4-9.5:たいち視点
「グリフォンだけじゃなく、ジュエルレーンディアまで仲間にしたとはな」
「ええ、私も驚いたわ。レイアさんの情報が更新されるたびにひやひやしたものよ」
「レイアちゃんには感謝してもしきれないな」
「本当に…。レイアさんは私への恩返しって言ってたけど、恩返しにしては大きすぎるわ」
「ああ…」
「生きててよかった…」
「悪かった…」
「私の方こそごめんなさい。この話はもう終わりにしなくちゃね」
「…鬼人国に帰るのか?」
「戻ってくるなら迎え入れるって、ふうかからの手紙に書いてあったわ」
「少し怖いが帰るか」
「そうね」
俺はレイアちゃんと一緒に、レイアちゃんの家に向かっている。世話になっているミゼルの家でもある。ミゼルがレイアちゃんのために増築した時は、微力ながら俺も手伝わせてもらった。もっと仲間が増えるだろうと言って、広めでしっかりとした造りになってる。
グリフォンエンペラーには驚いたが、まさかジュエルレーンディアまで仲間にしているとは思わなかったな。増築した部屋に入った時は驚いたもんだ。
「ジュエルレーンディアか?」
「はい」
「仲間、にしたんだな?」
「はい」
「レイアちゃんはそろそろS級か?」
「まだD級です」
「ギルドはなにやってるんだ」
「色々ありまして…。あ、この中です」
そこにはファスナーの付いた布が壁にかかっていた。この中と言われてもよくわからなかったが、中に押し込められると、そこには部屋のような空間が広がっていた。ただ、その空間について考えている時間はなかった。
「あやか…」
あやかは一も二もなく俺に抱きつき、号泣し始めた。言葉にならない言葉を発し、ただただ抱きついてくるあやかを、俺は受け止めるしかなかった。両腕で俺の存在を確かめるかのように強く、強く抱きついてくる。
俺は残ってる右腕であやかが泣き止むまで頭を撫でてやった。どれくらい泣いていたかわからないが、ひとしきり泣いて落ち着いたのか、あやかは一歩引いて距離を取った。
「失礼いたしました…」
「お、おう…。眼鏡、拭いた方がいいぞ」
「わかってます!座ってください!」
あやかに怒られてイスに座った。眼鏡を拭き終わったあやかが淹れたのは鬼人国のお茶。懐かしい味だ。お菓子も鬼人国では有名な、あんこが入った饅頭だった。
「懐かしい味だな…」
「ええ…」
その後、お互いに沈黙が続いたが、俺はあやかに謝らなければならない。
「すまん!」
「今更なんですか!遅すぎます!連絡ぐらいしたらどうなんですか!」
「すまん」
「その左腕だって、どうせ無茶をして失くしんでしょ!」
「すまん…」
「謝ってないでなにか言ったらどうなの!?」
「…」
「はあ、怒ったら少しスッキリした」
「そ、それはよかった…」
「許したわけじゃないのよ?」
「はい…」
「でも、生きててよかった…」
「…」
「なにがあったか話して」
俺は腕を失った理由を話す。簡単な話だ。自分より強いモンスターと戦って腕を失った、ただそれだけだ。だが腕を失ったのと同時に記憶も失っていた。記憶が戻ったのは半年ほど前。連絡をしなかったのは怒られることがわかっていたことと、「死んだ」と認識されていると思っていたからだ。鬼人国に帰ることも考えたが、連絡すらしていないのにどの面を下げて帰れというのか。
俺は長い間、食彩国で生活をしていた。食彩国のほとんど誰も泊まりに来ない大きな宿屋。そこに住み込みで働いていた。働くといっても客が来なければ仕事もない。掃除をして過ごす毎日だった。
記憶が戻り、行く当てのない俺のところに、滅多に現れない宿屋の店主と、褐色の肌に水浅葱色の髪を持つ少女がやってきた日があった。
「記憶が戻ったようですね」
「メイカルトの近くにあるハーベ村に行くといいよ」
二人は俺にそう言った。その時はよくわからなかったが、そのおかげでレイアちゃんに会うことができ、あやかと再会することができた。その後、宿屋の店主や褐色の少女とは会えていない。レイアちゃんもそうだが、あの二人にもお礼を言える日が来るといいと思ってる。
そして、今まで連絡をしなかった俺がレイアちゃんに手紙とペンダントを託したのは、冒険者としての直感みたいなものだったのかもしれない。ビーストテイマーという珍しい職業で、その仲間は珍しいものばかり。多分、この時からレイアちゃんはすごい冒険者になると感じていたんだと思う。
「レイアさんは不思議ね」
「ビーストテイマーの時点で珍しいが、使役してるモンスターも珍しいものばかりだ」
「そういう意味じゃないのよ、バカ」
「じゃあどういう…」
「レイアさんには改めてお礼を言わないとね」
「そうだな」




