第十五話 追放した代償――王国の生命線を失った者たち
「お前たちは、“王国の生命線”を追放したんだよ」
バルクの言葉が、静かに、しかし鋭く響いた。
ガルドの顔色が変わる。
「……は?」
呆然と俺を見る。
そして周囲を見回した。
王国騎士。
消火隊。
避難民。
第二王女。
そして――鎮火された王都。
その中心に、俺がいる。
「な、なんで……」
ガルドの声が震えた。
「お前、ただの荷物持ちだっただろ……!」
その瞬間、周囲の空気が冷えた。
王国騎士たちの目つきが変わる。
「無礼だぞ」
「レクト殿に対して何だその態度は」
ガルドがたじろぐ。
だが混乱のほうが大きいらしい。
「いや、待て……おかしいだろ……!」
彼は頭を抱える。
「最近ずっと補給が来なくて……ポーションも足りなくて……!」
その瞬間、ガルドの動きが止まった。
……気づいたらしい。
今まで、誰が管理していたのか。
「まさか……」
額に汗が浮かぶ。
「全部、お前が……?」
「まあ、在庫管理とか運搬はしてた」
「……っ」
ガルドが言葉を失う。
◆ 王女の問い
その時、王女が静かに口を開いた。
「あなたが追放したのですか?」
「え……」
「この方をパーティーから?」
空気が凍った。
王族からの問い。
逃げ場はない。
ガルドの顔が青白くなる。
「い、いや……その……」
「不要だと判断した?」
王女の声は静かだった。
だが、妙な圧がある。
ガルドは完全に狼狽えていた。
「だ、だって戦えないし……!」
「ですが」
王女は燃え跡の街を見る。
「この方は王都を救いました」
ガルドが黙る。
反論できない。
◆ バルクの宣告
バルクが鼻で笑った。
「お前たちが“戦えないから不要”と切った男はな」
彼はゆっくりと言う。
「軍を維持し、砦を救い、王都火災まで止めた」
その一言一言が、ガルドへ突き刺さる。
「英雄ってのは、剣を振るう奴だけじゃない」
ガルドの肩が震えた。
◆ リシェルの到着
その時だった。
「ガルド!!」
後ろから別の声が響く。
振り向くと、元パーティの魔法使いリシェルが走ってきた。
彼女も疲弊している。
「やっと見つけた……!」
だが、彼女もその場の異様な空気に気づいた。
王女。
騎士団。
消火隊。
避難民。
そして中心にいる俺。
「……え?」
リシェルが固まる。
燃え跡を見て、目を見開いた。
「まさか……これ……」
バルクがニヤリと笑う。
「全部レクトだ」
リシェルの顔から血の気が引く。
「う、嘘……」
震える声で呟く。
「レクトって……そんな……」
俺は首を傾げた。
そんなと言われても、俺もよく分かってない。
◆ 王城からの招待
王女が、静かにこちらへ向き直る。
「レクト」
「はい?」
「国王陛下がお会いしたいそうです」
周囲がざわついた。
王に謁見。
普通の冒険者なら、一生縁がない。
王女は続ける。
「正式に、王城へ招待します」
そして、はっきりと言った。
「――王国は、あなたを必要としています」




