だ。
国王は静かにこちらを見た。
「お前がレクトか」
低い声が響く。
「……はい」
国王は数秒黙ったあと、ゆっくり言った。
「まず礼を言おう」
玉座の間がざわつく。
「北方砦の救援、そして王都火災の鎮圧」
国王は真っ直ぐこちらを見据えた。
「王国は、大きな借りを作った」
その瞬間、周囲の貴族たちが完全にざわついた。
王が正式に、一個人へ借りを認めたのだ。
だが――
国王の次の言葉で、空気はさらに変わる。
「そこでだ、レクト」
国王は静かに告げた。
「お前に、“王国兵站局長”を任せたい」




