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7-4 嫉妬、愛情、鎮火 その5

 玲華の訳の分からない提案が終わり、ミゥと徹の情事?は、いったん終わりを告げた。

 エデンから戻り、事情聴取も終わった。公社の技師から目の敵にされるというトラブルはあったものの、おおむね問題のない状態で決着がついた。


 明日からは、カンパニー・ミゥの宅配業務も再開される。

 また、この事情聴取の件もあり日程が決まっていなかった、チャイによる孤児院の慰問も明日執り行われる。


 舞の提案もあり、ラッピングをした車でセントラルシティから孤児院までの道をパレードすることになった。

 使う車は舞の趣味で、ワーゲンのT1という小さいバスタイプのクラシックカーだ。落ち着いたレトロな車なのだが、財閥とアイドル事務所のロゴを入れ、さらにデフォルメしたチャイのキャラクターをあしらうという派手な出で立ちになった。


 宣伝効果は抜群だし、今回の宇宙船戦闘も新聞社やテレビ局が嗅ぎつけており、徐々に話題になり始めていた。


 前回の美談の立役者であるアンドロイドのミゥとチャイが搭乗していることも注目されていた。

 ミゥは見事な操船で敵を躱し、チャイは艦船内で歌を歌って他のクルーを勇気づけたという話が広がり始めていたのだ。


 ミゥが操船していたのは事実だが、実際にはチャイは歌など歌っていない。

まあ、誰がこんなネタをばら撒いているのかは、言うまでもないだろう。


 しかも、その歌は、その場でミゥのAIとチャイの感性が融合してできた音楽に、ミゥの開発者である徹が歌詞を付けたことになっていた。ひどい創作である。


 徹は舞から指示を受けて、ミゥ側の戦闘ログにこの歌の場面も追加していた。

 戦闘中に乗組員を鼓舞する歌であり、軽快なノリの中に命の危険とそれを乗り越える強さ、そしてミゥの可憐さやチャイの快活さ、そんな感動を誘う歌詞がついている。

 明日のパレードでは、この歌を流しながら道を走るということだった。


 もう、ミリオンヒット間違いなしだろう。

 こんなところでしっかりと商売を組んでくる舞は、本当にさすがである。徹は素直に称賛を送るのだった。


 明日のパレードで使用するワーゲンのT1は、パレードが終わった後、少しだけラッピングに手を加えて、カンパニー・ミゥの宅配車としても使う予定とのこと。

 だからこそのバスタイプなのだろうが、まあ抜け目がないというか・・・。


 当然、明日のパレードもミゥが運転する。


 宇宙空間、しかもギガスペースライン内の亜空間での戦闘から奇跡的に生き残ってコロニーに戻って来た立役者の2人が運転し、歌を流しながらチャイが手を振って孤児院に凱旋するのだ。注目度は当然高い。

 ミゥたちの実際の戦闘の話はまだそれほど話題になっているわけではないが、このパレードの注目度はすさまじい勢いで伸びていた。

 明日はメディアも来るだろうし、多くの路上の観客や応援も賑わいをみせるだろう。


 それを見込んで、本社には出勤していないが、カレンはてんやわんやで各界に調整をかけているのだろう。

 聞いていないが、徹は確信していた。でなければ、今ここにカレンもいて、きっと管を巻いているに違いないからだ。


 今回のワーゲンのT1は、徹は何もいじっていなかった。

 もちろん、ミゥは音源の提供もしていないし、徹は歌詞も書いていない。


 実際、どんなものに仕上がっているのか、当のチャイですら知っているかは怪しいだろう。

 チャイはアイドルだ。だから、指示に従ってうまくやるだろう。このパレードと孤児院の慰労訪問は、間違いなくチャイのアイドルとしての格を一段押し上げるはずだ。それがこれだけ話題に上り始めているのであればなおさらである。

 チャイは、これを見逃すような玉ではない。


 ミゥが運転手をするのであれば、明日の宅配便の配送は誰がするのだろうか・・・。

 鋭い人は、きっともうわかっているはず。


 そう、玲華である。

 そもそも社内での玲華の立場は、そのための補充要員なのだから。 


 徹の警護はどうなるのかって?

 そりゃ、パレードを引率するリムジンには舞が乗るのだから、その運転手は玲華の護衛としての師であり先輩でもあるアレンである。

 そのリムジンに乗れば、警護も万全というわけだった。


 その夜は、ミゥとの勉強は明日のパレードの話を題材にして、いろいろと勉強をするのだった。


 昨日の夜と違い、今日はミゥのすぐそばには徹がいた。

 もちろん徹は今日の夜は家には帰らず、本社の仮眠室で寝る予定である。


 それもあってか、ミゥは終始笑顔で徹との勉強に臨んでいた。

 徹がそばにいるというだけで、ミゥの表情はどこか柔らかく、時折うれしそうに視線を向けてくる。

 その仕草に、徹は胸の奥が少しだけ温かくなるのを感じていた。


 さすがに明日のパレードで流れることになっているチャイの歌については、事実とは違うことが気になっていたらしく、その意義を何度も質問されることになった。

 それに徹は、様々な回答をするのだった。


 ミゥが徹の回答を聞いて、自分なりに統合や整理をして導き出した答えは、次の2つだった。


 1つ目が、


『戦闘行為はいかなる場合でも非難をされるケースがあるため、話のすり替えを行うための美談を入れる』


 これは徹が社会的立場の保全という観点で説明したものを整理したものだった。


 もう1つが、


『舞は、すべての事柄を金銭に換算できるようにビジネスとして再構築する性格である』


 の2つだった。

 そして、こちらはミゥが明日の予定を聞いて、舞の平素の行動原理と合わせて導き出したもののようだ。


 これを聞いた徹は、ミゥの中の舞の位置づけがかなり気になったが、間違っていないので褒めて頷くのだった。

 ただ、舞が聞いたらどんな顔をするだろうかと想像して、徹は思わず苦笑した。


 舞は知らないところで、なぜかディスられており、だからこそ舞は自室でくしゃみを何回も繰り返すことになったのだが、徹はもちろん知らない。


 そして、夜は更けていった。


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