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スカーレットリンク ~緋色の盟約~  作者: 霧野 勝
1章:新人ビーストテイマー
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1-6:タマモの実力

 掲示板には様々な依頼があったが、その中でも比較的簡単なF級モンスターの討伐依頼を探す。しかし手頃な討伐依頼が見つからず、仕方なしにファーストバードの羽根回収の依頼書を手に取り、あやかの元へ行く。


「ファーストバードの羽根の回収ですね」

「討伐依頼がなかったのでこれでお願いします」

「討伐依頼ですか?レイアさんならE級でも大丈夫だと思いますよ」

「じゃあE級の討伐依頼にします!」


 依頼を変更し、私たちは西へと向かう。受けた依頼はデュアルピッグの討伐。以前、ピーちゃんが一瞬で灰にしてしまったモンスターの討伐だ。今回はタマモの力を試すため、そしてデュアルピッグがどのように戦うのかを知るためにこの依頼を選んだ。


「タマモ、あの茶色いのがデュアルピッグだよ。まずはタマモに戦ってみてほしいんだけど、いけそう?」

「はい、やってみます」

「ピーちゃんは頭の上で待機ね。タマモが危なくなったら助けてあげて」

「わかった!」


 タマモは少し緊張した面持ちで、デュアルピッグへ近づいていく。万が一のことがあってもピーちゃんがいるから問題はない。デュアルピッグがタマモの接近に気づき、そのずんぐりとした体躯をゆっくりとタマモに向ける。二本の小さな角が目立つ頭部と、がっしりとした太い四肢。タマモの小さな体と比較するとかなりの威圧感がある。


 タマモはディアルピッグから距離を取り、前足にぐっと力を込める。すると、ふさふさの尻尾がゆらめきながらも、次第に天を仰ぐように立ち上がり、その先端に小さな火が生み出された。火はみるみる大きくなり、私の手のひらほどの火の玉となる。タマモはその火の玉をデュアルピッグ目掛けて放つ。火の玉は一直線に飛んでいき、命中した。


 火の玉が触れた部分の皮膚がジュッと音を立てて焦げ付き、デュアルピッグは甲高い鳴き声を上げ、タマモに向かって突進していく。タマモは俊敏に突進を避けた。そして続けざまに火の玉を放っていくと、デュアルピッグの動きが鈍くなる。止めを刺すかのようにさらに二発の火の玉を叩き込むと、デュアルピッグはついにバランスを崩して倒れ、沈黙した。


「タマモ、すごい!」

「強い!」


 私は駆け寄ってきたタマモを撫でて褒める。ピーちゃんのように一瞬で灰にするほどの威力ではないが、モンスターを確実に仕留める力があることは確認できた。


「タマモは火魔法以外にもなにか使える?」

「火と氷、それから光です」

「氷と光も使えるの!?」

「見たい!」

「じゃあ次は氷魔法で、その次は光魔法で戦ってみてほしいんだけど、いい?」

「はい、わかりました」


 タマモは少し照れたように頷く。私たちは二匹目のデュアルピッグを探し始めた。少し離れた場所に地面を掘り返しているデュアルピッグが見える。するとタマモが私たちの前に出て、戦闘準備を始める。


 先ほどと同様、タマモは前足に力を込める。立ち上がった尻尾の先端に冷気が集まり、氷の塊が作られていく。その塊はだんだんと大きく、そして鋭いつららへと変わった。私の前腕ほどの大きさになったつららを、穴を掘り返しているデュアルピッグに向けて勢いよく放つ。つららが突き刺さると冷気が一気に広がり、刺さった部分から凍り始める。


 体の一部が凍り付いたことで動きが鈍くなったデュアルピッグに、容赦なくつららを連射するタマモ。デュアルピッグはつららが刺さるごとに凍りつき、その動きはどんどん鈍くなっていく。そして完全に動きを封じられたデュアルピッグに、タマモが最後の一撃となるつららを飛ばすと、その場で氷漬けとなり、沈黙した。


「氷魔法もすごい!かっちかちに凍っちゃったね!」

「すごい!」


 私とピーちゃんが歓喜の声を上げると、タマモは照れた様子で駆け寄ってきた。


──確かにタマモの氷魔法はすごいなぁ。でも…、ここから証拠品を回収したり、もし依頼が素材回収だったらめんどくさいかなぁ。まあいっか!タマモが強いことはわかったし、あとは光魔法だ!


 三匹目のデュアルピッグを見つけると、タマモはまた私たちの前に出る。デュアルピッグに気づかれないように十分な距離を取り、同じように前足に力を込め始めたが今度は様子が違った。タマモの体の周りにほんのりと光の粒子が現れ始めたのだ。そして時間をかけながら、光の粒子は立ち上がった尻尾の先へと集まっていく。光が一点に収束しきった次の瞬間、眩い光は細く鋭い光線となってデュアルピッグに飛んでいった。細く眩い光がデュアルピックの頭を貫通すると、そのままドスンと倒れた。



「え、一撃?」

「すごい!」

「光魔法での攻撃は少し時間が必要なのでほとんど使うことはありません。使っても瞬間的な目くらまし程度で…」

「目くらまし見たい!」


 ピーちゃんの無邪気なリクエストにより、私とピーちゃんはしばらくの間、強烈な光で目が眩み、前が見えなくなるのだった。


──タマモの強さは確認できたかなぁ。光線の威力はすごかったけど、時間がかかるとなると実戦で使うのは難しいかなぁ?この目くらましは使い方によっては優秀そうだけど、味方も巻き込んじゃうのかなぁ?さっきは私たちに向けて光を放ったみたいだけど。


「…ごめんなさい」

「もうだいぶよくなってきたから大丈夫だよ」

「うぅ…、目がぁ…」

「…ごめんなさい」

「でもタマモはどの魔法も強いし、ほんとにすごいよ!」


 タマモは嬉しそうに、しかし先の失態で申し訳なさそうに、私の足元に体をすり寄せる。ちょうどお腹も空いてきたところで、私は昼食にすることを提案した。


「そろそろお昼だし、もう一匹デュアルピッグを倒したらご飯にしようか」

「はい」

「ぼくが倒してもいい?」

「灰にしちゃダメだよ?」

「うん!」


 ピーちゃんはタマモの戦闘を目の当たりにして、自分も戦いたくてうずうずしていた。少し離れた場所にデュアルピッグを見つけると、ピーちゃんは私の頭上からふわりと空に舞い上がる。そして空中に静止したピーちゃんは、自らの頭上に小さな炎を生み出す。それは、タマモの火の玉を真似するかのような光景だった。しかしピーちゃんが作った炎の玉はタマモが作った大きさよりもずっと小さく、まるで小石ほどの大きさだった。


「いっけー!」


 ピーちゃんはその小さな炎の玉をデュアルピック目掛けて飛ばし、命中させる。地面を掘っていたデュアルピッグは攻撃されたことに気づいたが、遅かった。デュアルピッグは攻撃が飛んできた方向にそのずんぐりとした体躯をふらふらと向けると同時に、力なく倒れた。


「炎の玉なんて今まで見たことないよ!ピーちゃんはやっぱりすごい!」


 デュアルピッグを倒したピーちゃんは満足そうに特等席へと舞い戻る。


──タマモの火の玉を見て真似したのかなぁ?しかも丸焦げにしないために小さい玉にすることで威力の調整をしたんだ。ピーちゃんが炎の制御をするにはうってつけの攻撃方法なのかもしれないなぁ。


 私はピーちゃんが倒したデュアルピッグを解体。解体中、ピーちゃんは周囲を一周し、近くにいたモンスターを処理するため、時折炎を吐いているのを感じた。


「タマモ、このお肉をいい感じに焼いてくれる?」

「はい」


 タマモは解体された肉に近付き、尻尾から火を放つ。焦げつかないように絶妙な火加減を保ちながら、じっくりと肉を焼いていった。ジュウジュウと食欲をそそる音が立ち上がり、香ばしい匂いが広がる。ピーちゃんが戻ってきたところで、私たちは三人で肉を頬張る。野外で食べる焼きたての肉はやはり格別で、その旨味が体に染み渡っていった。


 お腹が満たされたところで、私たちは再び討伐へと向かう。昼食を取り、少し休憩もしたので体力も回復していた。


「そろそろ行こっか」


 その後もデュアルピッグを狩り続ける。ピーちゃんとタマモが交代で次々と倒す。あまりに早く倒すので、次の獲物を探す時間の方が長いぐらいだった。そして依頼の討伐数を終え、私たちは帰路に就く。


「タマモは強いし、ピーちゃんは炎の玉でいい感じに加減できるようになったね!」

「ありがとうございます」

「うん!」


 タマモは照れくさそうに、ピーちゃんは得意げに、それぞれ返事をする。メイカルトに到着した私たちはギルドに向かう。ギルドの扉を開けて中に入り、あやかのいる受付に向かうと、いつものように笑顔で私たちを迎えてくれた。


「レイアさん、お帰りなさい。依頼の報告ですか?」

「はい、デュアルピッグの討伐報告です。これがその証拠品です」

「お疲れ様でした、確認いたします」


 あやかは証拠品を受け取ると、手際よく検分を進めていく。


「確かに確認いたしました。これで依頼は完了となります。報酬はこちらです、ご確認ください」


 あやかは報酬の入った袋を私に渡しながら、今朝の件について話す。


「今朝のギルドマスターとの件ですが、明日出発するそうです。一週間程度で帰還する予定ですので、またその頃にギルドマスターから呼び出しがあるかと思います」

「わかりました!ありがとうございます!」


 私はあやかに感謝を伝え、ギルドを後にした。


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