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6-5.5:ノエルとステラ視点

「やっとS級になったな!」

「報告しに行きましょう!」


 今でこそ「二人組のエルフ族」と言うだけで、ステラと私の名前が上がるほど有名になったが、最初から強かったわけじゃない。どんな冒険者もG級から始まり、一つずつランクを重ねていく。飛び級する冒険者もいるにはいるが。


 これは、ノエルと私がまだB級だった頃のお話になります。いつものようにギルドに行き、依頼掲示板で依頼を探していた時、彼女たちがギルドの扉を開けたのです。大きな杖を持ち、杖からは美しいピンク色の花が咲き乱れていました。頭の上には太ったファーストバードを乗せ、赤い鎧のアンデッドが彼女の後ろを歩き、小さなドラゴンと小さな鳥が両肩に乗っていました。


 彼女の名前を知らない冒険者はいない。すべての大陸に名が轟いている。それもそのはず、彼女は最強の冒険者。彼女の訪れたギルドではS級依頼がきれいに消え、滞っているA級やB級も消える。ギルドに入ってきた彼女は掲示板にあるS級の依頼書をすべて持ち、受付に向かっていった。その姿にステラと私は畏怖を抱きつつ、感動したのを今でも覚えている。


「『テシアさん』みたいになれるといいですね」

「まずは上級冒険者にならないとな」


 テシアさんはすべての依頼を数日で終え、ギルドでマジックバッグから大量の証拠品を取り出し、大金を収納すると旅立ってしまいます。ビーストテイマーの魔法なのか、小さなドラゴンは大きくなり、テシアさんたちを乗せて飛び去っていくのです。


 テシアさんと知り合うきっかけになったのは別の大陸にあるダンジョン。初めてテシアさんを見てから時が経ち、ステラと私は念願のB級冒険者になったばかり。私たちが受けた依頼はダンジョンの調査。山の麓にあるそのダンジョンはC級モンスターまでは確認済みだったので、B級以上の依頼となっていた。


 そのダンジョンはスネーク系のダンジョンでした。ノエルと私がダンジョンを進んでいくとイエロースネークが現れました。イエロースネークはB級。私たちと同じランクですが、勝てないモンスターではありません。私たちはイエロースネークを難なく倒し、さらに進むとA級のレッドスネークが現れました。私たちでは勝てないはずでしたが、勝つことができました。これが私たちを慢心させてしまったのです。


 ステラと私はレッドスネークの皮を証拠品としてギルドに持ち込んだことで、ダンジョンのランクは最低でもA級に認定された。これ以上の調査はS級の担当だったが、私たちは再びそのダンジョンへ足を踏み入れることにした。


 ノエルと私は数体のレッドスネークを倒し、すでに疲労が溜まっていました。ダンジョンから出る前に倒したレッドスネークの皮を剥ぎ取っていると、奥からブラックスネークが現れたのです。レッドスネークよりもさらに大きく、私たちを丸呑みできるほどの大きさでした。その巨体を目の前に、私たちの体は動かなくなってしまいました。


 S級モンスターに防戦一方、いや、防戦にもなっていない戦闘を強いられていた。それどころか、肉体的疲労に加えて、目の前のブラックスネークに対して精神的にも疲労していた。ブラックスネークは一瞬の緩みも見逃さず、私は壁に打ち付けられ、ステラも反対側の壁に打ち付けられてしまった。


 意識が遠のく中、私の目には三体の小さな鳥のようなものが競うようにしてブラックスネークに突進していくのが見えました。ノエルも同じものを目にしてから意識がなくなったと、あとから聞きました。その後、山から少し離れた平原で私たちは目を覚ましたのです。


「目が覚めましたか?」

「ここは…」

「平原です。あなたたちがいた山はあそこ。この子に往復してもらったんですよ」


 テシアさんは食事中の小さなドラゴンを撫でながらそう言いました。その食事には、なぜかノエルも混ざっていました。


「ステラ!テシアさんの料理はうまいぞ!」

「どんどん食べてくださいね」


 ステラも食事を食べ始めると、一心不乱に食べ進めていた。都市の外で温かい料理を取ることはほとんどない。マジックバッグを持っていなければ基本的には保存食のみ。モンスターを焼いて食べることもあるが、それでも料理の味には到底かなわない。テシアさんたちと私たちの食事が終わると、テシアさんは静かに私たちを叱った。


「私たちがいなければどうなっていたかわかりますか?」

「はい…」

「ご迷惑をおかけしました…」

「今後は気をつけてください。それから、これはあなたたちの取り分ですから持ち帰ってください」


 テシアさんはマジックバッグからレッドスネークの皮を数枚取り出し、私たちに渡しました。おそらく、ノエルと私が倒した分の皮でしょう。ですが私たちはその皮を拒否しました。命の恩人に少しでも恩返しがしたかったのかもしれません。テシアさんは私たちが受け取りを拒否すると、再びマジックバッグに収納しました。


 テシアさんとはそこで別れ、次に会ったのは私たちの生まれた大陸。それも鬼人国の福々堂に住んでいた。テシアさんは南の大陸出身だったが、私たちの故郷のすぐ隣を拠点としていた。ここを拠点とする理由を尋ねたこともあったが、教えてはくれなかった。


 テシアさんと再会した時、テシアさんのお仲間はピーちゃんとアカマサさんだけになっていました。他のお仲間は寿命を迎えてしまったそうです。「ビーストテイマーであってもすべてのモンスターを使役できるわけではない」とその時に教えていただきました。そして、テシアさん自身もさらに年を重ねていました。


 再会してからはテシアさんによる訓練が始まった。私はアカマサを師匠と呼び、ステラはテシアさんを一人目の、ホムラを二人目の師匠と呼ぶようになった。なぜ訓練がはじまったのかはわからなかったが、杖にくっついていた花の咲き乱れるモンスターが人の姿になった時に教えてくれた。


「テシアさんはあなたたちに期待してるんですよぉ。『あの二人は私たちを超える』ってずっと言ってますからぁ」


 ノエルと私は約一年に及ぶ訓練により、S級に匹敵するだけの実力を手に入れました。それでもアカマサさんやホムラさんに勝つことはできませんでした。訓練が終わり、実力を確かめるための冒険に出掛ける時、私たちはピーちゃんから羽根を授かり、テシアさんからはマジックバッグの原石をいただきました。


「この原石は…、昔、とあるバカな二人組の冒険者が倒せなかったモンスターを私たちが倒した時に出てきたものです。少し早いですが、S級のお祝いです」


 その数年後、私たちはS級に。テシアさんに報告に行くと自分のことのように喜んでくれた。ピアスを付けるようになったのはこの時。テシアさんの故郷では、一定の年齢になるとピアスを付ける風習があるらしい。テシアさん自身も右耳に付けていたので、ステラと私も右耳に。


 今思えば、ピーちゃんの、フェニックスの羽根を耳からぶら下げるなんて怖いもの知らずだったと思います。ですが、テシアさんとピーちゃんはそれを見て喜んでいました。羽根を金属と組み合わせることは少々大変だったようですが、テシアさんたちが頑張ってくれました。


 そこからさらに数年、私たちが別の大陸での冒険を終えてテシアさんに会いに行くと、彼女は亡くなっていた。ピーちゃんは消え、師匠もいない。残っていたのはサクヤのみ。私はサクヤを問い詰めたが、「一番辛いのはサクヤさんです」とステラに言われた。


 ノエルと私は今まで真実を知りませんでしたが、ホムラさんに教えていただきました。それがテシアさんの遺言の一つ。そしてもう一つ、テシアさんは遺言を残していました。


「『私たちを超える冒険者になってください。ノエルとステラ、二人なら可能です』か…」

「大変なことになりましたね…」


 そして現在、私たちの名はすべての大陸に轟いている。それでも、テシアさんたちを上回ったとは思っていない。テシアさんがあらゆる依頼を受けていたのは野心があったからだとサクヤから聞いた。有名な冒険者のほとんどが長命種。ビーストテイマーは珍しいが、人間であることは変わらない。人間でも有名な冒険者になるために各地を転々とし、あらゆる依頼を受けていたそうだ。


「依頼をこなせるだけこなしていたな」

「それも冒険者の一つの在り方ですからね」


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