6-7.5:カルナ視点2
レイアさんたちがここを去る日の朝、封筒を渡されました。中身は手紙だそうです。ホムラさんがレイアさんに預けたもののようで、パーラさんが大切に保管していたそうです。「一人の時に読んでほしい」と言われていたので、ミカンが眠ったあと、私は一階のソファに座り、封筒を開けました。
通常より少し大きな封筒には二通の手紙が入っていました。私はそのうちの一通を読むことにしました。
「これはまさか…」
カルナへ
この手紙を読んでいる頃には私はもうカルナの前から姿を消していることでしょう。
長命種にとって私と過ごした時間は短いかもしれませんが、私にとっては人生のほとんどをカルナと過ごしました。
だんだんと老いていく私の世話をするのは大変だったと思いますが、嫌な顔は見せませんでしたね。
大変でしたか?嫌ではありませんでしたか?
今となっては確認する術はありませんので、ただただ祈るばかりです。
手紙は全員分を書き、ホムラさんに渡してあります。
ルルは大泣きすると思うので慰めてあげてください。
カルナにも最期の忠告をさせてください。
私の死後、カルナがどのような冒険者になるのかわかりません。
私の仲間と一緒になにかしているのでしょうか?
一人で冒険者を続けているのでしょうか?
どこかでエースになっているのでしょうか?
なにをしていても構いませんが、無茶はしないように。
私のお墓が福々堂にあるカルナたちが入れなかった部屋の中に作られるそうです。
カルナの気が向いた時で構いませんので、会いに来てくれると嬉しいです。
直接会えるわけではありませんが、お墓に向かって話しかけてくれると私に届くかもしれません。
少し長くなってしまいましたね。
年を取るとこうなってしまうので、カルナも気をつけてください。
ですが最後に一つだけ、カルナに感謝をしなければなりません。
私の仲間になってくれてありがとう。
カルナと過ごした日々は非常に充実していました。
お互いに迷惑をかけたこともあったと思いますが、それもいい思い出です。
カルナがいたからこその思い出もたくさんありますが、あまり思い出せません。ごめんなさい。
カルナはいい子です。
好き嫌いもなく、なんでも食べます。
少し危なっかしいのが心配ですが、大丈夫だと信じています。
睡眠はちゃんと取ってください。
見張りのしすぎで倒れたことだけは忘れていませんよ。
なにをしていても構いません。
私たちとの思い出を忘れても構いません。
冒険者は自由です。
迷惑をかけないよう、自由に冒険を続けてください。
メリアより
あ、ルルのことは気にかけてあげてください。元気そうに見えて寂しがりやなので。
手紙の文字を見た瞬間、私の目から涙が溢れ、止まりませんでした。それはメリアさんからの最期の手紙でした。いつ書いたのかわかりませんが、確かにメリアさんの字で書かれていました。
「そんな…、私は…」
私は泣き崩れました。メリアさんが亡くなったあと、私は鬼人国を去りました。耐えきれなかったのです。この手紙はその時に受け取るはずだったのでしょう。ですが、ホムラさんからレイアさんに渡り、長い時を経て私に届きました。私はその事実を察し、涙が止まりませんでした。
「メリアさん…、私は…」
少しだけ感情が収まった後、私は二通目の手紙を開きました。
バカへ
手紙呼んだ?
メリアがあんたに書いた手紙よ。
あんたがいなくなったから渡せずにいたんだけど、やっと渡せるわ。
最初はホムラが渡しに行こうとしてたけど、私が止めたのよ。
リシューに引きこもってるのは知ってたわ。
だから、あんたが次に福々堂に来るまで手紙は渡さないことにしたの。
でもあんたは来た。
レイアを連れてきただけかもしれないけど、私は嬉しかった。
でも殴るって決めてた。
一緒にお墓の手入れをしたからわかると思うけど、定期的に手入れが必要なの。
だから掃除しに来なさい。
いつ来てもいいけど、次はもっと早めに来てよね。
ルル
私はルルさんからの手紙を読み、また泣きました。ですが、うれし涙も混ざっていたと思います。
「ルルさんらしいですね…」
この国から出ることはないと思っていましたが、レイアさんが連れ出してくれました。そしてルルさんに殴られましたが、殴られて当然だと思います。比較的温厚な族長でさえ殴ると言ったのです。ルルさんの怒りは相当なものだったと思います。ですが、そのおかげでメリアさんのお墓の存在を知ることができました。最期の手紙も受け取りました。
「私は…、多くの方に感謝をしなければならないようですね…」
私にはわからないことがありました。なぜ様々な人たちが、メリアさんやレイアさんのような炎の巫女を優遇するのか。頭の上が特等席になっているフェニックス。そしてフェニックスを頭に乗せた炎の巫女。長く生きている方ほど炎の巫女を優遇…、いえ、大切にしているように見えました。
ですが、これが長命種の宿命なのでしょう。お世話になった今は亡き炎の巫女を、今の炎の巫女であるレイアさんに重ねているのです。私も自然と助けなければと思い、鬼人国まで行ったぐらいですから。
親友が苦しんでいれば、私は必ず助けていたと思います。苦しんでいたレイアさんに、メリアさんの面影を重ねてしまったのでしょう。そしてみなさんもそうしているように思います。
「はぁ…、もう寝なければ…。メリアさんに怒られてしまいますね…」
私は二通の手紙をマジックバッグに入れ、床に就きました。気がついた時には朝になっていました。部屋には起きない私を心配したミカンが起こしに来ていました。
「おかーさん、大丈夫?」
「…ええ」
私はミカンを抱き上げ、頭を撫でました。
──メリアさん、ルルさん。会いに行くのはこの子を一人前の冒険者として送り出してからでも遅くはありませんよね?
「ワフ」
「タマがお腹空いたって」
「そうですね、下に行きましょうか」




