4-11.5:かえで視点
鬼人国アカツキの鬼福の里。そこから一日ほど北に歩いたところの港町に、族長である「かえで」、私が住んでおります。港町に住んでいるのには特に理由はありません。以前は里の中に族長の家があったと聞いていますが、詳しいことはわかりません。北には港町が元々あり、港町には似つかわしくない族長の屋敷が作られたそうです。
族長の仕事は鬼人族全体の管理、という名の書類仕事になります。鬼福の里のギルドマスターが族長になる、という噂がありますが事実です。ギルドマスターとしてギルド全体に関わる仕事を覚え、それを族長の仕事に活かすというもの。書類仕事の規模が増えただけなので、少しも苦ではありません。
しかし、私の代ではバカ…、少し変わった鬼人族が一名。あやかという鬼人族の女性はギルドマスター候補であるにも関わらず、冒険から戻らない鬼人族の男性を探しに里を去ったのです。
あやかが里を去ったと聞いた時、怒りよりも心配が勝りました。私もギルドマスター経験者。いきなり消える冒険者を数多く見てきました。私のあとにギルドマスターになったあやかの双子の妹のふうかも、心配しているようです。
そして今、あやかはたいちと一緒に、私の前で謝罪をしているところです。
「もう謝罪は結構ですよ。それより、よく戻ってきてくれました」
「なにも言わずに飛び出したことは後悔していました」
「ですが、結果的にたいちを見つけることができたではありませんか」
「それはそうですが…」
「それからたいち、よく生きていましたね」
「ありがとうございます」
「二人はこれからどうする予定ですか?」
「今は戻ったばかりなのでこれからのことはまだ…。ただ、小さな結婚式を挙げることができたらと思っています」
その日、二人は屋敷に泊まっていきました。里に戻るにしても、すでに日が落ち始めていましたので。
夕食の時には、あやかとたいちを再会させた冒険者のお話を聞かせていただきました。ビーストテイマーという珍しい冒険者と聞き、私は懐かしい気持ちになっていました。今は亡きビーストテイマーの冒険者。そして彼女のお仲間からいただいた緋色の羽根を、今でも大切にしております。
そしてこの緋色の羽根こそが族長の証。「羽根を授かった者が次の族長になる」ということが、代々族長にのみ伝えられます。お隣のエルフの族長は羽根をお持ちではありませんが色々とご存知のようなので、このしきたりは鬼人族だけのものなのでしょう。
「その方のお仲間はどのようなモンスターなのですか?」
私のこの質問が、二人のこれからを決めることになるとは思いもしませんでした。その冒険者はレイアさんと仰るようで、珍しいモンスターばかりをお仲間にしているそうです。特徴的なのは頭に小さな鳥を乗せている点。それは、今は亡き友人と酷似していました。
二人はレイアさんのお仲間からいただいたものを私に見せてくれました。それは私が頭に付けている羽根と同じもの。この時、私の後継者が決定いたしました。しかし、まずは二人の結婚式が最優先になります。結婚式用の衣装をどこかで仕立ててもらわなければなりません。幸い、里には福々堂という素晴らしいお店があり、今の二人なら私から口添えの必要はありません。
「かえで、そっちの二人は誰だい?」
「あやか、たいち、あれを」
二人は例の羽根をホムラさんに見せると、ホムラさんは口角を上げました。そして二人の結婚式用の衣装について相談すると、快く引き受けてくださいました。結婚式用の衣装は特注品になるそうで、完成まで数年は要するそうです。なにが起きているかわからない二人の表情は大変新鮮でしたね。
現在、二人には族長の屋敷で生活していただいています。族長の仕事の手伝いや屋敷の清掃、港町の管理。今後は里にも顔を出させて里の管理も少しずつさせるつもりです。
そして本日、採寸を行うため、私も含め三人で福々堂まで赴きました。二人が別々の小部屋で採寸を行っている間、私はホムラさんに尋ねました。
「ホムラさん、タマモさんの主は?」
「今はギルドに行ってるよ」
「そうですか」
「そのうち帰ってくると思うけどね」
ホムラさんがそう言うとお店の入り口が開き、モンスターを大勢連れた少女が入ってきました。私と同じほどの背丈で、頭には小さな鳥を乗せていました。全身が鮮やかな黄色に染まり、首周りは緋色の小さな鳥。
──間違いありません、この方があやかとたいちを再会させてくれた冒険者のレイアさんですね。そして…。




