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5-4:ダンジョンの出現

 昼食後、私たちは同じ陣形で日が傾くまで歩き続けた。そして日が落ち始め、私は野宿をする場所を探す。


「えっと…、あの木がいいかな」

「木、ですか?」

「うん」

「そういえば、レイアさんは部屋のような魔法具をお持ちでしたね」

「あれを引っかけるために木が必要なんだよね」

「それは野宿と言っていいのでしょうか…?」

「いいんじゃない?」

「…私はどうなるのでしょうか?」

「アメリも一緒だよ?」


 私がそう言うとアメリの顔から不安が消え、笑顔となった。私はパーラにマジッククロスを取り出してもらい、ハドックに引っかけてもらう。


「ハドック、なにかあったら言ってね」

「ハドックさん、よろしくお願いいたします」

「……」

「『お任せください』って言ってる」


 私たちは中に入り、アメリを寝室に案内する。


「アメリは奥のベッドを使って」

「いつもはどのように使用しているのですか?」

「奥のベッドにピーちゃんとタマモが寝てて、こっちのベッドに私とリオン。でもみんなでぎゅうぎゅうで寝る時もあるから、特に決まってないかも」

「ぎゅうぎゅう…」

「ケリュスは小さいままここの床で寝るよ」


 寝床も決まり、私たちは夕食の支度を始めた。キッチンではパーラが鍋を取り出し、タマモが火を起こす。


「完全に部屋の中と変わりませんね」

「そうだね」

「なにかお手伝いできることがあれば…」

「アメリはダメだよ。護衛しなきゃいけないし、お姫様なんだから」

「ピー!」

「それはいいかもね」

「ピーちゃんはなんと?」

「『お風呂!』って言ったの」

「お湯でよければいくらでも…、あ!お水でしたね!」


 夕食は、改良された雑炊とリンゴ。見た目はあまり良くないが味は一級品、ということをアメリは知らない。夕食に期待していたであろうアメリの顔は、少しだけ曇っているように見える。


「アメリ、見た目は気にせず食べてみて」

「は、はい…」


 アメリはおそるおそる雑炊を口に運ぶ。雑炊を口に入れた瞬間、アメリは口元を手で押さえ、目を輝かせた。


「レイアさん、これは…」

「アクアハーバーにいる時に作ったパーラの新作」

「こんなにおいしいものがあるなんて…」

「ぱかぱか」

「本当は見た目にもこだわりたいみたい」

「この味だけでも十分通用すると思います」


 夕食後、私たちが片付けをしている間にアメリがお風呂に水を貯め、ピーちゃんが温める。お風呂が温まったところで、ピーちゃんを頭に乗せたアメリがキッチンに戻ってきた。


「先に入っていいよ」

「レイアさんは?」

「アメリのあとでタマモと入るよ」

「あの…、三人で入ることは…?」

「それでもいいよ」

「では三人で!」


──楽しそうだなぁ。


 私、タマモ、アメリの三人でお風呂に入る。その後、私とタマモの寝巻きを見た時、アメリは私たちに尋ねる。


「レイアさん」

「なに?」

「タマモさんの着ている服を見た時から気になったいたのですが…」

「私ですか?」

「そちらは福々堂のもので間違いありませんか?」

「はい」

「…」

「アメリ?」

「福々堂は特別な紹介が必要だと聞いたことが…」

「タマモ、私が紹介すればアメリも買えるかな?」

「よろしいのですか!?」

「レイアさんのお友達であれば大丈夫だと思います」

「ではいずれ!」

「鬼人国に行く時は私たちが護衛するから依頼してね」


 その後、福々堂の話をして過ごす。床に就く前、私は杖を持ち、ピーちゃんを頭に乗せ、外にいるハドックの元に向かった。


「ハドック、もう寝るね」

「かしこまりました」

「サーチアイ!」

「なにもいない!」

「おやすみなさいませ」

「おやすみ」

「おやすみ!」


 私たちは床に就く。アメリの眠るベッドではピーちゃんとタマモが眠り、私はいつも通りリオンと眠る。翌朝、私が起きると隣のベッドにはピーちゃんだけが丸くなっていた。


「あれぇ…」

「ママ、おはよー」

「みんなはぁ…?」

「ご飯作ってるよー」

「ごはん…」


 私は着替えてキッチンに向かう。


「レイアよ、まだ眠そうに見えるが」

「少しだけ…」


 キッチンではタマモ、パーラ、アメリが楽しそうに料理をしていた。


「おはよぉ…」

「おはようございます」

「ぱかぱか」

「レイアさん、おはようございます!」

「料理してるの?」

「はい、なにかできることがあればと」

「アメリはなにもしなくていいと思うけど…」

「いえ、色々とお世話になっていますので少しでもお返しできれば」


──依頼だから気にしなくていいんだけどなぁ。


 私はケリュスと外に出る。


「ハドック、おはよう」

「おはようございます」

「これからご飯食べるからもう少し待ってて」

「かしこまりました。ところでレイア様」

「なに?」

「少々厳しいかもしれませんが、アメリ殿の護衛依頼ということをお忘れなく」

「忘れてないよ?」

「ご理解いただけていないようにございます」

「ハドックよ、回りくどいのはやめよ」

「ハドック、ちゃんと言って。私のなにがダメだった?」

「レイアよ、昨夜は楽しかったか?」

「うん」

「食事や休憩時に楽しく話すのはよい。しかし、歩き始めたらしっかりと依頼をこなす必要がある。ハドックはそう言いたいのだ」

「楽しく話しながら進むのは構いません。しかし話に夢中になり、襲撃に対応できず、アメリ殿になにかあってからでは遅いのです。もちろん、わたくしがお二人を必ず守り抜くつもりでございます」

「しかしハドックよ、朝からする話ではないぞ」

「なにかあってからでは遅い。後悔するのはレイア様なのだ」

「ううん、二人ともありがとう、今言ってくれて。言われなかった夜の楽しい気持ちのまま進んでたかもしれない。ちゃんとわければいいんだよね?」

「はい」

「うむ」

「わかった、じゃあご飯食べてくるね」


 朝食後、私たちは同じ陣形で進む。時折アメリと話し、昼食や休憩時はたくさん話す。そしてマジッククロスの中では依頼を忘れ、楽しく過ごした。


──あやかさんの手紙にも慢心するなって書いてあった。護衛するのは友達のアメリだけど、これは依頼なんだ。アメリを無事に学園まで送り届ける!


 お城を出発してから十日後、食彩国との関所が見え始めた時、タマモは藤狐になる。


「タマモ、小さくなってもらっていい?」

「はい」


 タマモは返事をすると小さくなった。関所まで進み、ギルドカードを提示し、確認作業が終わる。一方、アメリは数人の門番に頭を下げられて困惑していた。そんなアメリもギルドカードに似たものを提示し、私たちは関所を抜ける。


「なんだったの?」

「関所は二つの国から人員を配置しています。私たちの国の門番の方々が挨拶に来られまして…」


──そんなこと言ってたような気がするなぁ。


 私たちは関所を抜け、そのまま歩みを進める。人気のない場所で昼食を取り、それに合わせてタマモは人の姿に。そして昼食中、アメリが話を始めた。


「他の国に入ったのは初めてです」

「ずっとお城?」

「レイアさんたちに初めて会った時に城を抜け出したのが初めての外出でした」

「そうなんだ」

「他の国にも行ってみたいです」

「鬼人国には絶対行こう!」

「はい!」


 関所を抜けてから三日、満腹都市マーゲンに入る。マーゲンにある匂いを閉じ込める膜にアメリは困惑している様子。


──リオンも初めてだけど全然気にしてないなぁ。


 しかし、余裕そうに見えたリオンも膜を越えた瞬間に声を上げた。


「キュイ!キュイ!」

「レイアさん!これはなんですか!?」

「満腹都市っていうだけはあるでしょ?」

「満腹都市マーゲンには注意しなさいと教えられましたが、よくわかりました…」

「ここの本気はこれからだよ?」


 ここまで約二週間。私たちは当初の予定通り、マーゲンで二泊する。


「どちらの宿屋に泊まるのですか?」

「私たちが泊まれる宿屋は一つしかないんだよね」


 私は以前泊まった宿屋に向かった。大きな扉をハドックに開けてもらい、中に入る。


「いらっしゃい、久しぶりね」

「お久しぶりです!」

「仲間も増えたみたいだけど、そっちの子は?」

「えっと…、一緒に冒険中の友達なんですけど、泊まっても大丈夫ですか?」

「あなたが一緒なら大丈夫かな。部屋は一緒でいいの?」

「一緒で。あと、明日も泊まりたいんですけど」

「いいわよ、じゃあついてきて」


 私たちが案内されたのは、前回と同じ広い部屋。普通サイズのベッドが二つにソファが一つ。今はクッション類が無いのでやはり殺風景。


「あとでクッション持ってくるからね」

「ありがとうございます」


 女性はそう言い残し、部屋を去った。女性がいなくなった後、アメリは部屋の感想を述べる。


「殺風景なように見えるのですが…」

「クッションがあると変わるよ」

「クッションで変わるのですか?」


 少し待っていると、部屋の扉がノックされ、女性が大量のクッションや小さなベッドを運んできた。みんなはそれぞれクッションやベッドを選び、部屋に配置し、寝床を作る。その様子をアメリは不思議そうに眺めていた。


「こうなるのですね」

「面白いでしょ」


 そして、アメリと今後の予定を話し合う。


「今日と明日はここに泊まるけど、したいことある?」

「その…、お腹が…」

「痛いの?」

「お腹が空きました…」

「じゃあご飯にしよっか」

「はい!それと、手紙を出したいのですが…」

「どこに出すの?」

「お城に」

「お城ってディメンジョンレターあるの?」

「あります」


 私たちは冒険者ギルドに向かう。マーゲンの中では陣形を組まず、アメリの頭にピーちゃんを乗せて警戒にあたる。私はアメリの隣を歩き、アメリの足元にはタマモ。後方はハドック、ケリュス、リオンが守るような形。陣形を完全に組まないことをハドックが許さなかったので、このような形になった。


 ギルドに入ると私たちは注目を浴びる。


「あの…、見られているような…」

「アメリを見てるんじゃなくて多分私たち。いつもこうだから気にしないで」


 受付に行ってレターセットを買い、ディメンジョンレターの近くにある机にアメリを座らせ、私たちは周囲を警戒。


──ギルドの中で問題を起こす冒険者は私ぐらいかなぁ…。でもアメリになにかあったら嫌だからしっかりしないと!


 アメリがピーちゃんを頭に乗せたまま手紙を書いていると、ギルド職員が私たちに近付いてくる。


「レイアさん、ギルドマスターがお呼びです」

「行かないとダメですか?」

「『お連れの方がいれば一緒に』と言っていました」


 アメリは手紙を出し、私たちはギルドマスターの部屋に向かう。扉をノックすると、テイルの声で入室を許可された。


「レイアさん、久しぶり。座ってください。アメリ様もどうぞ」

「私のことをどちらで?」

「お父様とキュラスさんから手紙が届きました。王族の護衛ですからね、ギルドとしても気合が入っているんですよ」

「そうでしたか」

「護衛をする冒険者がレイアさんでなければなんの心配もなかったんですけどね」

「私が問題を起こすからですか…?」

「初護衛が王族なんて前代未聞だし、それだけで大問題。アメリ様はなぜレイアさんを指名されたのですか?」

「それは上級冒険者のリストの中にレイアさんの名前があったので」

「え?」

「レイアさんは一年ほどで上級冒険者になられたので、強さに関しては問題ないと思いました。あとは会ってお話できればと…」

「すでにお友達だったと?」

「はい」

「納得しました。ところでレイアさん」

「なんですか?」

「どうやってグリフォンを仲間に?」

「タマゴを拾いました」

「…は?」


 テイルは「わけがわからない」というような顔をしている。そして思考を巡らせた結果、テイルは考えることを放棄した。


「レイアさんならそういうこともあるかな。さて、本題に入りますか」


 テイルの表情は、おちゃらけた笑顔から真剣なものに変わった。


「ここまでの道中、なにか変わったことは?」

「なにもなかったと思います」

「私は初めての経験ばかりでしたので…」

「ダンジョンらしきものを見かけたことは?」

「ありません」

「本来であればアメリ様にお話するようなことではないのですが、これから魔法国に向かうお二人には話しておいた方がいいでしょう」


 テイルはそう言うと、最近起こり始めたことを話す。


「ここ最近、正確にいつ頃からというのは難しいのですが、ダンジョンの出現報告が増え始めています」


──ダンジョン?


「ダンジョンの出現は、魔法国を中心に報告されています。そしてそのダンジョンは通常よりやや強いモンスターが出現します」


──強いモンスターかぁ。


「ダンジョンについては、冒険者が発見次第攻略をしているようですが、コアまで破壊することのできないダンジョンがいくつかあります」

「コアが破壊できなかったダンジョンはどうするんですか?」

「ロマリスさんが時間を見つけて攻略しているそうです」


──大変そうだなぁ。


「レイアさんたちであればなにも心配していませんが、初護衛ということで念のため覚えておいてください」


 私たちはギルドを後にして昼食を探す。昼食を買いながら、アメリは私にダンジョンの話について尋ねる。


「レイアさん、先ほどのお話を詳しく教えていただけませんか?」

「ダンジョンのこと?」

「はい」

「えっと…」


 私は知っている限りでダンジョンの話をしつつ、買い物を続けた。買い物をしていると、数多の匂いの中から一つの匂いにタマモが反応する。


「コン!!」

「タマモさん?」

「気になる匂いがあるんだって」

「行ってみましょう」


 匂いを辿って着いたのは、茶色い食べ物がずらりと並ぶお店。匂いは甘いが、やや酸っぱさも感じる。タマモは私たちの足元で上を見上げていた。


「見たい?」

「コン!」


 私はタマモを片腕に抱き、茶色い食べ物を見せる。するとタマモの目は輝き、わずかに興奮している様子。


「コン!」


 タマモのために茶色い食べ物をたくさん買い、パーラに収納してもらう。


「『甘揚げにぎり』という名前のようですね」

「初めて見た」

「ここでは毎日のように新しい食べ物が生み出されていると聞いています」

「前に来た時はなかったから新しいんだと思う」


 私たちは昼食を取るため、宿屋に戻る。


「おかえり、お昼食べた?」

「買ってきました」

「夜はどうする?」

「アメリ、夜はどうする?」

「どうするというのは?」

「普通の宿屋は、朝はご飯出してくれるけど夜は出してくれないんだよね。でもここはお金を払えばご飯を出してくれるんだよ」

「ではここでいただきます」

「じゃあ用意するけど、そのグリフォンはなんでも食べる?」

「食べます」

「あ、お昼食べるなら食堂使ってもいいわよ」

「ありがとうございます!」


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