6-4:アカマサ
私がみんなやミカンとお菓子を食べていると、ホムラたちが戻ってきた。
「ルルさんは大丈夫ですか?」
「上で寝てるよ」
「それより、レイアに大切な話があるんだけどいいかい?」
「大切な話ですか?」
「うまくいけばみんなの言葉を取り戻せるはずだよ」
「教えてください!」
私は一も二もなく、ホムラの提案に飛びついた。
──みんなと話せるようになるならなんでもする!
ホムラからの話は単純だった。ホムラたちから忠告されていた森へ入ること。森は「幽玄の森」と呼ばれ、鬼福の里の西門、もしくは南門から出てすぐの場所にある。森に入ってからが大変だと言うが、そこから先の情報をホムラは話さなかった。
「明日の朝、レイアたちには森へ行ってもらうけどいいかい?」
「行きます!」
夕食はいつにもまして豪華であり、ルルを除いた全員での食事となった。イスの数が足りず、サクヤが別のところから追加でイスを持ってくる。人数が多いため部屋も狭く感じるが、ミカンはこれだけの人数との食事が初めてなのか、終始楽しそうにしていた。
夕食後、あやか、たいち、かえで、ミーティアの四人は福々堂を後にした。明日の朝、四人はもう一度ここに来るという。その後、私たちはお風呂に入り、床に就いた。翌朝、私たちが朝食を取り終えてあやかたちの到着を待っていると、ルルが部屋にやってきた。
「ルルさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫」
ルルはカンナとミカンのところに行き、謝罪をする。
「昨日はごめん」
「私は…」
「握手して!」
「え?」
「握手で仲直りするってギルドマスターが言ってた!」
ミカンがノーマンに教えられたことを口にすると、ルルが手を差し伸べる。カルナは少しだけ戸惑った末に、二人は握手を交わした。そこに怒りの感情はなく、重なった手からは小さな優しい光が広がったように感じた。
あやかたちが到着したので森へ向かう。パーラが杖を取り出したので私はそれを握りしめた。そして一言を発さず、ただ森を見つめ、みんなと再び話せることを祈って歩き続けた。
森の入り口に到着すると、ホムラたちが口を開いた。
「ここから先はレイアたちだけで行くんだよ」
「レイアであればこの森で迷うことはない」
「真っすぐ進めばハドックさんと同じ赤い鎧のアンデッドが現れますよぉ」
「ここで帰りを待ってるからね」
「はい。みんな、行こう」
私の言葉にみんなは反応するが、今の私にみんなの言葉は届かない。森に足を踏み入れてすぐ、森の異変に気づく。双峰森林や咆哮山の麓の森とはまた別の空気感。漂う空気はわずかに乾いているものの、木々や地面から生える草は生命力に溢れている。
私たちが歩き続けていると、遠くの方に何かが立っているのが見える。先頭を歩いていたケリュスとリオンは立ち止まり、私たちは歩みを止めた。
「あれがそうかな?」
「ここで待ってて」
人の姿になっていたノココはそう言って遠くの人影のようなものに近付き、何か言葉を交わすとすぐに戻ってきた。
「ノココ、なにか言ってた?」
「あれについていけばいいよ」
私たちはその人影に近付いていく。その人影はホムラたちの言ったように赤い鎧のアンデッドだった。全身に真紅の鎧をまとっているが、ハドックや古城跡にいたアンデッドとは違う種類の鎧。腰には武器のようなものが一本下げられている。
──ノエルさんが使う剣より小さいけど、剣だよね?
赤い鎧のアンデッドは、丁寧にお辞儀をすると私たちに背を向け、森の奥へと進んでいく。途中、昼食を取るために立ち止まったがモンスターは現れない。それどころか、森に入ってから一度もモンスターが出現していないことに気づいていないのは、私だけだった。
暗い森がさらに暗くなって日が落ち始めてきた頃、揺らめく小さな炎が見え始めた。その小さな炎の上には、四本の柱に支えられた屋根があり、それを隠すかのようにこの辺りは木々がより鬱蒼と茂っている。
私たちは炎のそばまで近付く。炎は小さなお皿、緋炎の祭壇のようなものの上で煌々と燃えている。その炎は当然ながら熱い。しかし優しく、どこか心地よい熱を放つ。私はこの炎の放つ熱をよく知っている。生まれた時からそばにいる私の大切な相棒。私の頭上を特等席とし、その小さな体からは想像もできないほどに大きな力を持つ。
──この炎、ピーちゃんが使うのとよく似てる。
私たちが炎を眺めていると、赤い鎧のアンデッドの言葉をノココが私に伝える。
「レイアとピーちゃんだけ屋根の下に入ってほしいって」
「わかった」
ピーちゃんを頭上に乗せたまま、私は屋根の下に入り、炎のすぐ近くまで近付く。私が立ち止まると、ピーちゃんは特等席から舞い上がり、ゆっくりと炎の中へ入っていった。
「ピーちゃん!」
「大丈夫!」
「え…?」
ピーちゃんが炎の中に入って小さなお皿に鎮座すると、炎の勢いが増すと同時に、私の胸のアザが今までで一番の輝きを放ち、熱を帯びる。そして、眩い空間が私とピーちゃんを緋炎の祭壇ごと包み込む。
「これは…」
「レイア、わかる?」
「うん、わかるよ」
「よかった!」
「ピーちゃん、これは…?」
「ぼくがもっと強くなる!」
「強く?」
「うん!」
私は久しぶりに聞いたピーちゃんの言葉よりも、この空間に驚いていた。ピーちゃんは小さな緋炎の祭壇で燃え盛る炎の中から元気そうに私と会話をする。この空間はいつもならすぐ収まるのだが、なかなか戻らないことを私は疑問に思った。
「ピーちゃん、この光の空間が終わらないんだけど…」
「もうちょっと!」
「もうちょっとって、どれくらい?」
「わかんない」
──みんな大丈夫かなぁ?
光が収まった時、森の中は入った時と同じほどの明るさになっていた。燃え盛っていた炎は元の大きさに戻り、ピーちゃんは特等席に鎮座している。炎の中にいたピーちゃんには外見的変化は見られず、私の頭に伝わる温もりも今までと変わらない。そして光が収まると、目の前にはみんなが心配そうな顔から驚きと安堵の表情に変わる。
「ただいま!」
「…そうだね、ただいま!」
私はピーちゃんの言葉を繰り返し、みんなの元へ駆け寄った。その後、みんなの言葉が再び理解できるようになった私が今までの空白を取り戻すように会話をしていると、大きな音が二つ鳴り響き、みんなで笑い合い、昼食を取る。
「もぐもぐ」
「もぐもぐ」
「ピーちゃんはわかりますが、レイアさんもなんて…」
「お二人とも、もう少しゆっくりと…」
「ハドック、無理よ。空腹には誰も勝てないわ」
「うむ、空腹より強いモンスターはおらんな」
「リオンもたくさん食べないと!」
その様子を、赤い鎧のアンデッドは炎のそばで優しく、そして笑顔で見守っているように感じた。昼食後、空腹が満たされた私は、胸のアザの光と熱が収まっていないことに気づく。
──あれ?まだ光ってる?
私がそう思った時、再び光に包まれた。光の中にいたのは私と赤い鎧。赤い鎧は腰の武器を置き、その場に座り込んで私に頭を下げた。
「拙者は『アカマサ』と申します」
「アカマサ…、さん?」
「では姫様、これからよろしくお願いいたします」
「姫様!?」
光が収まると、再び光に包まれた私をピーちゃんとノココ以外は心配していた。そして私が話し始める前に、アカマサが口を開いた。
「皆様、姫様にお仕えすることになりました、アカマサと申します。以後、よろしくお願いいたします」
「ぼくピーちゃん!」
「タマモです」
「ハドックと申します」
「パーラよ」
「ケリュスだ」
「リオンっていうの」
「ノココ」
「えっと…、あの…、アカマサ…、さん?」
「姫様、拙者に敬語は不要」
「あ、うん。アカマサはモンスターなのに名前があるの?」
私の疑問にアカマサは答える。アカマサは炎の守護者にして巫女の守護者。そのため、歴代の炎の巫女に仕えてきたという。「アカマサ」という名前があるのは、アカマサが少し特殊なモンスターであるため。アカマサは自分のことを話し終えると、炎とピーちゃんについて話し始めた。
「姫様、緋炎神話をご存知で?」
「アメリから聞いたような…」
「こちらにあるのは緋炎の祭壇。そしてこの炎は『原初の炎』でございます。フェニックスはこの炎を身に纏い、巫女様の助けを借りて真のフェニックスになるのです」
「え?じゃあピーちゃんは…」
「ピーちゃんこそがフェニックスでございます」
「えっへん!」
ピーちゃんは特等席から得意げにそう言い放った。アカマサの話は続き、私に炎の巫女としての話を始める。巫女はフェニックスの相棒であり、フェニックスの強大な炎を緋炎の祭壇に灯す重大な役割がある。そして、この世界にある全ての祭壇にフェニックスの炎を灯すことが使命。
「ちょ、ちょっと待って!いきなりそんなこと言われても…」
「歴代の巫女様もそう仰られます。炎については魔法を覚えていただいたあとにいたしましょう」
「魔法…?」
「正確には魔法ではございません。フェニックスと巫女、双方の繋がりをより強固にするもの。これができなければ炎を灯すことも不可能」
その後、アカマサによる魔法の訓練が始まった。訓練中、私とピーちゃん以外はやることがなく、少し離れた場所で待機。しかし、私とピーちゃんの繋がりが強くなるにつれて、みんなは私とピーちゃんを見つめ、驚くようになっていった。
数日後、私は魔法を習得。アカマサの言ったように魔法ではなく、私とピーちゃんの繋がりを強化するようなものだった。互いの魔力が混ざり合い、まるで私が炎を扱えるかのような感覚。
アカマサは私が魔法を習得すると、私が巫女であることとピーちゃんがフェニックスであることは、信頼できる人以外には話さないように忠告した。
「では森を抜けましょう」
「この場所を離れていいの?守護者なんでしょ?」
「この場所を守るよりも姫様の安全が第一。祭壇も屋根も造り直せます」
私たちはアカマサを加えて森を抜ける。来た道を戻っているとハドックが私に尋ねた。
「レイア様」
「どうしたの?」
「わたくしも『姫様』とお呼びした方が…」
「ダメ!ハドックはそのまま!むしろアカマサに呼び方を変えてほしいぐらいだよ!」
「拙者が巫女様を呼ぶ際は『姫様』以外あり得ませぬ」
魔法の訓練をした数日間、私は何度かアカマサを説得したものの、頑なに呼び方を変えず、最終的に私が折れた。森を抜けたのは日が落ちた頃。私たちが入ってきた場所にはあやかとたいちが待っていた。
「レイアさん!」
「レイアちゃん!」
「あやかさん!たいちさん!」
笑顔であやかに抱きつくと、たいちが口を開いた。
「元気になったな」
「みなさんの言葉はわかるようになりましたか?」
「はい!」
私は新たに仲間になったアカマサの話をし、鬼福の里に戻る。
──あやかさんとたいちさんには言ってもいいのかなぁ?
鬼福の里の南門はすでに閉まっていたが、あやかが門番に族長であるかえでを呼び出すように伝える。少し待っていると、かえで、ミーティア、ふうかがやってきた。かえでの許可により私たちは里に入り、ふうかは私のギルドカードを預かる。
「レイアさん、お疲れ様でした」
「あの…」
「お話はのちほど伺います。あやかとたいちはレイアさんたちと福々堂へ。ミーティアさんとふうかは私と一緒にギルドへ」
私たちは南門で別れ、福々堂へ。その道中、私はみんなと話す。あやかとたいちはみんなと楽しそうに会話をする私を見て、安心した笑顔をしていた。福々堂はすでに明かりが消えていたが、あやかは構わず扉をノックする。すると扉が開き、中からルルとカルナが出てきた。
「おかえり」
「おかえりなさい」
いつも泊まってる部屋に入ると、フォルスがイスに座っていた。
「おお、帰ってきたか」
私たちが部屋に入ると、ルルとカルナは寝室に入っていった。私は定位置である中央のイスに座り、みんなもそれぞれの定位置となっている場所で休む。アカマサはみんなの定位置を確認した後、ハドックの隣に立った。
パーラが夕食の準備を始めたので、私とタマモ、あやかが手伝う。夕食の準備が整った時、寝室から美しい衣装をまとったミカンが出てきた。それは福々堂で作っている薄い着物である浴衣。普段着ている薄い緑のワンピースに近い色に、頭に付けている山吹色の大きな二つの珠に近しい色の帯。
「あ!おねーちゃん!おかえり!」
「ただいま!」
「ピー!」
「見て!見て!」
ミカンが私の前まで来ると、くるりと回って服を見せびらかす。
「ミカンちゃん、かわいい!」
「えへへ、ありがとう!」
私たちは夕食を取る。ホムラたちやあやかたちはすでに夕食が済んでいたので、夕食を取るのは私たちだけ。ミカンは新しい服を手に入れ、くるくると回りながらみんなに見せびらかした後は、アカマサを見て私に尋ねる。
「おねーちゃん!新しい仲間!?」
「うん、アカマサって言うんだよ」
「よろしくお願いします!」
「ワフ」
アカマサはミカンと同じ視線になるようにしゃがむと、頭を下げた。
「……」
「『よろしくお願いいたします』って言ってるよ」
夕食後、お風呂に入るとミカンはすぐに眠ってしまった。元々限界に近かったが、新しい服と私たちの帰還により、はしゃいだ反動が出た。ミカンが眠った後にかえでたちが訪れ、ふうかが私にギルドカードを返却する。
「レイアさん、こちらがモンスターの登録を終えたギルドカードになります」
「ありがとうございます」
「かえで、準備はどうだい?」
「いつでも」
「レイア、着替えるよ」
「え?」
私は寝室に連れ込まれ、例によって魔法で身ぐるみを剥がされる。寝室で眠るミカンのそばには、ミカンが眠った直後からタマが張り付いている。ミカンを起こさないよう静かに、しかし迅速に私の着替えが進んでいった。
着物をきっちりと着させられ、その上から緑のケープを羽織る。足元は草履で、髪はあやかが丁寧に三つ編みにし直し、リボンを付ける。
「あの…、どこに行くんですか?」
「巫女の務めを果たしてもらうよ」
「え…?」
私たちが向かった先は、私たちが使用する部屋の扉の右隣の扉。しかし、この中に全員は入れなかった。私、ピーちゃん、アカマサ、ホムラたち四人、かえで、ミーティア、カルナのみ。
「みんな、ちょっと待っててね」
「あやかたちもここで待つように」
私たちは扉の中に入る。部屋は私たちが使用している場所より遥かに広く、そこには石で作られた同じようなものが数多く並んでいる。石には名前のような文字が刻まれており、しっかりと掃除が行き届いていた。
部屋の中央にあたるであろう場所には小さな緋炎の祭壇がある。森で見た祭壇よりは大きく、お城や都市に設置してあるものよりは小さい。炎は灯っておらず、祭壇も掃除が行き届いている。扉が閉まると、ホムラは緋炎の祭壇を指し示した。
「レイア、あれに頼むよ」
「あの、私のこと…」
「レイアが巫女であり、ピーちゃんがフェニックスであることはここにいる全員が知ってるよ。神話の通り、ピーちゃんは五百年ごとに生まれ変わって現れる。でも、ピーちゃんはどういうわけか前のことは全部忘れてるんだよ。でも、たとえそれでも、その姿や頭に乗りたがる習性は変わらないんだよ」
ホムラが私の疑問に答え終わると、私はピーちゃんを頭に乗せたままゆっくりと前に進む。
──みんな知ってたんだ。だから優しくしてくれたんだ。じゃああやかさんやミカンちゃんは知らないのかなぁ?
私が祭壇の前に立つと、ピーちゃんは空の祭壇に舞い降り、私に合図を送る。
「いつでもいけるよ!」
「やるよ!」
私は一歩下がり、杖を立て、魔力を込める。それを見たピーちゃんは全身に炎を纏い始めた。
「スカーレットリンク!」
私が魔法を発動させるとピーちゃんの纏う炎が大きくなり、その炎は私にも流れ、私も炎を纏う。炎は心地良い温かさで、私の魔力とピーちゃんの魔力が繋がり、混ざり合う。ピーちゃんの小さな体に纏った炎は球体のように丸くなり、次第に大きくなった。球体の成長が止まると同時に炎は弾け、中からフェニックスとなったピーちゃんが現れる。
左右の翼は大きく、丸々と太っていた体もスリムになっている。頭からぴょこんとでていた飾り羽の大きさは変わらず、お尻の部分からは炎の尻尾が生えている。フェニックスとなったピーちゃんの背丈は私よりやや大きいが、翼を広げることで横にも大きくなり、誰もが驚く大きさに見える。
森での訓練中、炎を纏った私の銀髪は炎を受けて光り輝き、「ピーちゃんと同じ緋色に染まっているように見える」とタマモが言っていた。フェニックスとなったピーちゃんは祭壇の上で静止し、大きく、そして鋭くなった嘴で自らの燃え盛る羽を一枚取ると、祭壇の上に落とす。
燃え盛る羽根が祭壇に触れると、たちまちに大きな炎が燃え盛り始める。それは祭壇よりも大きな炎になり、空中で静止するピーちゃんまで炎の先端が届くほど。しかし、次第に炎の勢いは収まり、祭壇からわずかにはみ出る程度まで炎が小さくなった。
無事に緋炎の祭壇に炎が灯ると、ピーちゃんは満足そうな笑顔になり、左右の翼で自らを包み込む。そして翼を開いた時、ピーちゃんはフェニックスから太ったファーストバードに戻り、炎は弾けて消えた。それと同時に私の纏っていた炎も消え、ピーちゃんは特等席へと舞い戻る。
「ピーちゃん、お疲れ様」
「レイアも!」
私が振り返ると、ホムラたちは満足そうな笑顔の一方で、かえでとカルナは涙を流し、ミーティアが二人を慰めていた。そしてアカマサが私たちに近付き、労う。
「訓練通り、お見事でございました」
アカマサに先導されながら私とピーちゃんがホムラたちの元に戻ると、ホムラがもう一仕事あると言い、部屋を後にする。部屋の外ではみんなとあやかたちが心配そうに待っていた。
「レイアさん、お体は?」
「大丈夫ですよ?」
あやかは私の心配をするが、私の体に異常はない。
──ちょっと眠いかなぁ?
私たちはお店を出て、里の中央にある祭壇に向かう。ホムラたちとカルナはお店に残った。お店の外に出ると里の中は静まり返っていた。森から戻った時はわずかに人の往来があったが、今はそれもない。ほのかに道を照らす明かりが暗闇によく映えている。
里にある大きな祭壇に到着すると、かえでが祭壇を黒い半球状の膜で覆う。
──これって…。
私はこれをよく知っている。かつてタマモが覚醒した時、ステラが展開した魔法。視界を遮り、内外の音を遮断する魔法の黒い膜。私たちが膜の前で立ち止まると、かえでが率先して中に入る。それに続いてあやかとたいち、ふうかが続き、私たちが中に入ると、最後にミーティアが入る。
中はわずかに明るく、私とピーちゃんは祭壇のそばまで行き、みんなとミーティアはあやかたちの隣に並ぶ。ピーちゃんが祭壇に舞い降りて私が杖を立てた時、腕についているブレスレットが目に入る。ブレスレットは三つの珠が光を失っていた。
「ピーちゃん、この祭壇は大きいからさっきより魔力使うよね?」
「ぼくが頑張るから大丈夫!」
私は杖に魔力を込める。そしてピーちゃんが炎を纏ったところで、私は魔法を発動した。




