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スカーレットリンク ~緋色の盟約~  作者: 霧野 勝
1章:新人ビーストテイマー
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1-7:古城跡へ

 調査が終わるまでの一週間、私たちは依頼をせっせとこなす。一週間後、いつものように依頼の報告をしようと受付に向かうと、あやかが少し神妙な面持ちで私に言う。


「レイアさん、おかえりなさい。先ほど調査に行っていた冒険者が帰還いたしました。レイアさんが戻り次第、部屋に通すようにとギルドマスターから言われていますので、このままどうぞ。依頼の確認はこちらでやっておきますので、お帰りの際にもう一度受付までお願いします」

「わかりました!」


 私はそのままギルドの奥にあるギルドマスターの部屋へと進む。そして扉をノックし、ギルドマスターからの返事を待つ。


「入れ」


 その声に促されて入室すると、そこにはギルドマスターのボガート以外に、全身を漆黒の装束で覆った女性が立っていた。


「レイアか。ちょうど今、調査に出ていた『リータ』が戻ってきて、話を聞いていたところだ」

「F級のレイアです、よろしくお願いします」

「B級のリータ、よろしく」


 ボガートの紹介に、私が軽く頭を下げるとリータも返事をした。リータは長い黒髪を後ろでポニーテールに束ね、体にぴったりとフィットした黒い長めのトップスを着用している。同じように体にフィットする黒のハーフパンツ。黒いマントに黒の指ぬきグローブ、そして革製で軽そうな黒いブーツという出で立ち。露出した肌は白く、腰には少し大きめのポーチを装備しており、実用性を重視した装いに見える。


「リータの報告だと古城跡のアンデッドが原因らしい」

「古城跡?アンデッド?」


 何を言っているのかわからない私はボガートに尋ねた。


「ここから南西の方角に川があって、その先の森には古城跡がある。そこには昔からアンデッドが生息してる。アンデッドと森に住むモンスターは昔はよく争ってたらしいが、今は互いに縄張りを認識してるらしい。それでもたまにいざこざは起こる。それでも狼が川を越えるような事態になったことはないんだが…」


 ボガートがそこで言葉を切り、リータが口を開く。


「えぐられたような深い傷のある狼の亡骸がいくつかあった。古城跡まで行ったら、門の近くに黒い鎧が立ってた。勝てないと思ったから帰ってきた」

「正しい判断だな。それにしても、黒い鎧がいるなんて報告は受けたことないな。大体が錆びた鎧か火の玉が浮いてるぐらいのもんなんだが」


──ギルドマスターも知らないということは最近出てきたのかなぁ?その鎧が狼を攻撃したのかわからないけど、それが原因で狼はこっちに逃げてきたんだろうなぁ。


「どうするんですか?」


 私は思考を巡らせながら尋ねる。


「どうするもこうするも、討伐したところでアンデッドはそのうち復活する。定期的に討伐してもいいが、その黒い鎧とやらの戦力次第じゃ、こっちも相応の冒険者じゃないとダメだ。今後、森から出てくるモンスターの討伐依頼が増えることになるかもしれんが、基本的には放置だ」


 私はギルドマスターの判断に納得せざるを得なかった。


「話は以上だ。リータもレイアも帰っていいぞ」

「はい、失礼します」

「あとはよろしく」


 私たちとリータは部屋を後にする。部屋を出て数歩歩いたところでリータが口を開く。


「あなた、ビーストテイマー?」

「え、あ、はい!頭の上にいるのがピーちゃんで、この子が藤狐のタマモです」


 短い会話を交わし、依頼掲示板まで戻り、私たちは別れる。


「じゃ」

「はい!ありがとうございました!」


 リータはそう言うと、束ねた黒髪をなびかせながら出口へと向かっていった。私たちは依頼の報酬を受け取るため、あやかの元へ向かう。


「お疲れ様でした。こちらが報酬になります、ご確認ください」

「ありがとうございます!」

「リータさんはどうでしたか?」

「うーん、無口というか言葉が少ないというか。あと表情が…。あ!えっと…」

「あれでも彼女はこのギルドのエースなんですよ」

「すごいんですね!」

「ピー!」


 報酬を受け取り、ギルドを後にする。外に出ると、頭上のピーちゃんが私に何かを伝えるように翼をばたつかせた。


「レイア!空!」


 ピーちゃんの視線を追うと、暗くなり始めた空に、いつものドラゴンが飛んでいるのが見える。確かにその巨体は確認できたが、夜空に溶け込んでいるため、私には見えにくかった。そしてそのまま、ドラゴンは西の方へと飛んでいく。


──おかしい…。ドラゴンはちょっと前にも飛んでた。普通は間が空くのに。


「レイアさん、どうしたのですか?」

「ごめん、タマモ。ちょっと西門まで走るね!」


 私はタマモを抱き上げ、急いで西門まで走る。西門に着くとすでに門は閉まっており、ディアンも他の門番と交代したようでいなかった。私は鉄格子越しにドラゴンを目で追う。ドラゴンは西よりもやや南の方へ飛んでいき、そのまま夜空に姿を消した。私はタマモを抱いたまま来た道を戻り、宿屋に向かう。


「ピーちゃん、今まであのドラゴンがこんなに短い間に二回も飛んできたことあったっけ?」

「わかんない」

「ドラゴンを見たのは初めてです」

「タマモは見たことなかったんだ?」

「森では木々が邪魔をしてよく見えません。それに空にも天敵がいますので、なにか見えたらすぐに隠れます」

「それは大変だね…」


──ドラゴンが飛んでいった先でタマモと出会った。ということは、また新しい仲間に出会える?でもあの方角って…。


 私が難しい顔をして考え事をしていると、ピーちゃんが心配そうに声をかけてきた。


「レイア、大丈夫?」

「あ、うん。ドラゴンのあとを追ったらタマモに出会ったから、またあのドラゴンを追ったら新しい仲間に出会えるのかなって思って」

「私と会う前もドラゴンが飛んでいたのですか?」


 私は森に行くことになった経緯をタマモに話し、ドラゴンの行った南西の方角にある古城跡まで行ってみたいと二人に伝える。


「あやかさんやギルドマスターに絶対怒られるけど、私はドラゴンを追って古城跡まで行きたいと思う。二人はどう?」

「黒い鎧のアンデッド、見たい!」

「私は…。私の力ではあの狼に太刀打ちできません…。足手まといになってしまいます…」

「大丈夫!ぼくがレイアもタマモも守る!」


──正直なところ私も無茶な判断をしてると思うし、ピーちゃん頼りになるのもわかってる。でも、さっきのドラゴンにはきっとなにかある。私もできるだけの準備をしなくちゃ!


「タマモが嫌じゃなければ明日から古城跡に向けて出発しようと思うんだけど、どう?」

「精一杯頑張ります!」

「じゃあ決定!」


 翌日、私たちは宿屋で朝食を済ませ、おかみさんに一週間ほど戻らない旨を伝えると少し心配そうな顔をされたが「冒険者だからね。気をつけて行っといで!」と笑顔で送り出してくれた。


 宿屋を出て、最初に向かったのは保存食を取り扱う店。森の入り口までではなく、森の中の古城跡まで行くため、そして仲間が増えたこともあって多めに購入。次に向かったのは回復薬を取り扱う店。救急キットから各種ポーションまで幅広く取り扱っている。私はピーちゃんの治癒能力に頼り過ぎないよう、救急キットとポーションを購入。痛い出費ではあるが、二の轍を踏まないように準備する必要があった。


 旅の準備を万全に整え、私たちは西門へ向かう。目指すは南西にある川。タマモが以前、森の川は平原にも通っていると教えてくれたので、ひとまず平原から川を目指して歩く。出発してから二日。平原を順調に進み、日が傾き始める頃には平原に流れる川が見えるところまでたどり着いた。夜になるにはまだ早いが、この辺りで野宿をする。


「タマモ、あのデュアルピッグをご飯にするからよろしくね。ピーちゃんは周囲の警戒をお願い」

「はい!」

「わかった!」


 朝になり、タマモとピーちゃんが目を覚ました。深夜の間に見張りを交代していた私は起きていた。保存食で簡単に朝食を済ませると、私たちは川を渡る方法を考える。


「ピーちゃん、この近くに橋がないか空から見てきてくれる?」

「わかった!」


 ピーちゃんは元気に返事をすると、空へと舞い上がる。しばらくして戻ってきたピーちゃんから、もう少し南側に橋があることを教えてもらった。橋までの道中、ピーちゃんが先行してモンスターを排除。そのおかげで私たちは安全に橋までたどり着き、川を渡ることができた。


 橋を渡ると、いよいよ森の中へと足を踏み入れる。以前森に入った時よりも、さらに静かな雰囲気が私たちを包む。木々に邪魔されながらも、空から古城跡の位置を確認していたので、ピーちゃんの指示に従いながら進んでいった。


「…全然モンスターいないけど、変だよね?」

「空からはなにも見えなかったよ?」

「川を渡ったからといってここまでモンスターがいないのはあり得ません」


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