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スカーレットリンク ~緋色の盟約~  作者: 霧野 勝
3章:出会いと離脱
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3-9:事後処理と報酬

──柔らかくてふわふわしてる…。なんだろうこれ…。気持ちいいなぁ…。


「ん…」

「レイア?」

「ピーちゃん…?」

「おはよう!」

「おはよぉ…。あれ、これは…?」


 寝ぼけている私にはそれが大きなモンスターに見え、悲鳴を上げる。直前まで地竜と戦っていた記憶が鮮明に残っている。驚くな、という方が無理だった。


「ピ、ピーちゃん!モンスター!」

「レイア?大丈夫?」

「え?あれ?タマモは?」

「私がタマモです…」

「え?」


 みんなは呆れた様子で頭を左右に振り、大きなモンスターは自らをタマモと名乗る。美しく艶やかな藤色の毛並みは確かにタマモそのもの。尻尾が九本に増え、一本あたりの大きさは私とほぼ同じ。ふわふわ具合もさらに増し、大きな耳に鋭い爪も備わっていた。タマモが大きくなったと言われれば、どこか面影を感じる。


「起きたか」

「ノエルさん!タマモが…」

「私たちも驚いたぞ。まさか『九尾の狐』になるとは」

「九尾の狐?」

「知らんか?」

「はい」

「大活躍だったが、レイアは寝てたな」

「無理もありません、魔力切れでしたから」

「ステラさん、ここは?」


 私たちのいる場所は平原のように見えるが、黒い半球状のもので覆われている。


「ここはダンジョンを出てすぐの平原ですよ。レイアさんの後ろにはダンジョンがあります」

「この黒いのは?」

「これはダンジョンに入る前、私が闇魔法で作ったものを大きくしたものですが、覚えてませんか?」


 私が混乱していると、お腹が大きく鳴る。


「腹が減ってはなんとかか」

「もうお昼を過ぎてますからね」

「ノエルさんとステラさんはご飯食べたんですか?」

「レイアとタマモ以外食べたぞ」

「え?」

「タマモさんはレイアさんがもたれかかっていたので、食べられなかったのです」

「タマモ、ごめん!」

「コン!」

「レイアさん、小さくする魔法は使えそうですか?」

「あ、そうですね。フォームシフト!」


 私は立ち上がり、杖を立て、大きくなったタマモに小さくなる魔法を使用する。タマモが小さくなると、私の知っているいつものタマモに戻る。私はそれが嬉しくてタマモを抱き上げる。


「タマモはこうでなくっちゃ!」

「コン!」

「レイア、私たちはまだダンジョンの後処理があるからここでゆっくりしていろ」

「後処理ってなんですか?」

「地竜の回収です、高級品ですから」


 ステラはそう言い残し、二人は去っていった。パーラは私とタマモの昼食を取り出し、二人で食べる。昼食を食べたはずのピーちゃんが物欲しそうな目をしていたので、少しだけ分けた。遅めの昼食を取りながら、私はみんなの話を聞いた。


「あ、タマモっていつでも大きくなれそう?」

「なれそうです。ケリュスさんから話は聞きました」


 私たちが話していると、ノエルとステラ、ロマリスがやってきた。


「レイアさん!この度は大変お世話になりました!」

「私はなにも…」

「レイアさんがいなければ、ティアラも学園の生徒も無事ではなかったと聞いています」


 私はロマリスの後ろにいる二人を見る。どうやらそういうことになっているらしい。


「レイアさんにも相応の報酬をご用意いたしますので、また後日、ギルドまでお願いいたします」

「わ、わかりました」

「レイア、帰るぞ」

「は、はい!」

「ノエル、レイアさんは起きたばかりなんですからね」

「ならステラが浮かせて運んでやれ」

「それはいい考えですね」

「歩けます!」


 ステラは闇魔法を解除し、私たちはその場を後にする。アルカディアに入る前にケリュスを小さくし、宿屋に戻った。そしてノエルとステラは当たり前のように私たちの部屋に入り、自分たちの居場所かのようにイスに座る。


「レイア、大事な話がある」

「なんですか?」

「タマモさんのことです」

「九尾の狐だと言ったのを覚えているか?」

「はい。それってなんですか?」

「タマモさんは九尾の狐として覚醒したのです」

「かくせい?」


 ノエルとステラは知っていることを話す。九尾の狐というモンスターが最後に確認されたのはかなり昔のことらしい。そのため、ギルドに置いてある図鑑にも名前だけが記載されているだけで詳しいことはわかっていない。


「そんなに珍しいのになんで知っているんですか?」

「…し、師匠からそういった話を聞きまして」

「今のステラでも勝てないな」

「無理でしょうね」

「ノエルさんの師匠でもあるんですか?」

「私の師匠は別だ。私は魔法が使えん」

「え!?」


──魔法無しでハドックに勝ったの!?


「なんだその化け物を見るような目は」

「そんなつもりは…」

「実際、化け物みたいな強さですから」

「ステラがそれを言うのか?」

「あら、ごめんなさい」

「まあいい。それでレイア、タマモは今の小さいままにしておけ」

「そうですね。それから、早めに鬼人国に行くことをお勧めします」

「鬼人国ですか?」

「私の師匠がそこにいます」

「わかりました。鬼人国には行く予定だったんです」

「なにをしに行くつもりだったんだ?」


 私はパーラにトロールの角を取り出してもらう。


「トロールの角か」

「はい。ここのギルドでも買い取りできるって言われたんですけど、鬼人国かエルフ国の方がいいって言われました」

「エルフ国にも行くのか?」

「そのつもりです」

「そうか。悪いやつはいないはずだが、なにかあれば私たちの名前を出していいぞ」

「レイアさんのためなら名前の一つや二つ、安いものです」

「は、はい」

「ノエル、そろそろ行きましょう。レイアさんも疲れているでしょうし、ギルドとティアラのところにも行きたいので」

「そうだな。レイア、今日はゆっくり休め。また明日の朝、部屋まで行く」


 二人は私たちの部屋から退室。まだ日が落ちるには時間があったが、私の魔力は珠三つ分に少し足りない程度。私自身に疲労はないものの、タマモは少し疲れているように見える。


「タマモ、大丈夫?」

「はい、でも少し疲れました」

「お疲れ様」


 私はタマモを呼び寄せ、腕に抱き、頭を撫でた。翌朝、私たちは目を覚ます。昨夜は普通サイズのベッドで、私とピーちゃんとタマモの三人でぎゅうぎゅうになりながら眠った。私は眠い目をこすりながら、少し早めに準備を始める。ノエルとステラが早めに来ることがわかっていたからだ。私が準備を終えると、扉がノックされる。


「はーい」

「レイアさん…、おはようございます…」

「今日は準備できてるな」

「おはようございます。ステラさんは眠そうですね」


 私はまだ眠そうなピーちゃんを抱えて、みんなと食堂に向かう。朝食後、ノエルとステラに連れられてギルドに向かった。ギルドマスターの部屋に案内されるとロマリスが待っており、私たちに感謝を述べる。


「ノエル様、ステラ様、レイアさん、昨日はありがとうございました」

「元々そういう依頼だ」

「そのこともありますが、ティアラや学園の生徒の命を救っていただいたことは別の話です」

「そこは報酬で示せ」

「そのつもりです。それからレイアさんにもダンジョン攻略の報酬と救助の報酬をお支払いいたします。その他にも地竜の素材や黒のかけらもレイアさんにお渡しする予定です」

「ちょ、ちょっと待ってください!地竜の素材と黒のかけらですか?」

「はい。レイアさんも今回のダンジョン攻略でご活躍されたとノエル様とステラ様から聞いています」

「昨日ロマリスと話し合って、ダンジョン内の素材をレイアさんを含めた私たち三人で分けることになりました」

「素材はすべて現物でお渡しした方がよろしいですか?それともギルドでお渡しする分の素材を買い取りいたしましょうか?」

「えっと…」

「私たちは黒のかけらだけもらう。あとは買い取りだ」

「じゃあ私も…」

「レイアさんは素材で受け取った方がいいかもしれません」

「ステラ、なぜだ?」

「地竜の肉は非常においしいですからね」

「ピー!」

「じゃあかけらとお肉だけもらいます」


 ピーちゃんの要求に答え、地竜の肉を受け取ることにした。「非常においしい」と聞き、ピーちゃんは特等席で体を揺らしている。報酬や素材の準備はまだできていないということで、私たちはギルドを後にした。


 次に向かったのは魔法学園。ノエルとステラは昨日も行ったようだったが、ティアラの目が覚めていなかった。ピーちゃんが綺麗に治したとはいえ、かなりの深手を負っていたのだ。目が覚めないのも無理はない。学園の巨大な門が開くと、そこには元気そうな姿のティアラが立っていた。


「ティアラ、もういいのか?」

「大丈夫じゃが…、ダンジョンでなにがあったのか説明してもらえませんかの?」

「ステラが治した」

「それはあり得ませぬ!」


 ティアラは疑いの眼差しを向ける。


──治したのはピーちゃんだし、ノエルさんもステラさんもそれを見てたはずなんだけど…。


 私が疑問に思っていると、話題を逸らすためにステラが口を開いた。


「学園の生徒はどうなったのです?」

「大事を取り、数日は療養させるつもりじゃ」

「罰は?」

「療養が終わり次第、厳罰を与えることになっておる」

「それにしても、学園から近いところにダンジョンができるとはな」

「ダンジョンはどこに現れるかわかりません。学園の内部にできなかったことは幸運でしょう」

「学園や都市の中にできることもあるんですか?」

「そういう話は聞いたことないが、問題はそこじゃない」

「レイアさん、この平原のモンスターはどれくらいのランクですか?」

「えっと、街灯を越えたらD級とC級って聞いてます」

「そうですね。では昨日のダンジョンのランクは?」

「S級です。…あ!」

「この平原にS級のダンジョンが生まれることはあり得ません」


 メイカルトの西にできたダンジョンは森と山の境い目。D級からA級まで幅広く出てくる可能性があり、実際はA級のダンジョンだった。しかし、ここはD級やC級が出現する平原。学園自体はF級やE級の平原内に収まっているが、学園の裏手は縄張りが変わる境界に近い。仮にダンジョンができたとしてもD級とC級のモンスターしか出てこないはず。


「私たちへの依頼はあくまでもダンジョン攻略。予期しない人命救助もありましたが、この調査についてはロマリスがやってくれるでしょう」

「わしも手伝うつもりじゃ」

「ならロマリスとティアラに任せるとするか。帰るぞ」


 私たちは学園を後にする。帰りの道中、私は二人に尋ねる。


「あの、ピーちゃんが治したって知ってますよね?」

「あいつは研究が好きだからな。ピーちゃんの治癒能力を知ったらどうなると思う?」

「それは…」

「今は私が治したことにしておいてください」

「わかりました」


 アルカディアに戻った私たちは二人と別れる。二人はダンジョンに向かい、私たちは散策を続ける。問題を起こした私たちであったが、少し視線を感じるような気がするだけで、誰かに咎められることはない。そして、祭壇に炎はなかった。祭壇を通り過ぎ、散策できなかった場所に向かう。


「なにがあるかなぁ」

「ご飯?」

「ご飯にはちょっと早いけど、なに食べよっか」


 昼食を探しながら散策をする。昼食はクロワッサンサンドなるものを購入。多層構造の茶色のパンに、肉や野菜を挟んだもの。ケリュス用に野菜のみのものも買う。焼きたてのふんわりパンと違い、サクサクの生地が何層にも重なり、楽しい食感を演出する。


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