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2-9:攻略

 私たちは久しぶりの森に向かって歩みを進めていく。ダンジョンは西から少しだけ北に行ったところにあると言われた。少し坂になったところに大きな洞穴があり、リータが目印になる木の枝を立ててあるとのことなので、まずは森に入ることを目指す。


──このあたり歩くのも久しぶりな気がするなぁ。ガイアさんともここで会ったんだっけ。


 二日後、私たちは森の中へ。初めて来た時と同じく、不思議な感じは変わらない。


「どこにダンジョンがあるのかなぁ」

「レイアさん、多分もう少しこっちに」

「タマモはわかるの?」

「森の様子が少し違います。狼どころか他のモンスターも全然いません」

「森の入り口だからじゃなくて?」

「レイア様、索敵魔法を使ってはいかがでしょうか?」

「あ、そうだね」


 私は杖を立て、魔力を込める。


「サーチアイ!」


 私たちの周囲にはほとんどモンスターの気配がなく、平原を含めた索敵範囲ギリギリあたりに気配が確認できる。しかし、一つだけ違和感のある気配があった。そこには多くの気配が密集している。おそらくそこがダンジョンなのだろう。


「ここだよね?」

「レイア様、わたくしが先頭を務めます。パーラ、後ろを頼む」

「わかったわ」


 ハドックを先頭に、違和感のある気配の場所まで行くと大きな洞穴があった。その洞穴の周囲には、リータが残したと思われる木の枝がいくつか刺さっていた。入る前、リータに言われた通り、洞穴の中では火魔法を使ってはいけないということをみんなに伝える。


「ここかぁ。ピーちゃん、炎はダメだからね。タマモもお願いね」

「うん!」

「わかりました」

「じゃあ行こう」

「レイア様、入る前にわたくしに支援をいただけませんか?」

「わかった。スカーレットコール!」


 ハドックに支援魔法をかけ、ハドックを先頭にしたまま、洞穴の中へと入っていく。洞穴の中は暗い。その暗闇の中で、八つの珠が光るブレスレットがよく映える。しかし、ハドックにこの暗闇は関係なく、私たちに気を使いながらゆっくりと進んでいく。


「タマモ殿、光魔法で周囲を照らしていただいても?」

「でも…」

「レイア様の安全が第一です。支援魔法もいただきましたので多少は持ちこたえられるかと」

「わかりました」


 タマモは尻尾の先に光を集める。周囲を照らす光魔法は眩しい光ではなく、ほのかに光る優しいものだった。


「タマモ、もっと明るくできる?」

「これ以上明るくすると私の魔力とハドックさんの負担が心配です」

「わかった」

「それから…、この状態だと私は戦力にならないので…」

「じゃあピーちゃんとハドックに頑張ってもらおう」

「がんばる!」

「お任せを」


 少し進むとハドックが止まる。どうやらモンスターが出てきたようだ。出てきたのは黄色のゴブリン集団。集団とはいえ黄ゴブリンはD級相当。ピーちゃんとハドックの敵ではない。


「ハドック、いけそう?」

「問題ありません」

「じゃあお願い。ピーちゃんは待機ね」

「わかった!」


 ハドックに指示を出すとゴブリンの集団に向かっていき、一振りで数体をまとめて倒す。数回斧を振るうと戦闘は終わった。


「さすがハドック!」

「恐れ入ります。素材はこちらで間違いございませんか?」

「うん、その角を集めよう」


 ハドックは倒したゴブリンから角を切断し、全て回収したところで先へ進む。


──これぐらいだったらなんとかなりそうだけど油断しちゃダメだ。あやかさんに怒られちゃう。


 私が考え事をしていると、ハドックはまた立ち止まる。次に現れたのは赤ゴブリンの集団。赤ゴブリンはC級相当。集団なのが気になるが、ピーちゃんとハドックの二人でなら倒せると私は判断した。


「ハドックに任せるけど、ピーちゃんも一緒に行って」

「わかった!」

「ではピーちゃん殿、参りましょう」


 ピーちゃんは私の頭上からハドックの肩に場所を移す。先程と同じく、ハドックは一振りで数体をまとめて倒す。ピーちゃんはハドックの肩から舞い上がり、空中から風の刃を一つずつ飛ばし、一体ずつ確実に倒していく。そして同じように角を集め、先に進む。


「ハドックだけでなんとかなりそうだね」

「支援のおかげかと」

「あ、でも一応確認だけ」


 私はハドックに触れ、魔力量を確認。珠は九つ半ほど光っているので問題なさそうだったが、タマモの魔力は減っていた。ハドックの後にタマモに触れると、珠二つ分減っていたのだ。


「タマモ、大丈夫?」

「まだ余裕はあります」

「光らせてる間、ずっと減っていくの?」

「はい」

「それだと帰りは真っ暗になっちゃうかなぁ」

「レイア、私も同じようなことできるから安心しなさい」

「パーラの魔法は防御用じゃないの?タマモみたいになるの?」

「目くらましの応用で、私自身が光るわ」


 パーラは試しに光魔法で明かりを作る。タマモと同じような具合で鞄自体がほのかに光った。


「パーラはなんでもできるね!」

「ふふん」


 明かり問題も解決し、私たちは先へ進む。しばらく歩くとハドックが立ち止まる。しかし今回は様子が違った。


「レイア様、あれを」

「あれって…、赤オーク?」

「おそらく。リータ殿はあれと戦っている最中にゴブリンの集団が現れ、引き返したと」

「二人なら倒せる?」

「やってみましょう。パーラ、レイア様に防御膜を」

「わかったわ」


 パーラは私とタマモを包むように防御膜を展開。ピーちゃんはハドックの肩に乗り、二人は赤オークと対峙する。赤オークはB級相当だが、一体ならば二人で倒せるはず。


 ハドックはピーちゃんを乗せたままオークに向かっていく。対峙していたオークもハドックが動いたことで動き出した。ハドックが今までと同じように斧を一振りするが、オークは両腕を交差し、防御した。皮膚が硬いのか、オークの腕には浅い傷が付いた程度。


「ここまで硬いとは」

「ぼくもやっていい?」

「では次の一撃のあとに」

「わかった!」


 ピーちゃんとハドックは短い会話をし、もう一度オークに向かっていく。ハドックは斧に雷をまとわせ、先程よりも素早く、そして力強く斧を振り抜くとオークの右腕が飛んだ。


 オークは大きな悲鳴を上げるが、そこへピーちゃんの風の刃がオークの胸を切り裂く。オークはふらつくが倒れることはなく、二人を睨む。ハドックはそのふらつきを見逃さず、素早く左腕も飛ばした。


 オークは仰向けで倒れたが、息は残っている。瀕死のオークにピーちゃんが風の刃でもう一度胸に傷をつけると沈黙した。私が二人に近付こうとすると、ハドックとパーラが止める。


「お待ちください」

「まだよ」

「え?」


 奥からさらにいくつかの影がこちらに向かってくる。向かってきたのは三体の赤オークだった。


──リータさんの話では赤オークは一体だけだったはず。こんなに多いなんて聞いてない…。それともダンジョンコアから新しく出現したのかなぁ?


「ピーちゃん、こっち来て!」

「なあに?」

「スカーレットコール!」

「レイア?」

「炎はダメだけど、風で倒せそう?」

「うん!」


 ピーちゃんはそう言うと、ハドックの肩まで戻る。ハドックもこの状況を察してか、全身に雷をまとわせると、ピーちゃんも小さな体に風をまとう。


「二人ともお願い!」


 私の声を聞くと、二人はオークたちに向かっていった。ハドックは雷をまとった斧を素早く振り抜き、オークの片腕を飛ばす。そして、残りの二体からの攻撃を斧で防いだものの、その力強さにハドックは弾き出された。


「ぐっ…!」


 ピーちゃんはハドックが攻撃を受ける前に肩から飛び立ち、空中で静止していた。ハドックが弾き出されると、ピーちゃんは複数の風の刃を三体のオークに飛ばす。その刃は止まることなく、オークを攻撃し続けている。ピーちゃんの途切れることのない攻撃に、オークたちは腕を交差して防ぐことで精一杯。そして弾き出されたハドックが体勢を立て直すと、ピーちゃんに合図を送る。


「ピーちゃん殿!」


 その合図と同時にピーちゃんは攻撃をやめ、オークたちから距離を取る。そこへハドックが一気に斧を振り抜いていく。一本、また一本とオークの腕を飛ばす。全ての腕を飛ばすと、ピーちゃんが大きな風の刃を三体にぶつける。その刹那、ハドックが雷の刃を三体に飛ばすと、三体のオークは完全に沈黙した。


「サーチアイ!」


 私はダンジョン内に他のモンスターが存在しないか確かめるために索敵をした。ダンジョン内での索敵は外の気配も感知する。索敵の結果、ダンジョン周辺では感知できない。そして、すぐそばで感知した気配は一つだけ。


「これがコアを守ってるモンスターかな?」

「倒す!」

「倒せるかな?」

「相手次第になりますが、魔力は問題ないかと」


 私がハドックに触れると、七つの珠が光る。支援魔法のおかげか、私の予想よりハドックの魔力は残っていた。私たちは先へ進むことを決めたが無理はしない。ピーちゃんとハドックに支援魔法がかかっている今なら倒せる、と私は判断した。


──ダメそうなら逃げるか、追加で支援すれば…。


 私たちは最奥までたどり着いた。最奥は広い空間になっていて、中央では赤い小山が規則正しく上下している。


「寝てる?」


 中央で寝ているのはオークではなかった。オークよりももっと大きな何か。出現するのはゴブリンとオークのはずだったが、違うモンスターもいた。赤い小山の上下に合わせて、奥の壁に扉のようなものが見え隠れする。


──あの扉の奥にコアがあるのかなぁ?でも寝てるモンスターを倒さないと…。


「寝てるけど攻撃しちゃう?」

「レイア様、敵に情けは不要です」

「そうだよね。じゃあピーちゃんとハドックに任せるよ!」

「うん!」

「はっ!」


 二人は返事をすると、勢いよく飛び出していく。ハドックはその勢いのまま、斧に雷をまとわせ斬りつける。しかし、ハドックの一撃は浅い傷を付けるに留まった。


「これも硬いか」


 寝ていた大きなモンスターは今の一撃で目を覚ました。のそのそと起き上がると、空中の高いところで静止していたピーちゃんに届くほど背が伸び、頭には短い木の幹のようなものが付いていた。その巨体に、後ろにいる私たちは身構える。


「大きすぎ…」

「レイア、私を地面に。タマモはレイアを守って」

「わかりました」


 パーラを地面に置くと、触手を使い、私とタマモの前に出て、タマモは明かりを維持しながら私の足元で身構える。私たちが後ろで準備を終えた時、大きなモンスターはハドックに向かって大きな棍棒を振り下ろした。


 その巨体から振り下ろされた重い一撃を、ハドックは斧の面で受け止める。重い一撃を受け止めたハドックの足元は、わずかに地面に埋まっていた。


「ハドック!」


 ハドックは私の声に返事をするかのように、斧で棍棒を押しのける。そして、雷をまとった斧で斬りつけていくものの、浅い傷を増やすに留まった。


「どいて!」


 モンスターが起き上がってから、さらに高い位置まで上がったピーちゃんから声がかかる。ピーちゃんの目の前には風で作った大きな玉があった。その玉の中には、無数の小さな風の刃が舞っているように見える。


 ピーちゃんの合図でハドックが下がると、大きな風の玉をモンスター目掛けて放つ。それがモンスターの腹に命中すると、当たったところから皮膚を抉り取っていった。モンスターの肉体が強靭すぎるのか貫通こそしなかったが、ピーちゃんの放った風の玉と同程度の穴が空いた。それを見たハドックが私のところまで戻る。


「レイア様、タマモ殿の光魔法であれば」

「え、でも…」

「いえ、脚の一本でも落とすことができれば」

「タマモ、できそう?」

「少し時間がかかるのと、明かりが…」

「明かりは私が引き継ぐわ」


 そういってパーラは自らを光らせる。パーラはタマモと場所を入れ替わるようにして、私の足元まで来る。タマモは光魔法での明かりをやめ、尻尾の先に光を集め直す。タマモが光を集めている間、大きなモンスターはピーちゃんとハドックに棍棒を向ける。ピーちゃんは華麗に棍棒を避け、ハドックは斧で受け止めていた。


「レイアさん!」

「二人とも避けて!」


 タマモの準備が整い、私は大声で二人に叫ぶ。その声を聞いたハドックは壁際まで下がり、ピーちゃんは天井ギリギリまで舞い上がって風を集め始めた。二人が離れたことを確認したタマモは、集めた光を一気に放出する。


 それはオクトパスリーダーを倒した時よりは小さな光線だったが、大きなモンスターの片脚の半分ほどを消し去っていった。それを見たハドックは一気に雷をまとい、青白い斧を大きく横へ振りかぶる。一瞬のうちに斧が青白くなるまで雷をまとわせた一撃は、タマモが光線を放った右脚を飛ばす。


 モンスターは片足を失い、満足に移動することができなくなった。しかし片腕で体を支えながら、ハドックに向けて何度も棍棒を振り下ろす。その重い一撃を斧で受け止めるたび、ハドックの足が地面に埋まっていった。


 足を飛ばした張本人であるハドックにモンスターの攻撃が集中している間、天井付近にいたピーちゃんは巨大な風の玉を生成していた。ピーちゃんの準備が整うと、モンスターの背中目掛けて巨大な風の玉を放つ。


 巨大な風の玉はモンスターの背中を抉り取りながら進み、ついには腹まで貫通。それは最初に開けた穴よりも大きな穴を開け、モンスターを沈黙させるには十分な威力を持っていた。大きなモンスターが完全に動かなくなったことを確認すると、ピーちゃんとハドックは私たちのところへ戻ってきた。


「みんな、お疲れ様」


 私はみんなに触れる。ピーちゃんは相変わらず魔力がほとんど減っていなかった。タマモは三つ、ハドックは四つ、パーラは八つ分の魔力が残っていた。みんなの魔力を確認しているとハドックが私の後ろまで移動し、進んできた道を凝視する。


「レイア様、新手かもしれません」

「え?でも後ろからだと冒険者?」


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