エピローグ
大きな樹の下にあるいつものテーブルとイスで、私はお茶の時間を楽しんでいました。茶葉は私のお気に入り。そして用意されたお茶請けは、話題になっているお菓子だそうです。
「あら?」
私がお茶とお菓子を楽しんでいると、視界の端に二人が競争しながらやってくるのが見えます。そしてその二人の後ろからはさらに一人、呆れた顔で追いかけてきています。一人は全身が鮮やかな黄色で丸々とした小さなフェニックス。そのフェニックスと競うようにしていたのは青い丸々とした小さなフェニックス。そして後ろから追いかけてきているのは、白い毛並みに灰色の斑点が散らばっている子。
近頃の三人は、並んで水面をじっと眺めている時間が増えたような。
「そんなに慌ててどうしたのですか?」
「相棒がもうすぐ生まれるみたい!」
「ボクの相棒!」
「ぼくの!」
「俺たちの、だ」
二人のフェニックスがテーブルに舞い降りると、私に用意されたお菓子を小さな嘴でつまみ始めました。
もうそんな時期ですか。二人で旅立つのはこれで二度目ですね。それに今回はあの子も同じ主のようですから、少しは安心できそうですね。
「もぐもぐ」
「モグモグ」
「お前たち、食べ過ぎだ」
「あなたも食べますか?」
「俺はいい」
「では大事なお話をしましょう。あなたたちの使命について説明しますから、しっかり聞いてくださいね?」
「もぐもぐ」
「モグモグ」
二人はお菓子に夢中になりながらも、「わかった!」とでも言うかのように揃って右の翼を上げ、お菓子を食べていない子はしっかりと座り直しました。
使命について説明し終えるよりも先に、二人はお菓子を平らげてしまいました。お菓子を平らげた後は頷きながら話を聞いていたので大丈夫でしょう。今回はこの子もいますから。
「では旅立つ前に、二人にはいくつかの魔法をかけますね」
覚醒している緋色のフェニックスには強力な枷を。青いフェニックスには少しだけ力を戻しました。二人のフェニックスに魔法をかけ終わると、その場で同時にくるりと回って左右の翼を広げて見せました。
「それでは次に、あなたたちの相棒となる者の元へ通じる道を開きますよ」
私は前方の空間に手をかざし、転移門を構築していきます。
「行ってきます!」
「行ってきます!」
「いってらっしゃい、気をつけるのですよ」
二人のフェニックスの声色には期待と興奮が滲んでいました。少しワクワクしているような響きで力強く返事をすると、一瞬の躊躇もなく転移門の中へと飛び込み、消え去りました。転移門に飛び込む直前、二人は互いの顔を見ると頷き、またしても競うようにして消えていきました。
「タマ、あの子たちをお願いしますね」
「今から先が思いやられる」
タマはそう言い残し、ゆっくりと転移門の中へ入っていきました。私は三人が消えた転移門をしばらく見つめていました。炎の巫女の相棒を二人に増やしてからは、悲しみよりも心配の方が勝ってしまいます。
「行ったの?」
「ええ…」
「悲しい?」
「心配しているのです…」
「二人に増やしたのはガイアだよ?」
「そうなのですが…」
「でも会いに行くんだよね?」
「会いに行きますが、ノココさんもお仕事をしてくださいね」
「わかってるよ」
ノココさんは胸元まで届く水浅葱色の髪に赤いリボンを付けなおしながら、私と会話をしていました。それはノココさんに名前を授けた巫女からの贈り物のようで、大切にしています。
「じゃあわたしも出掛けるよ」
「どちらへ?」
「福々堂だよ。生まれることは言ってもいいんだよね?」
「その程度であれば構いませんが、巫女との過度な接触は控えてくださいね。それから、空を飛ぶ時はゆっくりですよ」
「わかってるよ」
ノココさんは大きなドラゴンへと姿を変え、ここから旅立ちました。それを待っていたかのように、他の子どもたちがやってきました。はい、仕事ですね。仕事をして気を紛らわすとしましょう。
「今回の旅も無事に終わることを祈っていますよ」




