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4-13:驚く人たち

 鬼福の里を出発してから五日。私たちは関所を抜け、エルフ国ダフネに入る。エルフ国に入っても景色が変わるわけではなく、街道の左手には「入るな」と忠告された森が続いていた。関所に行くまでの道中でケリュスの角が落ち、現在、三本の光る角をパーラは収納している。


「そういえば、ノエルさんとステラさんはエルフ国にいるのかな?」

「私がレイアさんたちを待っている間に会いました」

「そうなの?」

「この姿も知っています」

「え?」

「ホムラさんが大丈夫と言っていたので」


──ホムラさんがそう言うなら大丈夫なのかなぁ?


 関所を抜けてから三日。私たちは翠樹都市シルバンに到着。北門から都市の中に入ると、都市の中では多くの人が行き交い、活発で忙しない雰囲気。その忙しない雰囲気はどこかメイカルトを彷彿とさせる。都市で働くほとんどはエルフ族だが、大人から子供まで幅広い。


──あ、子供に見えても大人なエルフ族もいるから気をつけなきゃ…。


「まずはギルドに行こう!」


 私たちはギルドに向かう。ここでも変わらず私たちは注目の的。忙しなく動く人々は、私たちを見て足を止める。


──まあ…、こうなるよね…。


 ギルドに到着し、中に入る。ギルドの中はどこも同じような雰囲気に私は安心した。そして、受付にいるエルフ族の女性に話しかけようとすると、向こうから声をかけてきた。


「あの…」

「B級冒険者のレイアさんですよね?」

「え、あ、はい」

「お待ちしておりました、どうぞ奥へ」


 私たちはいつものようにギルドマスターの部屋に通された。部屋に入ると、エルフ族の男性が仕事をしていた。金色のやや長めの髪に赤い瞳。そしてギルドマスターの服を着ている。


「こんにちは、ギルドマスターの『ディット』です」

「レイアです」

「噂のビーストテイマーさんに会えるのを楽しみにしていました」

「どんな噂ですか…?」


 私が恐る恐る尋ねると、ディットは少し考えた後、明確には答えなかった。


「色々ありますが…」


──色々あるのかぁ…。


「それより、レイアさんに少しお願いがあると言いますか…」

「エースにはなりません」

「それはそれで残念ですが、そうではなく…、その…、実は…」


 ディットが何かを言いかけた時、部屋の扉がノックされた。ディットが入室を許可すると、入ってきたのはノエルとステラ。


「ノエルさん!ステラさん!」

「レイアじゃないか」

「お久しぶりですね」


 ノエルとステラは依頼の報告に来たようだった。


「例の依頼は全部終わった」

「ミーティアに伝えてもらえますか?」

「わかりました。それで、その、族長からレイアさんを少し足止めしておくように言われているのですが…」

「それはダメだ」

「レイアさんは私たちで…」

「私たちでどうするのかな?」


 部屋の扉が開くと同時にそう言い放ったのはミーティアだった。


「随分早いな」

「頑張って走っちゃった」

「あなたという人は…」

「私のことより、レイアちゃんがここに来た理由はなにかな?」

「えっと…」


 私がギルドに来た理由を話す。赤トロールの角をはじめとした、ダンジョンモンスターの角を売るためだった。


「ダンジョンモンスターの角を売りに」

「レイアさんがお持ちの角を見せてもらっても?」

「はい」

「ディット、応接室を借りるぞ」

「どうぞ」

「ミーティア、行きますよ」

「はーい…」

「レイア、終わったら応接室まで来てくれ」

「わかりました」


 ノエルとステラはミーティアを連れて退室し、私はパーラに角を取り出してもらう。


「これは半分に切断されていますが?」

「鬼人国で半分だけ売りました。他の角も半分だけです」

「これは全て買い取りということで?」

「はい、お願いします」

「わかりました。では明日までに報酬を用意しておきますので、また明日来てもらってもいいですか?」

「わかりました」


 私たちはギルドマスターの部屋を後にし、応接室に向かう。扉をノックするとステラが扉を開けた。


「話は終わりましたか?」

「はい」

「では行きましょう」

「どこに行くんですか?」

「私のお家でーす」


 応接室のソファに座っているミーティアが腕を振りながら嬉しそうに言った。鬼福の里と違い、エルフ族の族長の家は都市の中にあるらしい。族長の家は都市の西側。ギルドは北側にあるので、中心部を通ってから西側に向かう。


 ノエルとステラは私たちの前を歩き、ミーティアは私の隣を歩く。頭上のピーちゃんはミーティアに見つめられ、楽しそうに微笑み返している。


 中心部まで来ると、そこには大きなお皿、緋炎の祭壇があった。炎の灯っていない祭壇を横目に、私たちは西側に進む。


 ミーティアの家は西門から近い位置に道を挟んで二つある。一つは族長としての仕事をする家。もう一つは生活をする大きな家。私たちが向かったのは後者。ミーティアの後に続いて中に入ると、広めの玄関が私たちを出迎える。


「大きいお家ですね」

「かえでちゃんの屋敷の方がもっと大きいよ?」

「あそこは広すぎだ」

「仕方ありません、鬼人族の方々が集まる場所でもありますので」

「ここにはノエルちゃんとステラちゃんも住んでるもんね」

「宿屋に泊まるより気楽だからな」


 私たちは玄関から入って右手の大きな扉の部屋に案内された。その部屋は福々堂で使っていた寝室ほどの広さがあり、福々堂の寝室にあったベッドと同じ大きさのものが一つ。八人掛けのテーブルとイス。大きめのソファが低いテーブルを挟んで二つ。そして、大小様々なクッションが部屋の隅に積み重なっている。


──この部屋も広いなぁ。


「レイアちゃんたちにはここを使ってほしいんだけどいい?」

「え!?」

「福々堂より狭いけど我慢してね」

「狭いって…、宿屋より全然広いんですけど…」

「レイア、使ってやれ」

「ミーティアもこう言ってますから」


 私たちとノエル、ステラは部屋に残り、ミーティアは退室。私はイスに腰掛け、みんなは部屋の中をキョロキョロしながら思い思いの場所に腰を落ち着ける。ノエルとステラはテーブルを挟んだ私の正面に座った。私は二人が座るのを見届けると、感謝を述べた。


「タマモの時はありがとうございました」

「気にしなくていい」

「地竜の肉も渡しましたよ」

「それより、ギルドでは聞かなかったがそのグリフォンはどうした?」

「仲間になりました」

「キュイ!」

「咆哮山の山頂あたりにいるはずですが、レイアさんは登ったのですか?」

「登ってません。タマゴから孵りました」

「タマゴ!?」

「タマゴ!?」


 二人は同じように驚き、互いの顔を見る。その後、魔法国で別れた後の話を私は始めた。


「不思議なドラゴンがいるんだな」

「長く生きていますが、そのようなドラゴンは見たことがありませんね」


──やっぱり私たちにしか見えないのかなぁ?


「ところで、タマモさんはずっとその姿ですか?」

「道中は人の姿です」

「この家の中でも人の姿でいいぞ」

「でもミーティアさんが…」

「ミーティアも一緒だったのでもう知っていますよ」

「タマモ、どうする?」


 私がタマモに問いかけると、タマモは人の姿になった。


「ふふ、相変わらず惚れ惚れする美しさですね」

「そうだな」

「あ、ありがとうございます…」


 タマモは二人に褒められると、照れながら感謝を述べた。タマモがイスに腰掛けた時、部屋の扉が開き、ミーティアが様々な物を浮かせて入ってきた。


「あー!タマモちゃん、そっちになったんだ!」

「は、はい…」

「うんうん。小さいタマモちゃんは可愛いけど、こっちも可愛いよね」


 ミーティアはそう言いながら、浮かせているカップやお菓子を配っていく。


「君はこっちね」


 ケリュスの前にはフルーツを置いた。


「じゃあお茶にしよう!」


──紅茶だけど種類はよくわかんないなぁ。


 全員が一息ついたところでミーティアが口を開く。


「レイアちゃんは明日には出発しちゃうんでしょ?」

「そのつもりです」

「なにか用があるのか?」


 私はハンナが妊娠していることと、出産が近いことを三人に話す。


「そうか、それなら引き留められないな」

「仕方ありません」

「ほんとに残念だよね…」

「私が急いでることは誰から聞いたんですか?」

「ホムちゃんたち」


 ミーティアはかえでのところから福々堂に戻り、急いでここまで戻ったそうだ。


「ちょっと疲れちゃったけど、レイアちゃんとお話したかったし」

「ミーティアさんが興味あるのはピーちゃんですよね?」

「そ、そ、そ、そんなことないよ?B級に上がったビーストテイマーさんに興味ないなんてありえないよ?」

「B級?」

「レイアさんはB級になったのですか?」


 ミーティアの発言にノエルとステラが食いついた。


──あ、言ってなかった。


「パーラ、ギルドカード出して」


 私はパーラにギルドカードを出してもらい、テーブルの上に置く。B級と書かれたギルドカードを見たノエルとステラは、笑顔で私を祝福した。


「レイア、おめでとう」

「レイアさん、おめでとうございます。タマモさんもいますから大丈夫ですね」

「はい!」

「よーし、今日はお祝いだー!」

「ピー!」

「お?ピーちゃんはよくわかってるねー」

「ピー!」


──わかってるのかなぁ?


 ミーティアは、人の姿のタマモ、パーラ、そしてピーちゃんを連れて買い物に出掛け、私たちは部屋に残る。


「ミーティアさん、三人をよろしくお願いします」

「う、うん。ま、任せてよ。これでも族長なんだから!」


 しかし、ミーティアは自らの頭上に鎮座するピーちゃんに、かなり緊張している様子だった。


「レ、レイアちゃんはいつも頭の上に乗せてるけど、これ、かなり大ごとなんだけど…」

「ピーちゃん、頭の上は嫌だって」

「違う違う違う!そうじゃなくて!このままでいいから!」

「ピー!」

「そこがいいそうですよ」


 ミーティアはピーちゃんに気に入られ、一粒の涙を流す。


「うう…、やっと、やっとなんだね…」

「ミーティア、早く行け」

「みなさん、ミーティアをよろしくお願いします」


 四人が買い物に出掛けた後、二人は魔法国で別れた後のことを話し始めた。


「テイルの依頼はすぐに終わった」

「レイアさんたちを追いかける必要がありましたからね」

「すみません…」

「問題はそのあとだ」

「レイアさんたちより先に鬼人国に着いたのでそのまま待っている予定でしたが、ミーティアが私たちに依頼をしたのです」

「どんな依頼ですか?」

「ダンジョン攻略と…」

「ノエル」

「あ、ああ…。だが…」

「あれはあの子自身が乗り越えなければ意味がありません」

「…。レイア、山の向こうに大きな湖があるのを知ってるか?」


 ノエルが少し考えた後でそう言い放つと、ステラは呆れた顔をしていた。


「話だけは聞いたことがあります」

「そこにはレイアより小さなビーストテイマーがいる」

「冒険者なんですか?」

「まだ冒険者ではありませんが冒険者を目指しているそうです」

「時間があれば会いに行くといい」

「絶対行きます!」

「はぁ…」


 ステラは私の答えに小さく溜息をついたように見えた。


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