6-2:みんなの声
「おはよぉ…、ございますぅ…」
「おはようございます。はぁ…、どうしてビーストテイマーの人は朝に弱いんでしょうね」
「すみま…、せん…」
「怒っているわけではありませんよ。さあ、着替えてください」
私が着替え始めると、カルナは二階に向かった。着替え終わり、パーラに髪を整えてもらっていると、まだ眠そうなミカンが小さなタマを抱えて、カルナと一緒に二階から降りてきた。
「レイアさん…、おはよぉ…」
「おはよう、まだ眠い?」
「ちょっと…」
朝食後、ミカンの目は一気に覚めて元気になった。その後、カルナはギルドに行き、ミカンは私と家に残る。
「では行ってきます。レイアさん、なにかあればギルドまでお願いします」
「わかりました」
「いってらっしゃーい!」
「ミカンちゃんはどこか行くの?」
「うーん、どこ行こうかなー?」
「ワフ」
「あ!そうだね!」
私たちがミカンとタマの後についていくと、二人は東門から平原に出た。都市から十分離れた場所で、ミカンとタマは魔法の練習を始める。大きくなったタマは氷で的を作り、ミカンが水や火、風属性でその的を破壊していく。
──ミカンちゃんは魔法が使えるんだ。
魔法の練習は短時間で終わり、ミカンの休憩のために私はその場に布を敷き、座って話を始める。
「レイアさんの使える属性はなに?」
「私は…、生活魔法しか使えなくて…」
「え!?こんなに仲間がいっぱいなのに!?」
その後、私たちが向かったのは漁港。漁港は都市の西側にあるので、戻るついでにギルドに立ち寄る。ギルドの中にいる冒険者の数は少なく、入ってくる私たちを見たカルナが駆け寄ってきた。
「なにかありましたか?」
「なにもないです。これから漁港に行くのでそのついでに」
「漁港ですか…、実は…」
カルナの話では、漁港の沖合にオクトパスリーダーが現れたという。その対応にノーマンが漁港へ向かっていると私たちに伝える。
「私も行く!」
「レイアさん、お願いできますか?」
「わかりました」
私たちはギルドを後にして漁港に向かう。漁港までの道中、ミカンは楽しそうにノーマンの仲間について話し始めた。
「ギルドマスターのモンスターはすっごく大きくなるの!」
「そうなんだ」
「オクトパスリーダーと同じくらい大きくなるんだよ!」
その発言を聞いて私たちは驚きを隠せなかったが、オクトパスリーダーを知らないケリュス、リオン、ノココは何も反応しなかった。その後もミカンは楽しそうに話を続ける。
黒い羽毛を持つモンスターは小さくなっているわけではなく、ギルドマスターの部屋にいたサイズのまま。と言っても私の半分ほどの大きさがあり、ほとんど戦力にはならず食べる専門。青い毛並みを持つ狼のようなモンスターは大きくなるもののタマよりは小さく、水面を歩くことができるという。そして長い首と四つのヒレを持つモンスターがオクトパスリーダーのようにとても大きくなるそうだ。
──すごく見てみたいかも。
漁港に到着するとすでにオクトパスリーダーは討伐されていた。海上にオクトパスリーダーと同じくらい大きなモンスターと、波のある海上で静かに佇む青い狼のモンスターがいた。漁港に立っているノーマンの足元では、黒い羽毛を持つモンスターが眠そうにあくびをしている。私たちに気づいたノーマンは、黒い羽毛を持つ仲間と一緒にこちらに歩いてきた。
「二人ともどうした?」
「ギルドでカルナさんに聞いて」
「そうか、だがもう終わったぞ。あとは回収と解体だけだな」
私たちはオクトパスリーダーの回収を間近で観察し、ノーマンは大きな仲間を小さくした。回収が終わると、水産ギルドの職員が綺麗に脚を切断。そしてその脚を使ってタコ料理を作り、みんなに振る舞い始めた。
「昼には少し早いが、食っていくか」
「はーい!」
「レイアたちも遠慮しないで食え」
「は、はい」
ここでもオクトパスリーダーはタコと呼ばれ、たこ焼きや炊き込みご飯、焼いたものや揚げたものをみんなで食べた。昼食後、ノーマンはギルドに戻り、ミカンはうとうとし始めた。
「ワフ」
「レイアさん…、少しお昼寝していい…?」
「うん、起きるまでそばにいるからね」
「ありがと…」
そう言って、横たわる大きなタマにもたれかかってミカンは眠り始めた。ミカンは漁港から少しだけ離れた街道のそばで眠り始め、私たちもその隣に並ぶ。この都市に住んでいる人や漁港、漁村の人たちはミカンとタマ、ノーマンたちで慣れているのか、私たちを見ても驚くことはない。それどころか、タマにもたれかかって眠っているミカンを見て、笑顔で見守っているように見える。
──みんなでミカンちゃんを育ててるってこういうことなんだろうなぁ。
ミカンが昼寝から起きると、私たちは漁港を見て回る。タコ料理をまだ配っていたので、私たちの分とミカンたちの分をもらい、その両方をパーラが収納した。その後は水産ギルドに向かう。
「こんにちはー!」
「ミカンちゃん、よく来たね。今日は多めにお願いするよ」
「はーい!」
「なにするの?」
「氷作るの!」
水産ギルドで氷を必要としていることを私は知っている。アクアハーバーは大きな漁港であるためその消費量は膨大。しかしここは小さな漁港であるため、それほど氷が必要ではないのだが、今回は違った。
水産ギルドの職員についていった先は寒い倉庫。そこで、ミカンではなくタマが綺麗な砕氷を直接作り上げる。
「タコがあるからもう少し頼むよ」
「もっとだって」
「ワフ」
氷を作り終え、ミカンは書類をもらう。
「じゃあこれね」
「はーい!ばいばい!」
私たちはギルドに戻る。ミカンの書類は私がいつも受け取る書類と同じで、報酬をもらうためのもの。ミカンはそれをギルドに提出するという。
「渡すとどうなるの?」
「褒めてくれるの!」
──報酬なし!?
漁港からギルドに帰るまでの道中、私は漁港にあった見たことのない形をした船についてミカンに尋ねる。
「ミカンちゃん、あの大きい船ってなにかわかる?」
「あれはギルドマスター専用のお船!さっきのおっきいのが引っ張るの!」
ミカンはギルドでカルナに書類を提出すると、カルナはミカンを褒め、私たちはそのままミカンの家に戻る。家に戻り、ミカンがみんなを撫でて回っているとカルナが帰宅した。
「おかえりー!」
「おかえりなさい」
「ただいま」
私はカルナにタコ料理を全て渡し、夜もタコづくしとなった。そしてミカンが眠った後、私はカルナに尋ねたいことがあった。
「ミカンちゃんが氷を作ったと思うんですけど、報酬はどうなるんですか?」
「報酬は私とノーマンさんで管理しています」
「管理ですか?」
「将来的にあの子が冒険者になるとしてもお金は必要です。そのため、氷作りは依頼であることは伝えずにこなしてもらっています」
「そうだったんですね」
「レイアさんもビーストテイマーならわかると思いますが、食事にかかるお金は計り知れません。タマもよく食べますし、今後仲間が増えればそれだけ稼ぐ必要があります」
「そうですね…」
翌日、私たちが漁村に向かっていると、遠くの空から何かがこちらに飛んでくるのが見える。
「ピー!」
「ワフ」
「え?テイルさん?」
「え?おにーちゃん?」
「おにーちゃん?」
「テイルおにーちゃん!」
──テイルさんがお兄さん?でも一人になったって言ってたし…。
その何かが近付いてくると、白いドラゴンのようなものが見え始める。
「あ!タマモ!ノココ!小さくなって!」
私たちが漁村への道中で止まっていると、そこから少し離れたところにランシュが舞い降り、乗っていたテイルとクロムが降りてきた。テイルはランシュを小さくし、私たちの元へ歩いてくる。
「おにーちゃん!」
「ミカンちゃん、レイアさん、久しぶり」
「テイルさん、お久しぶりです」
「今日もギルドマスターに用事?」
「そんなとこ」
そう言って、テイルはミカンの頭を撫でる。私たちは漁村に行くのをやめ、ギルドに向かう。ミカンはタマを始め、私やテイルの仲間に囲まれて楽しそうに私たちの前を歩く。
「レイアさん、その抱えているのはツチノコ…?」
「はい」
「またすごいのを仲間に…」
「ここのギルドマスターにも言われました」
「でしょうね。ところで、ミカンちゃんのことは聞いた?」
「カルナさんに教えてもらいました」
「僕もミカンちゃんのことは気にかけてるんだけど、いかんせん忙しくてね。今日もすぐ帰るんだ。あ、それから…」
ギルドに到着し、私たち全員でギルドマスターの部屋に向かう。
「さすがに狭いな…」
ギルドマスターの部屋にはビーストテイマーが勢揃い。それぞれの仲間もいるため、部屋の中はさらに狭く感じる。テイルの話は世間話程度で、私とミカンはソファに座って待っていた。話し合いが終わり、カルナも一緒にミカンの家に向かう。家に着くとテイルはたくさんの食べ物やお菓子を取り出し、カルナはそれを鞄にしまっていく。その様子を、ミカンは目を輝かせて眺めていた。
「おにーちゃん!ありがとう!」
「これぐらいしかできなくてごめんね」
「いつもありがとうございます」
「おかーさん、お腹空いたー」
「そうですね、テイルさんも一緒にどうぞ」
昼食後、カルナはギルドに戻り、ミカンはランシュとクロムを撫でながらテイルの話を聞く。その後、テイルの帰る時間がやってきた。私たちは東門から外に出て、テイルを見送る。
「また来てね!」
テイルたちが飛び去った後はミカンの家に戻る。
「テイルさんはよく来るの?」
「たまに来るよ!ギルドマスターの弟子?なんだって!それにおにーちゃんの持ってくるものはすごくおいしいんだよ!」
私たちはミカンの家に戻り、ミカンはみんなを撫でて回る。
「今日はお昼寝しなくていいの?」
「魔法使ってないから大丈夫!」
カルナが帰ってくるまでミカンと話をしたり、パーラの料理を私とミカンで手伝って過ごした。
「そうじゃなくてこうだよ?」
「難しい…」
「ぱかぱか」
「なんて言ってるの?」
「『私よりミカンちゃんの方が手際がいいわ』って…」
「えへへ」
魚のさばき方において、私はミカンの足元にも及ばなかった。その後、私たちはミカンの家に住み、カルナやミカンと一緒に生活をした。気づけばミカンは私のことを「おねーちゃん」と呼ぶようになり、私もそれを受け入れていた。私が湖畔都市リシューに来てから一週間が経った日の朝。
「おはよぉ…」
「ピー…」
「コン」
「ぱかぱか」
「キー」
「キュイ」
「あれぇ…?」
私はみんなの言葉がわからなくなってしまった。
「ピーちゃん」
「ピー…?」
「『ピー』じゃなくて…、タマモは…」
「コン?」
「あ…、ハドックは外だから…」
私は庭に出て、ハドックに話しかける。
「ハドック、おはよう!」
「……」
「なんで…」
私が庭で泣き始めると、みんなが心配そうに周りに集まる。庭で泣き崩れていると、カルナが二階から降りてきた。
「レイアさん、おは…。レイアさん?」
「カルナさん…」
「そんなところで服も着替えずどうしたんですか?」
「みんなの言葉がわかんなくなっちゃったぁ…」
その時、泣き崩れていた私にはよくわからなかったが、カルナは驚くのではなく、何かを思い出し、そして何かを決意したかのような表情をしていた。
「レイアさん、中に入って朝食にしましょう」
「でも…」
「大丈夫です、今回は私がついてますから」
カルナはそう言いながら、私の頭を優しく撫で、家の中に戻った。私は泣きべそをかきながら服を着替え、カルナとパーラは朝食の準備を始める。そしてカルナはミカンを起こし、ミカンはタマを抱えながら三人は降りてきた。
「おねーちゃん…、おはよぉ…」
「おはよう…」
「おねーちゃん…、元気ない…?」
「大丈夫…」
朝食後、ミカンとタマはギルドへ向かい、カルナが遅れることを伝えに行き、そのまま魔法の練習に向かうという。家に残った私とカルナはイスに座り、みんなは私の周りに集まる。
「ピー?」
「ピーちゃん、なんて言ってるの…?」
「レイアさん」
「なんですか…?」
「レイアさんの仲間で覚醒している方はいますか?」
「え…?」
私の疑問にカルナはゆっくりと答える。カルナと一緒に冒険した冒険者がビーストテイマーだったこと。そのビーストテイマーの仲間の一人が覚醒しており、人の姿になれたこと。そのビーストテイマーも仲間の声を失ったことがあり、覚醒した仲間が人の姿であれば会話が可能だったこと。
「親友からは覚醒のことを秘密にするように言われました。…。私も長く生きていますが、親友以外のビーストテイマーで仲間が覚醒している、人の姿になれるという話を聞いたことは…、ありません」
「…」
「レイアさんの仲間が覚醒していないのであれば今の話は忘れてください。でももし、覚醒している仲間がいるなら会話ができると思います」
その話を聞いていたノココはすぐさま人の姿になった。
「言ってることわかる?」
「ノココ…」
私は泣きながらノココの胸に顔をうずめると、ノココは私の頭を撫でる。そして、私に近寄ってきたタマモも姿を変えた。
「レイアさん」
「タマモ…」
私はタマモにも抱きつき、そのまま泣き続けた。
「レイアさん、ミカンには…」
「ミカンちゃんは知ってるので…」
「そうですか、わかりました。ではみなさん、レイアさんをお願いします。なるべく早く帰りますので」
「わかりました」
「任せてよ」
カルナは少し遅れてギルドに向かい、私は庭に出てみんなと話す。
「ハドックさんも納得したようです」
「うん…」
「ピー?」
「『大丈夫?』だって」
「うん、大丈夫、ごめんね…」
「ぱかぱか」
「『こっちは聞こえるのになんで?』と言っています」
「わかんない…」
「キー」
「『不便だが仕方ない』って」
「タマモとノココには迷惑かけちゃうけど、ごめんね…」
「キュイ」
「『ママはママ』と言っています」
「うん…」
私はリオンに抱きつき頭を撫でる。ミカンが帰ってきた時、人の姿になっているタマモとノココに驚いていたが、私が事情を話すと、ミカンは私の心配をする。
「おねーちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫…」
そして昼食。カルナは帰ってこなかったので私たちとミカン、タマで食事をする。昼食後、タマは何かを察したのかミカンを外へ連れ出し、私は庭でタマモとノココにみんなの言葉を伝えてもらった。そして日が落ち始めると、カルナ、ミカン、タマの三人が帰ってきた。
「ただいまー!」
「ワフ」
「ただいま」
「おかえりなさい…」
「レイアさん、明日の早朝、ここを出ます」
「え…?」
「鬼人国に行くの!」
夕食を取りながら、カルナが話を始める。
「鬼人国に行けばレイアさんの問題を解決できるかもしれません」
「問題…」
「レイアさん、私たちも一緒に行きますので心配いりません」
「冒険楽しみ!」
「ギルドは…?」
「ノーマンさんに無理を言って長期休みをもらいましたが、それでも早めに帰らなければなりません」
カルナは大切なことを話し始めた。明日の早朝、漁港からノーマンの仲間である首が長く四つのヒレを持つ「水竜」というモンスターが船を引っ張るという。「水竜船」と呼ばれる高速船を使用し、エルフ国にある漁港まで私たちを送る。それは以前ミカンに教えてもらったノーマン専用の大きな船のことだった。
ここからエルフ国までは高速船でも時間がかかり、早朝に出発しても到着する頃には夜になってしまう。本当であれば鬼人国の漁港まで送ってほしかったが、ノーマンとカルナという、ここのギルドにとって重要な二人の不在を少しでも短くするため、エルフ国までとなった。
「私はこれから近くの方にミカンと一緒に留守にすることを伝えてきます。ミカンは冒険に持っていきたいものをここへ」
「はーい!」
「レイアさんも準備があればお願いします」
「あの…、食料とかは…?」
「こちらで用意します」
カルナが出掛けた後、ミカンは私に尋ねる。
「おねーちゃん、冒険に持っていくものってなに?」
「えっと…」
──なんだっけ…?
私が思考を巡らせていると、パーラが鞄を取り出した。それは、私が冒険に出掛ける時に使っていた鞄。今はその鞄そっくりなパーラが私の鞄になっている。鞄の中には様々なものが入っていた。保存食、救急セット、ポーション。私はそれらを見て、冒険を始めた頃を思い出す。
──仲間が増えたなぁ。最初はピーちゃんと二人で、丸焦げ冒険者って言われてたっけ…。
私は鞄の中に入っていたものをパーラに収納してもらい、鞄をミカンに渡す。
「この鞄はね、私が冒険を始めた時に使ってて。少しボロボロだけど、ミカンちゃんにあげる」
「いいの!?」
「うん。大きいけど、調節すれば…」
調節しても鞄の大きさが変わるわけではなく、ミカンにとっては非常に大きな鞄になってしまった。それでも鞄をもらったことが嬉しいのか、背負った鞄をタマに見せびらかす。
「タマ、どう?」
「ワフ」
「えへへ、いいでしょー!」
帰ってきたカルナは大きな鞄を背負ったミカンに驚いていたが、私が理由を説明すると、笑顔でミカンを撫でた。
「お礼は言いましたか?」
「あ!おねーちゃん、ありがとう!」
「うん」
「ミカン、持っていくものはどこですか?」
「あ!」
「二階に行きますよ」
「はーい!」
「レイアさん、お風呂をお願いできますか?」
「わかりました」
二人が二階に行っている間、ピーちゃんとノココがお風呂を沸かす。翌日の早朝、カルナによって私たちは叩き起こされた。朝に強いみんなも完全に目が覚めているわけではなく、朝に弱い私には厳しいものだった。
「レイアさん、起きてください」
「ん…」
タマは元気そうだったが、ミカンはまだ夢の中。仕方なく、大きな鞄を背負ったミカンをカルナが背負う。カルナはギルド職員の装いから、上下は革製の鎧。手にも革製のグローブという全身革装備。金髪の長すぎるポニーテールがよく映え、早朝にも関わらず、水色の瞳は澄み渡っていた。
「行きますよ」
「ご飯は…?」
「食事は船の上で。最悪の場合、今日は食事なしかもしれません」
──ご飯…、なし…?
私たちは漁港に向かう。ピーちゃんは特等席で丸くなり、タマモとノココは小さな姿に戻り、私がノココを抱えるとノココは眠りだした。漁港に到着すると、ノーマンの仲間が巨大な水竜の姿で高速船と一緒に待っていた。
「ノーマンさん、おはようございます」
「こいつら大丈夫か?眠そうだが…」
「大丈夫でなくとも行かなければなりません」
「そうか。よし、乗ってくれ」
高速船に乗り込む。高速船は他の船と違い、水竜が引っ張ることを前提に作られており、輸送量も考慮され、非常に大きな船になっている。見たことのない形をしているのもこのため。
船は水竜の作り出した水魔法の太い紐のようなもので、水竜自身と繫がっている。水竜はゆっくりと動き出し、漁港を出発。漁港を出発すると水竜は少しずつ加速し、加速していく船の中で私たちは朝食を取る。
「もぐもぐ」
「もぐもぐ」
「カルナ、ミカンもレイアも意外と大丈夫そうだな」
「船酔いですか?」
「眠そうだったから心配したが、二人も仲間も元気に食ってるから大丈夫だろう」
「…あれがいるからだと思いますけどね」
カルナは小さく何かを呟いた。朝食後、船の一室から外に出て海を眺める。しかし、初めての船が最悪のタイミングだったのは間違いなかった。
「ピーちゃん、すごいね!」
「ピー!」
「あ…、そうだった…」
今はタマモもノココも藤狐とツチノコ。船を降りるまで、私はみんなの言葉がわからない状態が続くことになった。それでも初めての船は快適で、足元から伝わる不規則な揺れも心地良い。
──みんなと話したかったなぁ…。
夜になり、少しずつ船の速度が落ち始めた。エルフ国の漁港が見え始めたのだ。アクアハーバーのような大きな漁港でも、日が落ちると漁港で働く人の数は一段と少なくなる。しかし、今回は事前に連絡をしていたのか、漁港に明かりがついていた。
高速船はゆっくりと小さな漁港に到着し、私たちは船を降りた。船を降りるとこの漁港で働く人たちが出迎え、一人のエルフの男性がノーマンに話しかける。
「ノーマン、急な話だったがどうした?」
「野暮用でな。明日の早朝には帰る。数は少ないが色々持ってきたから運んでくれ」
漁港の人たちが船から箱を運び終えると、カルナがノーマンに感謝を伝える。
「ノーマンさん、ありがとうございました」
「事情は知らんが、まあ、なにかあるのはわかる。だができるだけ早く戻ってくれよ」
「そのつもりです」




