4-4.5:ホムラ視点
「では、確かにお届けいたしました」
「報酬は誰が払うんだい?」
「ノエルさんとステラさんからいただいておりますので、お気になさらず」
「そうかい」
「じゃあ僕はこれで」
「ところで、この子の主はどんなやつなんだい?」
「頭に黄色くて太ったファーストバードを乗せてる女の子です。その他には…」
「…いつも通りみたいだね」
「なにか言いましたか?」
「いや、こっちの話さ。それと、この手紙をステラに渡してくれないかい?」
「わかりました」
「悪いね」
テイルはタマモの頭を撫でると店から出ていった。店に届けられた藤狐は初めての場所に、キョロキョロと周囲を見回している。
「名前は?」
「タマモです」
「タマモだね」
「言葉がわかるのですか?」
「わかるよ。さて、ステラの手紙によると九尾の狐になって…、なるほどね」
「私はどうなるのでしょうか?」
「取って食ったりしないから安心しな。私は魔法の使い方を教えるだけさ」
「魔法、ですか?」
「今日はゆっくり休みな」
「私は暴走するのですか?」
「しない、とは言い切れない。だから魔法を教えるのさ」
「よろしくお願いします」
「それじゃあまずは、ここにいる『仲間たち』を紹介しようかね」
タマモがうちに来てから一か月ほどが経った。そろそろタマモの主が迎えに来る頃だ。タマモはそわそわしながらも様々な練習を続けている。しかし、そわそわしているのはタマモだけではない。
「なんであんたたちまでそわそわしてるんだい?」
「久しぶりに会えるから?」
「そわそわするな、という方が無理ですよねぇ」
「『フォルス』はどうしたんだい?」
「仕事してるよ」
さっきから黙ってこちらを見ている二人にも話を聞く。
「二人はなんでここにいるんだい?」
「呼ばれましたー」
「呼びました」
「『かえで』はわかるが、『ミーティア』は持ってないだろ?」
「ノエルさんとステラさんは持っていましたね」
「本当ならノエルちゃんかステラちゃんが族長をやるべきなんだけど、仕方ないよねー」
「あの方たちは冒険者としては一流ですが、族長には向かない性格ですから」
「私も欲しいなー。燃え残った羽根もどっかいっちゃったし」
「渡すかどうかはあの子次第なんだからね」
私たちは大勢で東門に向かったが、その日は現れなかった。そして次の日も、また次の日も現れなかった。ほとんど客の来ない店だが、閉め続けるのも気が引ける。族長たちも仕事があるので来なくなった。
店を再開して数日後、エルフの二人組が訪れた。ノエルとステラは今のタマモを見て、言葉も出ないようだ。
「どうでしょうか?」
「あ、いや、その…」
「タマモさんが見違えるほど美しくなったと言いますか。こうなるのはわかっていましたが、予想以上です」
「私はきれいじゃないって言いたいのかい?」
「そ、そうではなく…」
「レイアさんは気づいてくれるでしょうか?」
「無理だ」
「無理ですね」
タマモは落ち込むが、これは誰もが経験する道。
「タマモ、私たちも通った道だから安心しな」
「はい…」
「肝心のレイアはどこだ?」
「まだ来てないんだよ」
「それはあり得ません。私たちより先に着くはずです」
「やはり獣人国経由でここに来るべきだったか」
「どこを通ってきたんだい?」
「メイカルトのギルドに顔を出して、ドワーフ国経由でこちらまで」
私たちが話していると、奥から「ルル」がやってきた。
「あ、ノエルとステラだ」
「元気そうだな」
「お元気そうでなによりです」
「ルル、掃除は終わったのかい?」
「もちろん!」
「私たちもあそこに行っていいか?」
「構わないよ」
「どこへ行くのですか?」
「タマモはまだダメだよ」
「そうそう、タマモを今を楽しまなくちゃ!」
ルルはノエルとステラを連れて、店の奥に消えていった。私は残ったタマモと主についての話をする。
「タマモの主はいつ来るんだろうね」
「必ず来ると信じています」
「いつまでなら待てそうだい?」
「必ず迎えに行くと約束してくれました。ですから、来るまで待ち続けます」
「その意気だ。じゃあ練習の続きと行こうかね」
タマモがうちに来てから一か月と半月ほど経ったある日、タマモの主はやってきた。
「え?」
「タマモです…」
「声はそっくりだけど、タマモってこれくらい小さくて…」
「レイア、この子がタマモ!」
「見違えましたが、魔力はタマモ殿と同じでございます」
「レイアって魔力で誰だか判断してなかったのね」
「このようなことができるとは恐れ入った」
「リオンっていうの、よろしく」
「よろしくお願いします…」
「人間にしか見えないよ?タマモは人間になったの?」
「いつもの反応だね」と私はその光景を微笑ましく眺めた。




