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7-8.5:ガイア視点

「ここで様子を見ましょう」


 私は、魔導都市アルカディアの一番高い建物の屋根の上に降り立ちました。腕の中からは、黒い縞模様が入り、白いふわふわとした体毛を持つ子が顔を出しています。


 現在、魔法学園の上空には青いフェニックスが羽ばたいています。それは、あの子が原初の炎に身を投じたあとの姿と非常によく似ていました。私はあの子以外にフェニックスを創っていません。天才過ぎるエルフがフェニックスを造ってしまったようでした。


「大丈夫なのか?」

「それはわかりませんが、あの子と巫女次第といったところでしょうか。これ以上大きくなるようであれば消し去るだけです」

「そっちじゃない、青いトロールの方だ」

「そちらですか?あのアカマサが本気を出すようなので大丈夫でしょう。あの子以外で唯一の炎を持つ子です。負ける通りがありません」


 しかし、私の予想とは裏腹に二人のアンデッドとエルフでは勝てそうにありませんでした。そこで二人のアンデッドは、自分たちに残されたすべての力をエルフの双剣に込めたのです。


「あのエルフ、死ぬんじゃないか?」

「人にあれの制御をさせるとは思っていませんでしたが、仲間のエルフから支援魔法を受けているので死ぬことはありませんよ」


 炎と雷の双剣を手にしたエルフはアカマサ顔負けの神速を披露し、青トロールを倒しました。しかしその代償として両腕の骨が折れ、手のひらや腕は赤に染まりつつありました。そして青トロールを倒しきる少し前、青いフェニックスは学園に降りていきました。


「出てこないぞ?」

「いえ、そろそろです」


 青いフェニックスは学園に降りてからそれほど時間を置かず、再び空へと戻ってきました。体の内側から溢れ出る魔力を制御できず、苦しんでいるようです。その証拠に、青いフェニックスは魔力を放出するかのように、羽ばたくごとに青い雨を降らします。それはあの子の癒しの雨ではありません。青い炎の雨はあの子の癒しの雨とは違い、炎が触れたところからそのすべてを焼きつくすため、危険で非常に冷たい雨です。


 しかし、あの子はすぐに現れました。青いフェニックスと同じような姿でしたが、少しだけ違いました。わずかに大きく、ほんのわずかでしたが金色を纏っていました。二人のフェニックスが対峙すると、あの子が青いフェニックスを助けるために炎で包み込もうとしました。ですが青いフェニックスは攻撃されたと思い、二人は炎の吐き合いを始めました。


「落ちたぞ?」

「ええ」

「また出てきたぞ?」

「そちらにはあの子がいますから」


 再び出てきた青いモンスターには、私の最初の家族であるあの子が向かっていきました。巫女の仲間やエルフと一緒に、次々と青いモンスターを倒していきます。あの子は生き生きと青いモンスターを倒していましたが、主の消えた学園の方を何度も気にしていました。その後、青いモンスターを倒し終わるのと、学園から大きな青い炎の柱が空へ立ち上がるのはほとんど同じでした。


「大丈夫なのか?」

「少々心配ですが…。ふふ、ようやくですね」

「やっと覚醒するのか」


 あの子の覚醒がこれほど嬉しいことはありません。今はまだ学園内ですが、すぐに外に出てくるでしょう。それでなくとも、学園から緋色と金色のきらめきが溢れて止まりません。


 ほどなくして、あの子は学園から飛び出してきました。覚醒したあの子はとても大きく、緋色と金色を纏っていました。学園から出てきたあの子は私に気づいたのか、いつものようにくるりと空中で一回転をして大きな翼を広げました。その回転によって、あの子の纏う二色のきらめきと優しい熱がふわりと空に広がっていきます。


「あいつはなにやってるんだ?」

「私たちへの挨拶でしょうね。さあ、始まりますよ」


 覚醒したあの子は一気に炎を纏いました。その炎はあの子の羽ばたきに合わせて緋色と金色のきらめきとなり、ゆっくりと広がっていきます。それは魔法学園全体から都市全体まで広がり、ゆっくりと地上に降り始めました。


「これが覚醒した癒しの雨か」

「癒しの雨なんて生易しいものではありません。防御膜をすり抜けて私たちに届くなんて予想外です」

「祭壇の炎も変わってるぞ」

「あの子の覚醒は規格外ですね」


 緋色と金色の癒しの雨はケガを癒すどころではなく、魔力を回復し、焼け焦げた草木は生気を取り戻し始めました。そして、本来ではフェニックスの羽根が必要な祭壇の炎を癒しの雨で書き換えてしまいました。


「後ろがうるさいな」

「避難している人たちがこの雨に驚いているのでしょう」


 あの子のきらめきを受け、都市の南側に避難していた人たちが驚くのも無理はありません。この私が驚いているのです。それについさっきまでは二人のフェニックスが空で戦い、優しい炎と冷たい炎がぶつかり合っていたのです。離れているとはいえ、その二つの熱はあそこまで届いていたでしょう。


「ボロボロだったエルフが起き上がったぞ」

「あの子の治癒能力は元々高めですが、さらに上がったかもしれませんね」


 あの子が癒しの雨を降らせていると、大きな姿からいつもの小さな姿に突然戻りました。それはあの子の魔力が切れたことを意味すると同時に、彼女の魔力が切れたことも意味しました。


「では行きましょうか」

「俺は帰る」


 私は小さな転移門を構築してハッコを送り出し、転移門を消しながら魔法学園へと飛んでいきました。魔法学園へ飛んでいく途中、外にいたあの子に笑いかけておきました。


「彼女にも名前を尋ねる必要がありますね」


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