リータの双剣
「あやかさん、これって買い取ってもらえませんか?」
「ドワーフ国なら可能性があるかもしれません」
青いフェニックス事件からもうすぐ二年。私たちは依頼のついでに鍛冶都市フェクトールに立ち寄っている。無表情ながら新しい剣に胸を躍らせているリータを連れて。
水産都市アクアハーバーでの青トロール討伐後、リータは剣を新調。その時作った剣はまだまだ現役だが、さらに新しい剣をリータは注文した。
「新しい剣で模擬戦したい」
「レイア、お腹空いた」
ピーちゃんはリータの頭上から私を見下ろし、両翼を広げて空腹を訴える。リータはピーちゃんから羽根を授かった。ガイアからは「無暗に渡すな」と言われていたが、度重なる模擬戦を経て、お守りとしてピーちゃんが渡してしまった。
「キリさんにお願いをしたらご飯にしよっか」
「うん!」
私たちは鍛冶ギルドへ。ギルドに入るとギルドマスターの部屋へ行くように言われた。待ちきれないリータが部屋の扉をノックすると、アンビルの声で入室が許可される。
「来たか」
「来た」
「ギルドマスター、こんにちは」
「とりあえず座ってくれ」
私とリータはソファに座る。ピーちゃんはリータに抱きかかえられ、私はノココを抱きかかえる。みんなは私の足元やソファの後ろ。私たちの位置が決まると、アンビルは布でぐるぐる巻きにされた何かを持ってきた。
「これが頼まれていたものだ。鍛冶ギルドの総力を結集した剣だ、確認してくれ」
アンビルはソファの前にある低いテーブルの上に、布で巻かれた何かを置き、丁寧に布を取り外していった。現れたのは、リータの装いに合わせた漆黒の双剣。しかし、夜空に浮かぶ星々のように、漆黒の双剣には黄色の粒子が無数に散りばめられていた。それはケリュスの角を粉末にしたものと、リオンのタマゴの殻を粉末にしたものが混ざり合ったもの。
私があやかに買い取ってほしかったものは、リオンのタマゴの殻。パーラが収納していたものだが、宝石でも食べ物でもないものを捨てたかったという。そこであやかに相談したところ、硬すぎるリオンのタマゴの殻は、ケリュスの角のように粉末状であれば武器や防具に使用できる可能性があると言った。
「おお、レイアか。どうした?」
「あの…、これって買い取ってもらえませんか?」
タマゴの殻は、フェクトールの冒険者ギルドのギルドマスターであるフォージに買い取ってもらった。しかし買い取ってすぐにクレームの手紙が届いた。
「レイア!硬すぎて加工できん!」
「えっと…、これも粉にするんですよね?」
「そうだ。ジュエルレーンディアの角と同じように粉末の形でなければ加工できん」
「ピーちゃん、できそう?」
「ピー!」
ピーちゃんが風魔法で粉末にするとフォージは喜んだ。そして当然のように、タマゴの殻とケリュスの角を使って包丁を依頼。一週間後、依頼を受けたキリは呆れたように完成した包丁を取り出した。包丁はリータの剣のように漆黒ではないので黄色が映えるわけではないが、きらきらと輝いていた。その包丁を見たリータが剣の製作を依頼して、今に至る。
「きれいな剣ですね」
「うん」
リータは大金を支払って剣を受け取り、私たちはキリの工房へ。
「キリさん、こんにちは」
「今日はどうしたね?もう研ぐ必要があるのかい?」
「そうじゃなくて、ちょっとお願いしたいものがあるんです」
「普通の素材だろうね?」
キリは意地悪な笑顔でそう言った。私はキリに作ってほしいものを伝え、うずうずしているリータを連れてエルフ国へ。しっかりと関所を通り、翠樹都市シルバンの西門に降り立つ。
「待ってたぞ、リータ」
「負けない」
「お前がどれくらい強くなったか見てやろう」
模擬戦の相手はハドックやアカマサではなくノエル。リータは新しい剣を存分に振るうことのできる相手を前にして、さらに足取りが軽くなった。
「レイアさん、こんにちは」
「ステラさん、こんにちは。今日はありがとうございます」
「いえ、ノエルも楽しみにしていましたので」
ステラがニコニコしながら五重の防御膜を展開すると、二人は膜の内側に入っていった。しかし、リータがマジックバッグから星空のような双剣を出した瞬間、ノエルは驚いた。
「待て!なんだそれは!」
「新しい剣」
「ちょっと見せろ!」
「やだ」
リータは拒否しながら風をまとい、ノエルに奇襲を仕掛ける。ノエルはリータが風をまとった瞬間に自らの双剣を引き抜き、リータの攻撃に備えた。
「ステラさん、この模擬戦って大丈夫なんですか?」
「問題ありませんよ」
「レイア、お腹空いた」
「あ、そうだったね。ステラさんも食べますか?」
「いただきます」
私たちは平原に布を敷き、模擬戦を眺めながら昼食を取る。模擬戦の結果はノエルの圧勝だが、ノエルの双剣はわずかに刃こぼれを起こしていた。そして模擬戦終了後、ノエルはリータの双剣を両手に持って何度も振っていた。
「リータ、これはなんだ?」
「特別製」
「ノエルの剣が一度の戦闘で刃こぼれを起こすなんて珍しいですね」
「これは…」
私がリータの剣について説明をしながら、パーラに包丁を取り出してもらう。すると、ノエルは包丁にも興味を示し、ドワーフ国へ連れていけとせっつく。
「レイア!頼む!」
「わ、わかりました」
頭を下げて頼むノエルに負け、私たちは全員でドワーフ国へ戻り、ノエルとステラは鍛冶ギルドへ。数か月後、ノエルは完成した双剣でアカマサと模擬戦を行ったが、勝つことは叶わず。そして、私のところには面倒な依頼が増えるのであった。
「レイア、手紙よ」
「パーラ、ありがとう。えっと…、フェクトールのギルドマスターからだ。グリフォンエンペラーのタマゴの殻をたくさん取ってきてほしい…?」




