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4-4:タマモへの道

 出発から五日、山の麓の森に到着した。ここからダンジョンまで歩いてすぐだが、念のため索敵魔法を使用。すると、フールが口を開く。


「なんだ今の?」

「索敵魔法です」

「ビーストテイマーってすごいんだな」


 索敵の結果、前回と同じくダンジョン周辺にモンスターはおらず、気配の密集しているところがあった。その場所はダンジョンのあるところと一致。ダンジョンまではハドックとケリュスを先頭に、ライルたちを殿とした布陣で進む。


「ここがダンジョンか」

「ダンジョンは久しぶりだな」

「腕が鳴るな」

「どこまで確認してもらえばいいんですか?」

「最奥までだな。赤のダンジョンというならコアの確認をしないとな。それが終わり次第、レイアとはここで別れる」


 ダンジョンに入る前、ガイが三人分の光る魔法具を鞄から取り出し、ライルとフールに渡す。


「レイアはなにか明かりを持ってるか?」

「持ってないです。でもケリュスの角が光るので大丈夫です」

「そういえば夜の間も光ってたな」


 私たちはライルたちを先頭にしてダンジョンに入る。出てくるモンスターはホーンボアのみ。最奥にいた大きなホーンボア以外はケリュスだけで倒せる程度の強さ。私はあまり心配せずにダンジョンを進んでいった。ホーンボアを遠目に確認するとライルが口を開く。


「イエローホーンボアか。レイア、ここは俺たちに任せてもらおう」


 ライルがそう言うと三人は駆け出した。イエローホーンボアが三人に気づくと、三人に向かって突進を繰り出す。ライルが大剣を構え、少し押されながらその突進を受け止めると、ライルの左右からガイとフールが飛び出していく。ガイとフールは左右から一撃を与え、怯んだところにライルが剣による打撃を加えるとイエローホーンボアは沈黙した。


──強い!B級三人はすごいなぁ。連携も無言でやってたし。


 私たちが近付くと、ガイが止める。


「今から解体するから離れてた方がいいぞ」

「解体するんですか?」

「そうだ。肉は解体して食えるところだけを持ち帰る。このまま全部持って帰ってギルドで解体してもらってもいいけどな」

「見ててもいいですか?」


 私の言葉に三人は顔を見合わせると、ライルが口を開く。


「モンスターの解体を見ても大丈夫なのか?」

「小型なら解体できるんですけど、大きいのはやったことがなくて」

「なら簡単なところだけ手伝え」


 私とパーラは解体に参加することになった。ダンジョン内なので、前後の警戒をみんなに任せる。


「そのミミックも解体するのかよ」

「パーラは私たちの料理を作ってくれます」

「あのシチューもか?」

「はい」

「すげえな」


 フールは驚きながら解体を進める。私とパーラは指導を受けながら、簡単なところだけを解体し、あとは後ろで見学。三人の解体は素早く丁寧だった。


「レイア、この肉は持っていけ」

「え?」

「シチューの礼だ」

「いいんですか?」

「グリフォンはたくさん食べるからな。今回ここで解体した肉はレイアに渡すと三人で話をしてある」


 ガイがそう言い終わると、ライルが頼み事をする。


「ただ、頼みがある」

「なんですか?」

「今回は模擬戦が禁止されている。だから次に会った時、その鎧と模擬戦をさせてくれ」

「ハドック、どうする?」

「……」

「次ならいいみたいですよ」

「感謝する」


 その後、最奥までの道中に出てきたイエローホーンボアは全てライルたちが倒して解体した。角はガイが回収し、肉はパーラが収納。そして、最奥の大きなホーンボアを見たフールが私に言う。


「あのでかいレッドホーンボアを倒したのか?」

「はい」

「まじかよ…」


 三人で何やら話し合うと、ライルが私に言う。


「俺たちだけで倒しきれなかったら援護を頼む」

「は、はい」

「行くぞ!」


 三人は大きなレッドホーンボアに向かって駆け出す。


「三人で倒せそうだけど」

「レイア様、あのモンスターをみくびってはなりません」

「でもみんなは簡単に倒してなかった?」

「レイアよ、前回はわれらに支援魔法があったのを忘れたか?それにこやつら、ここまで魔法を使っておらん」

「獣人は魔法が使えないんでしょ?」

「ぼくが助ける!」

「リオンも!」

「みんなの出番がないといいんだけどね」


 ライルたちの戦法は変わらない。ライルが大剣で突進を防ぎ、その間に左右からガイとフールが飛び出す。しかしそれは初撃で崩れ去る。レッドホーンボアの突進をライルが防ぎきれずに弾かれてしまった。


「ぐっ!重いな!」


 ライルは弾かれてしまったが、ガイとフールは左右から飛び出し、レッドホーンボアの腹に一撃を与える。


「浅いか!」

「ほんとにこれでB級かよ!」


 ガイとフールはそう言いながら、ライルの元に戻る。どちらの攻撃もかすり傷程度。しかし、レッドホーンボアが激昂するには十分な攻撃だった。激昂するのを確認すると、みんなが私を守るように前に出る。私は念のため、みんなに支援魔法をかけた。


「スカーレットコール・フル!」


──前も支援魔法を使って倒したし、念のためにかけておいた方がいいよね。


 私がそんなことを考えていると、激昂したレッドホーンボアがライルたちに突進するため体勢を整え、突進を仕掛ける。ライルは大剣を構え直して突進を防ごうとするが、防ぎきれないことは先の突進でわかっていた。


 そのままレッドホーンボアが突進してくると、ライルの目の前にハドックが割って入った。斧を構え、少し押されつつ突進を受け止めきる。動きが止まったことを確認すると、斧に雷をまとわせ二本の角を手早く切断。


 角を切断されたことでレッドホーンボアが怯んだ隙に、ハドックの後ろからライルたちが襲いかかる。ガイとフールの左右から攻撃を加え、ライルは高く飛びあがって背中に大剣を突き立てる。そしてハドックが雷をまとわせた一撃を与えると、レッドホーンボアは沈黙した。


 私は戦闘が終わったと判断し、ライルたちのところへ向かう。


「大丈夫ですか!?」

「ああ、助かった」

「ライルが受け止めきれないとは思わなかった」

「それにしてもお前の仲間は強えなあ」


 私たちはコアを守っていたレッドホーンボアを手早く解体する。ここでも角はガイが収納し、肉は私たちがもらう。その後、ライルたちがダンジョンコアの色を確認する。


「赤のダンジョンで間違いないな」

「これでギルドからの依頼は終わりだな」

「帰ろうぜー」


 私たちはダンジョンから出る。森を抜け、平原に戻るとガイが口を開いた。


「レイア、ギルドからの依頼は終わった。このまま鬼人国に行くんだろ?」

「はい。ここからだとどうやっていけばいいんですか?」

「このまま西に進むとクロスファングから鬼人国の関所に繋がる街道にたどり着くはずだ。レイアたちなら道中のモンスターも問題ないだろう」

「わかりました」


 そして、ライルが感謝を述べる。


「ここからだと五日ほどで関所に着くはずだ。それから、ダンジョンでは助かった」

「まずはここのダンジョン攻略が先だな」

「模擬戦はそれが終わってから挑むか」


 ライルの感謝にガイとフールがそう付け加えた。私たちは別れの挨拶をし、それぞれの行く道に向かう。私たちは鬼人国との関所へ。ライルたちはクロスファングに向かう。


「いい人たちだったね」

「うん!」

「見た目ほど悪くありませんでした」

「でもシチューは空っぽよ?地竜の肉を使ってたのに」

「肉はたくさんもらったではないか」

「ママー、お腹空いたー」

「ぼくもお腹空いた!」

「ライルさんたちが見えなくなったらご飯にしよっか」


 ピーちゃんは私の頭上で向きを変え、ライルたちの方を向く。ピーちゃんはライルたちが見えなくなるまで監視を続けるのであった。


 ライルたちと別れてから一週間。私たちは関所が見えるところまで来ていた。ライルは五日で着くと言ったが、嬉しい出来事が起こって時間がかかった。ついにリオンが飛べるようになったのだ。


 ピーちゃんの毎日の指導により飛べるようになったリオンだが、長時間飛ぶにはスタミナが足りない。さらに、飛べるようになったリオンが私の胸に飛び込んでくる事件もあった。


「ママ!」

「え、リ、リオン!ダメだってば!」


 私はリオンを受け止めると、ピーちゃんやタマモより重いリオンの体を支え切れるわけもなく、そのまま後ろに倒れる。しかし私の後ろを歩いているハドックに支えられ、何とか持ちこたえることができた。


「ハドック、ありがとう…」

「いえ。しかし、リオンには言って聞かせねばなりません」


 その後、リオンに対する指導が、ハドック、パーラ、ケリュスによって行われ、リオンが私の胸に飛び込んでくることはなくなった。その代わり、まだ子供であるリオンに対して、寝る時や休憩中は甘やかすように三人から言われたので、私はなるべく撫でるようにしている。


 リオンが飛べるうちはピーちゃんと一緒に飛び回り、スタミナが無くなると小休憩をする。その繰り返しが関所まで遅れた理由。


──リオンってそのうち長く飛べるようになるのかなぁ?


 私たちは関所を通過し、鬼人国アカツキに入る。関所から鬼人国アカツキの都市である「鬼福の里」までは数日かかる。


「遅くなっちゃったけどタマモは怒ってないかな?」

「タマモは怒らない!」

「タマモ殿なら大丈夫だと思いますが…」

「レイアがタマモのことをモンスターと間違わないか心配よ」

「うむ、あれは傷つく」

「もうタマモのことは間違わないから!」

「なら、タマモを見つけてもレイアには教えなくてもいいわね?」

「い、いいよ!」


 リオンは何のことかわからないようで首を傾げていた。


──みんな好き勝手言いすぎ。あんなに小さかったタマモがいきなり大きくなったらわかんないよ。でも多分、小さい姿でいると思うからもう間違わない!


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