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7-7.5:アカマサ視点

「アカマサ殿は左から!わたくしは右!」

「ご武運を!」


 拙者とハドック殿は、大きな青トロールの軍勢に向かいながら短く言葉を交わしました。拙者は刀に炎をまとわせ、ハドック殿は漆黒の斧に青白い雷をまとわせました。本気を出した拙者たちには時間がございません。すべての魔力を燃やし、一時的に大きな力を引き出す。それはアンデッドだからこそ許される芸当。


 拙者たちは左右から青トロールを一体ずつ沈黙させていきました。本気の拙者たちであれば、炎をまとわせた刀と雷をまとわせた斧を一振りすれば大概のモンスターには勝てましょう。それは青トロール相手でも通用いたしました。しかし、拙者たちは気づいておりました。ひときわ大きな青トロールが奥に控えていることを。


 左右から青トロールを沈黙させ続け、拙者たちの前に残ったのはこの軍勢を率いるに相応しい巨体を持つ青トロールでした。その巨体の前で、拙者たちは合流いたしました。


「ハドック殿、もうあまり時間がございませんな」

「四肢の一つでも落とすことができれば」


 拙者たちが巨大な青トロールの前で言葉を交わしていると、後ろからステラ殿の支援魔法を受けたノエル殿がやってきたのです。


「庇いながら戦うことはできませぬぞ?」

「わかっている!」

「わたくしたちの言葉がわかるのですか?」

「なぜか理解できる!だが今はこいつだ!」


 三人になった拙者たちはその巨体に攻撃を仕掛けました。拙者は左から、ハドック殿は右、ノエル殿は中央からそれぞれ向かいます。それを見た青トロールは、大きな棍棒をノエル殿に向かって振り下ろしたのです。支援魔法を受けていたところで、三人の中では一番弱い。敵も本能的にそれを理解していたのでしょう。しかし、ノエル殿はあっさりと交わします。拙者と同じ速さを有するノエル殿です。この程度は余裕でしょう。


 ノエル殿が攻撃を交わした直後、拙者とハドック殿が左右から刃を向けます。本気の一振りが二つ。この攻撃に耐えられるモンスターはいない、はずでした。拙者たちの刃は青トロールの体に大きく傷をつけたものの、巨体は健在。


「アカマサ殿、このままでは…」

「賭けになりますが方法はございます」

「師匠、その方法はなんだ!?」

「ノエル殿、剣を拙者たちに」


 拙者の言葉でハドック殿もやることを察したのか、斧にまとわせていた雷をマントに戻したのです。そして斧を地面に刺し、ノエル殿から剣を奪い取りました。


「お、おい!」

「ノエル殿、時間がございません。最後はノエル殿が倒すのです。ただ…」


 拙者が最後まで言い切る前に、青トロールは集まっている拙者たちに棍棒を振り下ろしたのです。その風圧を感じた時、剣を奪い取ったハドック殿が雷のマントを大きく広げ、大きな棍棒の攻撃を防いだのです。それは雷の防御壁と呼ぶに相応しい見た目をしておりました。


 青トロールは攻撃を弾かれたことでそのまま大きく後ろに転び、地面が大きく揺れました。その間に、拙者たちは最後の手段を伝えます。最後の手段とは、ノエル殿の双剣に拙者たちが残りすべての魔力を込め、ノエル殿に託すというもの。


 以前ハドック殿がおっしゃっていた通り、拙者たちがすべての魔力を武器に込めると武器を振るうことができず、魔力が込められた武器がその場に残るだけ。しかし、それをノエル殿に振るってもらえばよい。ただ、ノエル殿には何かしらの反動があるでしょう。


「反動で私は死ぬのか?」

「死ぬことはございません。すでに拙者たちの魔力は残りわずか。両腕が折れる程度になるでしょう。余裕があればあとでピーちゃん殿に治していただけばよい」


 ノエル殿が拙者に剣を渡すと、拙者とハドック殿は持てるすべての魔力を注ぎ込みました。ハドック殿の剣は青白く光り、拙者の剣は緋色の輝きを放ちます。拙者たちの魔力がわずかになった時、互いに剣を地面に刺し、ノエル殿にすべてを託しました。


「ご武運を…」

「ノエル殿、あとは…」




「師匠!ハドック!」


 二人が私の目の前で剣を地面に刺した直後、ガシャン!と音を立てて地面に倒れた。ステラは姫様をロマリスのところへ送っていったので、援護をしてくれる仲間はいない。ここからは一人。私は地面に刺さった剣を引き抜く。左手には炎をまとった剣。右手には雷をまとった剣。


「この剣は…、今までで一番重いかもしれないな…」


 私は師匠とハドックの想いが乗った双剣を手に、大きな青トロールに向かう。


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