7-10:罰金冒険者
満腹都市マーゲンのギルドマスターであるテイルに叱られつつ、自らも同じ過ちを犯したことを私に伝える。
「ご迷惑をおかけしました…」
「僕もやったことあるから強くは言えないよ。でも今後は気をつけてよ?」
「はい…」
私はギルドで多額の罰金を支払い、マーゲンから魔法国へ。「ちゃんと関所と門を通れよ」と私たちを止めた北門の門番は言った。
ノココが大きなドラゴンに変わった時、またしても問題が起こる。門を出てすぐにノココがドラゴンに変わったため、門番たちは大慌て。マーゲンの中から見えるほど大きな巨体に、マーゲンの人たちも驚いている様子。その騒ぎはすぐに広まり、再びテイルが慌ててやってきた。
「えっと…」
「はぁ…。レイアさんは問題児すぎる…。それに乗ってきたんだったら関所を通らなかった理由もわかるよ…」
「すみません…」
「関所と門は必ず通ってよ?この騒ぎはこっちでなんとかするよ」
私たちは空に上がり、まずは関所を目指す。関所の人たちはノココに驚いていたが、私たちはしっかりと関所を通過。魔導都市アルカディアに到着すると、当然のようにノココの姿で騒ぎが起き、エルフの二人組が南門まで急いでやって来た。
「レイア!?」
「レイアさん!?」
「えっと…、こんにちは…」
私たちはギルドに向かう。その道中、二人は私に尋ねた。
「レイア、どこでなにをしていた?」
「それは…」
「言えませんか?」
「言えません…」
「ノエル殿、ステラ殿。拙者から申し上げられる唯一のこととして、あの方が炎の巫女としての使命を与えているのです」
アカマサの言葉で全てを察したのか、ノエルとステラはそれ以上何も聞かなかった。私が戻った後、私が炎の巫女であることやピーちゃんがフェニックスであることをほとんどの人が覚えていない様子だった。あれだけの騒ぎの中心にいたのだ。忘れろと言う方が無理だった。しかし、これがガイアからのおまけだと知ったのは、再びガイアに会った時。覚えていたのは私と関わりのあった一部の人だけ。
ギルドに到着すると、記憶が残っているティアラから質問攻めを受ける。
「レイア!ギーちゃんはどうしたのじゃ!」
「ギルドマスター、応接室を貸してください」
「ど、どうぞ」
私たちとティアラだけが応接室に移動し、ギーちゃんについての話をする。
「ギーちゃんなんですけど、フェニックスの研究とモンスターの言語の研究を破棄したら帰ってきます」
「破棄とな?」
「両方とも禁忌の研究みたいです」
「待つのじゃ。なぜレイアが禁忌かどうかわかるのじゃ?炎の巫女だからかの?」
「は、はい」
「わかったのじゃ。納得はできんが、研究は破棄するのじゃ。それで、ギーちゃんはいつ帰ってくるのじゃ?」
「それは…、わかりません。まだ寝てるみたいで…」
「ギーちゃんは大丈夫なのかの?」
「大丈夫だと思います。それより、学園は大丈夫なんですか?」
ティアラは学園について話し始めた。現在は学園の損傷具合を調査中とのこと。修復にどの程度かかるかわからないため、次の入学時期までの約一年間、学園は休校。学園に通っていた生徒はアルカディアの宿屋に滞在中で、帰りの護衛が来た生徒から順に帰っていった。
「アメリはまだいるんですか?」
「まだ宿屋におるはずじゃ。アクアハーバーでも色々あったからの」
「学園長、アクアハーバーの青い炎って…」
「…わしらが灯したのじゃ」
「じゃあクロスファングにいたのも?」
「…そうじゃ」
ティアラは静かに話し始めた。フェニックスの炎の研究は楽しかったが、何かが欠けているように感じていた。その時、ミーティアが祭壇に残っていたフェニックスの羽根の燃えかすを大切にしているのを思い出し、拝借。すると青い炎を持つギーちゃんが生まれ、アルカディアの祭壇に炎を灯すことにも成功。そのままアクアハーバーの祭壇にも勝手に炎を灯した後、ダンジョンの出現や青いモンスターについての問題が起き始めた。その問題も青い炎のせいで起きたと、ティアラは誰よりも早く察知していた。
青い炎を消そうにも消えることはなく、アルカディアの祭壇が緋色の炎に変わっていたことに安心していたが、気づけば青い炎に変わっていた。それはギーちゃんが緋色の炎をついばみ、青い炎を灯し直してしまったらしい。
問題が大きくなったのはそこから。フェニックスの炎を取り込んでしまったギーちゃんはその膨大な炎を御しきれず、体の中で魔力が増え続け、周囲に炎を撒き散らしてしまったという。
「火傷はその代償でもあるのじゃ…」
「火傷は大丈夫ですか?」
「今はケガ一つないのじゃ」
「あの、ギーちゃんは炎が使えなくなったらしいんですけど…」
「それも巫女の力かの?」
「は、はい…」
「それでもよい。今はギーちゃんと一緒にいられればそれでよいのじゃ」
「あと…、私が巫女でピーちゃんがフェニックスっていうのは…」
「誰にも言わぬ」
私たちは応接室からギルドマスターの部屋に戻る。その後、私たちはギルドを後にし、アメリの滞在している宿屋に向かう。再会を果たすと、アメリは寂しかったのか私に抱きついて涙を流す。再会後、私はアメリをお城まで送ることにした。すぐの出発となり、宿屋から南門に向かう。
「レイア、私たちはしばらくここにいる」
「用があれば手紙か直接ここへお願いします」
南門を出てノココが大きなドラゴンになった時、アメリ、ノエル、ステラの三人は驚く。
「レ、レイアさん!?」
「アメリ、大丈夫だから」
アメリを加えた私たちを、ノココは防御膜のようなもので私たちを包み、持ち上げた。アメリは怖いのか私の腕にしがみつき、ノエルとステラは唖然としながら上昇していく私たちに視線を注ぐ。そしていつも通り、ノエルとステラの目の前から私たちは姿を消した。
「…」
「…」
「ステラ、どう思う?」
「テシアさんは関所を通らずに罰金を支払ったことがあると言っていましたが…」
この時、私の罰金についてはまだ広まっていなかったが、噂は瞬く間に広がり、「罰金冒険者」と呼ばれるのに時間はかからなかった。
アルカディアを出発し、ノココなりにゆっくりと空を飛んでいる間、アメリは私の腕から離れなかったが、その表情は笑っていた。アメリにとって初めての空の旅だったものの、みんなの声が聞こえるため、恐怖よりもみんなと話せる喜びが勝っていた。
「レイア、お腹空いた」
「え?あんなに食べたのに?」
「レイアさん、なぜ私はみなさんの声が聞こえるのでしょうか?」
私はアメリに、ピーちゃんの羽根を受け取った人にだけみんなの声が聞こえるという話をする。
「でも内緒ね」
私たちはしっかりと関所を通り、アメリはみんなと会話をする。アクアハーバーのお城が近付くと、地上に立っている二人の人物が見え始めた。
「ノココ、あの二人のところに降りて」
「わかってるよ」
事前に手紙で連絡をしておいたため、リータとキュラスが私たちを待ち構えていた。
「リータさん、ギルドマスター、こんにちは」
「…」
「レイア、お姫様を連れてくるなんて聞いていないぞ」
「あ…」
大きなドラゴンを見て飛んできたカペルや守備隊も混乱していたが、事情を説明し、アメリを連れてお城に戻っていった。
「レイアさん、みなさん、ありがとうございました!」
別れ際、みんながアメリに声をかけると、アメリは満面の笑みでお城へ歩いていった。
「レイアはこれからどうする?」
「アクアハーバーは大丈夫なんですか?」
私の問いに、キュラスは現在の状況を簡単に説明し始めた。都市の修復を優先したため、被害の少なかったアクアハーバーはほぼ元通り。しかしお城はそういうわけにもいかず、城壁に祭壇周り、そしてお城そのものにも修復が必要な部分があるという。
「まずは城壁からだろうな」
「ダンジョンと青いモンスターが出てないから楽」
「私はどうすれば?」
「レイアはアルカディアでロマリスからなにも聞かなかったのか?」
「え?」




