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4-12:ギルドマスターあやか

 私はふうかからの依頼の報酬を受け取り、ギルドを後にする。私が二人に会いたいと言うと、ふうかが族長に連絡を取ってくれることになった。


「お店に戻ろっか」

「うん!」


 私たちがお店に戻ると、ホムラが私と同じぐらいの背丈の少女と話をしていた。私がタマモと入った小部屋の扉が二つ閉まっていたので、仕事をしているらしい。


──お客さんがいるんだ。


 私たちがお店の中に入ると少女が振り向き、驚いたかと思えば頬が緩み、花が咲いたかのような笑みで私たちを見つめている。


「レイア、おかえり」

「レイアさん、おかえりなさい」

「おかえりなさいませ」

「ホムラさん、この女の子は?」

「女の子?『かえで』がかい?」


 ホムラはそう言いながら笑いをこらえ、少女は笑いをこらえているホムラを、訝しげに見つめていた。


「まさかホムラさんに笑われるなんて思ってもいませんでした」

「いやはやすまないね。詳しい話は奥…、だと狭いかね。レイアの部屋にしよう」


 寝泊まりしている部屋に全員で向かう。そして部屋に入り、私はいつもの長机の中央のイスに座る。ピーちゃんは変わらず特等席、ハドックは私の後ろに立ち、お店で働いていたタマモはパーラやホムラと一緒にキッチンに向かう。


 ケリュスは元の大きさに戻ってハドックの隣に横たわり、リオンは私の隣に座る。私たちの行動を一通り眺めていた少女は、長机を挟んだ私の正面のイスに笑顔で腰掛けた。


「ちょっと店まで行ってくるよ」


 そう言ってホムラは退室。少女は私たちを見続け、笑顔を絶やさない。少女はルルよりもやや短い黒のボブカットに、ホムラたちの着ている「着物」という服をきっちりとまとっている。着物は黒く、白い大きな帯がよく映える。そして、頭の右側にはピーちゃんの羽を思わせる、緋色の羽根のような髪飾りを付けている。


「レイアさん、あやかとたいちが大変お世話になりました」

「二人を知ってるんですか?」

「ええ、もちろんです。私は…」


 少女が何かを言いかけた時、部屋の扉がノックされたのでタマモが扉を開ける。すると、ルルが中に入ってきた。


「ホムラに言われて連れてきたよー」


 ルルが連れてきたのはあやかとたいちだった。


「レイアさん!?」

「レイアちゃん!?」

「あやかさん!たいちさん!」


──会えちゃった。元気そうでよかった。あ、あとでふうかさんに会えたって伝えなきゃ。


 あやかとたいちは少女の隣に座り、ルルはタマモとパーラを手伝う。そして、あやかは怪訝な様子で私に尋ねた。


「レイアさんはなぜこちらに?」

「ここで寝泊まりしてるので」

「ここで…?」

「はい」

「レイアさんは福々堂とどのような…」

「あやか、質問はそのあたりで。レイアさんにも色々とありますので」

「族長はなにか知っているのですか?」


──族長!?


 私が驚いていると、少女が自己紹介を始めた。


「それについてはまた日を改めて。それより、レイアさんへの自己紹介がまだでしたね。私は鬼人族族長のかえでと申します」

「レ、レイアです」


──族長にしては小さすぎると思うんだけど…。角もないから女の子そのものだし…。


 思考を巡らせていると扉がノックされた。入ってきたのはホムラたち。タマモとルルが私たちにお茶を、ホムラとサクヤはお菓子を配る。お茶は紅茶ではなく鬼人国のお茶でお菓子も鬼人国のお菓子。フォルスはお菓子とフルーツをケリュスとリオンのために用意している。


 ホムラたちもそれぞれ席に着き、タマモは私の隣に座る。あやかたちとホムラたちが服の話を始めたので、私は聞くことに徹した。話の内容はあやかとたいちの結婚式用の衣装について。二人が今日ここに来たのは採寸のため。私は幸せそうな二人の様子を微笑ましく眺めていた。


 話し合いが終わり、三人はお店を後にした。あやかとたいちはかえでと一緒に里を回るという。あやかたちを見送り、私たちが部屋まで戻るとホムラが口を開く。


「さて、レイアの衣装合わせをしようかね。タマモ、レイアを寝室に連れていきな。私たちは衣装を取ってくるよ」

「わかりました」


 私はタマモとパーラと一緒に寝室に行き、事前に服を脱いでおく。


──魔法で剥ぎ取られるよりはいいかなぁ…。


 そして、私の衣装合わせが始まった。ホムラたちが持ってきた服は二つ。一つはホムラたちの着ている着物という服。ピーちゃんの首周りと同じ緋色に染まり、帯は私の着ているケープと同じ緑色。帯紐は私の髪と同じ銀。ホムラからもらった寝巻きが、よりしっかりとした作りになった服。当然、着心地は良い。


「きつくないかい?」

「きついです…」

「初めてだから仕方ないですよぉ」

「寝巻きは使わなかったの?」

「あれとは別物なんですけど…」


 私が着物を着ると、ホムラは上から下まで着物の確認を始めた。


「こんなもんかい?」

「こんなものですよぉ」

「こんなもんでしょ」


 寝室から出る。寝室から出てきた私をみんなが見ると、驚いた顔をしている。


「どう?」

「レイア、きれい!」

「これは…、姫と呼ぶに相応しいかと」

「うむ、よいな」

「ママ、かっこいい!」

「あ、ありがとう」


 みんなの反応に私は少し照れながら感謝を述べる。みんなの反応を確認したホムラは、次の衣装合わせの準備に入る。次に着たものは寝巻きに似て、着物よりも薄い「浴衣」という衣装。全身は水色に染まり、帯と帯紐は着物の時と別物だが、色はそれぞれ緑と銀。


「こんなもんかね」

「そうですねぇ」

「レイア、こっちは帯紐なしでも大丈夫だから気分でよろしくね」


 これもみんなに見せると褒めてくれたが、リオンだけは違った。


「ママ、お腹空いたー」

「もうそんな時間なんだ」

「そろそろお昼にしようかね」


 私は寝室に戻って服を着替える。私の着替えはタマモとパーラ、ルルが手伝い、ホムラたちは昼食の準備を始めている。二つの衣装は手直しするところもないようで、パーラがそのまま収納した。


 寝室を出ると昼食の準備がほぼ整っており、ピーちゃんとリオンはいつものように昼食と対峙していた。昼食後、私はホムラたちに感謝を述べる。


「素敵な服をありがとうございました」

「まだあるよ」

「ケープが残ってる」

「仕上げが残ってますからぁ」

「仕上げはタマモの仕事だから」

「頑張ります!」


 私たちはお店を後にし、ギルドに向かう。タマモはケープを仕上げるためにお店に残った。ギルドに入り、受付にいるむさしに「ふうかに会いたい」と伝えると、ギルドマスターの部屋に案内された。


「レイアさん、なにかありましたか?」

「あやかさんとたいちさんに会いたいっていうお願いのことなんですけど…」

「その話はあやかから聞きました。会えたようですね」

「はい、ありがとうございました」

「いえ、私はなにも。わざわざそれを伝えに?」

「はい」

「律儀ですね」

「そうですか?」

「…あやかの教育がよかったのかもしれませんね」


 ふうかが何かを呟いたように思えたが、私には聞こえなかった。私たちはギルドを後にし、里の中を見て回る。


──前に来た時は全然見れなかったからなぁ。


 他の都市同様、宿屋や食料など一通りのものは売っている。里の中心部に位置するひときわ大きな建物では薬を売っていた。しかし、売っている薬はポーションではなく粉薬や丸薬、塗り薬。ポーションのように液体のものもあるが、別物に見える。


──ここにもこれがあるんだ。


 里の中心部には、アメリの城や魔導都市アルカディアにあった祭壇があった。アルカディアのように炎は灯っておらず、大きなお皿のように見える。


 その後、里をぐるっと一周し、私たちはお店に戻った。お店の前まで戻ると、そこにはエルフの女性がいた。エルフの女性は福々堂の扉を開け、そのまま中に入っていく。


──お客さんかなぁ?


 私たちもそれに続いて中に入っていった。


「帰ってきたか…」


 ホムラは何か大きな問題が起きたかのような表情で、そう呟いた。するとエルフの女性は振り返り、私たち、特にピーちゃんを見て少し興奮気味にホムラに問いかける。


「ホムちゃん!もしかして!」

「はぁ…、お察しの通りだよ」


 エルフの女性は目を輝かせながら、特等席に鎮座するピーちゃんを見つめている。他のみんなが視界に入っていないのか驚くこともなく、ピーちゃんにだけ視線を注ぐ。


「とりあえず、レイアの部屋にいこうかね…」


──ホムラさん元気ないけどどうしたのかなぁ?それにホムちゃんって言ってたけど?


 私たちは部屋に入り、定位置につく。私の正面にはエルフの女性が座り、その隣にはホムラ。


「私はエルフ族の族長で『ミーティア』っていうの。よろしくね」

「レイアです」


 ミーティアと名乗るエルフの女性は、紺碧色の長髪と瞳に白い肌。ゆったりとした白のワンショルダードレスに茶色のブーツを履いている。


「ミーティア、今日はどうしたんだい?」

「かえでちゃんに呼ばれてきたんだけど、どこにいるか知らない?」

「里の中を回ってるはずだけどね」

「ふーん、まあいいや。それより、レイアちゃん」

「なんですか?」

「頭に乗せてる、その、あの…」

「ミーティア、それはいつも言ってるだろ?」

「でも今回はくれるかもしれないじゃん」

「だからそれは…」


 ホムラが何かを言いかけた時、部屋の扉がノックされた。ホムラが扉を開けると、ルルが立っていた。


「ミーティア、外でかえでが待ってるよ」

「はーい…。レイアちゃん、またね」


 ミーティアはルルに連れられて退室していった。


「はぁ…」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ」

「あの人、ミーティアさんはピーちゃんに用があったんですか?」

「たいしたことじゃないから気にしなくていい」


 ホムラは何かをはぐらかすかのように言った。ホムラも退室し、私たちは夕食まで部屋でくつろぐ。部屋でくつろいでいると、パーラが包丁の手入れをすると言ったので、私が一本、パーラが二本研いだ。


 翌日、タマモは今日も仕上げ作業があるとのこと。


「レイアも裁縫やる?」


 ルルが朝食後にそう言い、今日一日、パーラと一緒に裁縫を行うことになった。


「レイア、そこはそうじゃなくてこうよ」

「難しい…。いたっ!」

「ピーちゃん、またよ」

「大丈夫?」

「うん…」


 朝食後に裁縫を教えてくれたのはサクヤ。しかし箸同様、パーラは裁縫を短時間で覚え、私に教える立場となった。サクヤからもらった練習用の布切れは、私の血で水玉模様ができていた。私が自分の指を針で刺す度にピーちゃんが治す。


 夕食後、ホムラがかえでからの伝言を私に伝える。


「レイア、さっきかえでと、まあミーティアもいたんだけど、それはどうでもいいね。明日の朝、仲間と一緒にギルドまで来てほしいって言われてね」

「わかりました」

「タマモ、あとどれくらいだい?」

「あと少しです」


 夕食後、タマモは仕上げの残りを終わらせ、戻ってきたところでみんなで床に就いた。翌日、朝食後にタマモが仕上げていた最後の服を羽織る。着物のように大がかりな服ではなく、私が着ているケープと同じもの。色も私が着ているものと同じく緑だが、質が圧倒的に違う。


「いい出来だね」

「ありがとうございます」


 ケープの仕上がりを見たホムラがタマモを褒める。


「レイアの服はそれで全部だ」

「大切にします」

「大切にしなくていい、なるべく着てくれ」

「着てくれた方が服も喜びますからぁ」

「タマモには魔法での洗い方を教えてあるから」

「じゃあせっかくなので…」


 私は薄い方の着物である浴衣に着替え、新しいケープを羽織ってギルドに向かう。この服にショートブーツは似合わないとのことで、ホムラたちが履いている草履を借りた。私たちはギルドに入り、受付にいるむさしのところに向かう。今回はタマモも小さな姿だが一緒だ。


「むさしさん、ギルドマスターに呼ばれたんですけど」

「それは知ってるが…、その格好は…」

「変ですか?」

「いや、似合ってると思うが…。まあいい、行くぞ」


 むさしに続いてギルドマスターの部屋に入ると、そこにはふうかだけではなく、あやかとたいち、かえでにミーティアもいた。


──いっぱいいるなぁ。


 私たちが部屋に入ると、むさしが扉を閉めた。そして、なぜかギルドマスターの服を着て、ギルドマスターの使用する机にいるあやかの元へ進むように促された。


「レイアさん、その衣装は…?」

「あやかさんもどうしたんですか?」

「これは、その…」

「あやか、服のことは忘れましょう。今はやるべきことがあります」

「そうそう、私もレイアちゃんとお話したいし」

「ミーティアさんはダメですよ。このまま私たちと北の港町まで来てもらいますので」

「はーい…」


 かえでとミーティアの話が終わると、あやかは改めて口を開く。


「レイアさん、こちらを」

「これは…」


 あやかが机の上に置いたのは「B級」と書かれたギルドカード。私が呼ばれた理由は、タマモがいないことを理由に白紙となった昇級の話だった。


「レイアさん、前回の昇級が白紙になった理由はお聞きいたしません。ですが、ギルドとしてもレイアさんはすでにD級の強さではございません。それがたとえレイアさん自身の強さでなくとも」

「はい…」

「そしてこれは、私の最初で最後のギルドマスターとしての仕事になります」

「最初で最後…」


──だからギルドマスターの服を着てるんだ…。


「レイアさん、今回は昇級していただけますか?」


 私が足元のタマモを見ると、金色の瞳で私を見つめていた。


──タマモにはあとで話したけど、テイルさんと一緒に飛んでいったからその場にいなかった。でも今はタマモもいるし、みんなもいる。多分大丈夫。ダメそうならみんなに助けてもらう!


 足元のタマモに向かって頷いてからあやかに視線を戻し、承諾した。


「はい!」


 私が承諾すると、部屋の中には小さな拍手の波が広がった。私はパーラにギルドカードを出してもらい、新しいものと交換。あやかの目が少し潤んでいたところに、ふうかがあやかに言う。


「あやか、まだ終わってないわよ」

「そうでしたね。レイアさん、B級冒険者とは…」


 B級冒険者とは、周りからは上級冒険者として見られ、依頼も重要なものばかりになる。そして、冒険者の模範的存在になるため、問題を起こさないようにする必要がある。


「レイアさんに問題を起こすな、という方が無理ですので、この点に関しては期待しておりません」

「すみません…」

「リータさんと同じランクになった、という自覚だけはお持ちください」

「はい」

「それから、ここのギルドも含めて、すべての冒険者ギルドがレイアさんをエースに据えようとすると思います」

「リータさんみたいな?」

「はい。エースになるか否かはレイアさん次第となりますが、私は反対です」

「どうしてですか?」

「エースとなった国からは簡単に出られなくなるからです」

「それは嫌です!」

「であれば、勧誘を受けても断るように」

「わかりました」

「私からの忠告は以前しましたので、これ以上はなにも…、いえ、最後の一つだけ。みなさん、レイアさんをよろしくお願いいたします」


 私たちはギルドを後にする。あやかたち四人は鬼福の里の北にある港町にこのまま向かうという。私たちは四人を見送るため、北門まで向かった。その別れ際、かえでが口を開く。


「港町はここから一日ほどで到着いたします。時間がある時で構いませんので是非いらしてください」

「はい!」


 そしてあやかも口を開き、タマモの話をする。


「今日はタマモさんとご一緒で安心いたしました」

「いつも一緒ですよ?」

「福々堂では小さなタマモさんをお見かけいたしませんでしたので」


 あやかたちは北門から出発。終始、ミーティアが寂しげな表情でピーちゃんを見つめていたような気がした。


「お店に戻ろっか」


 私たちはお店に戻り、ホムラたちに昇級したことを伝えた。


「なんの用だったんだい?」

「B級に上がりました」

「B級?S級の間違いじゃないのかい?」

「そんなことより服の着心地はどうだ?」

「すごくいいです」

「それはよかったですぅ」


 私たちは部屋に戻り、タマモは人の姿に。そして、私とタマモ、パーラの三人で裁縫の練習を続けた。翌日、私はホムラたちにエルフ国に向かうことを伝える。


「そろそろここを出発しようと思ってます」

「どこに行くんだい?」

「エルフ国です」

「ここからだと十日ぐらいか」

「それで、ここには戻らず村に帰ろうと思ってます」


 その日の夕食後、私とタマモ、ホムラ、サクヤ、ルルの五人で部屋にある大きなお風呂に入った。ルルは私の髪を洗いながら、寂しそうに口を開く。


「もうちょっといてもいいのに」

「レイアさんは冒険者ですから仕方ないですよぉ」

「それはそうだけどさ…」

「赤ちゃんが生まれて落ち着いたらまた来ますよ」

「待ってるからね」

「はい」


 私たちはお風呂から出て、ピーちゃんに全員まとめて髪を乾かしてもらう。そして、今回はルルだけでなく、ホムラとサクヤを含めた全員で眠る。


「リオン、ごめんね」


 私は一緒に寝ることのできないリオンに謝罪しながら、頭を撫でた。翌朝、私が起きると、ホムラたちとパーラの姿がなかった。パーラは朝食の準備についていったらしい。私はいつもの服に着替えて寝室を出ると、長机にはやや豪華な朝食が並んでいた。


「レイア、おはよう」

「おはよう」

「おはようございますぅ」

「おはよー」


 ホムラたちは順番に挨拶を言う。挨拶が終わると同時に動いたのはピーちゃんとリオン。ピーちゃんは豪華な食事で一気に目が覚めたようで、私の頭上から長机へと舞い降り、リオンは自らの定位置に着く。


「レイア!早く!」

「ママ!食べよう!」

「二人ともダメだってば!」


 その様子を、ホムラたちは笑顔で眺めていた。朝食後、私たちは西門に向かう。ホムラたちも見送りのため西門まで一緒だ。西門に到着し、私はホムラたちに感謝を述べた。


「ホムラさん、フォルスさん、サクヤさん、ルルさん。お世話になりました」

「いつでもおいで、待ってるよ」

「また野菜を持ってきてくれると助かる」

「次に来た時も採寸しますからねぇ」

「絶対来てよね」


 私たちは西門を抜け、エルフ国を目指す。何度か振り返って手を振ると、ホムラたちも手を振り返す。そして里から少し離れたところでタマモが人の姿になった。


「楽しかったね」

「うん!」

「いいところだと思います」

「里の中が他より落ち着いているのもよい点です」

「食べ物もうまいし、風呂もでかい。ここに定住するのも悪くない」

「ご飯おいしかったねー」


 昼食の時間になったので平原に入る。街道から離れたところに移動し、布を敷いて昼食を取る。街道の左手にはホムラたちから入るなと忠告された森が広がっているので、そちらには近付かない。


「パーラ、これどうしたの?」

「あの人たちと一緒に作ったのよ。朝食にも出したでしょ」

「どれくらいあるの?」

「たくさんよ」

「たくさんって?」

「『たくさん』よ」

「はい…」


 パーラが昼食に出したのは、朝食にもあった「おにぎり」という食べ物。白米を塩のみで味付けしたものや、野菜や肉、魚の入ったものなど多くの種類がある。おにぎり自体は珍しいものではなく、問題なのはその量。パーラは次々とおにぎりを取り出す。


──パーラの言うたくさんって…。


 みんなが美味しそうに食べているのを見て、私はパーラに尋ねる。


「これって作るのは簡単だけど、白米を炊くのに時間かかるよね?」

「そうね」

「土鍋一つじゃたくさん作れないよね?」

「増やせばいいじゃない」

「そうなるよね…」


 土鍋を増やし、おにぎりを作ることが決まった昼食であった。


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