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勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~(連載版)  作者: さいらす


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エピソード2-1

※ 短編として掲載したものを分割して連載版に変更したものです。

※『記憶喪失勇者』のスピンオフ短編です。本編未読でもお読みいただけます。

※ 本編の800年前に活躍した勇者レギウスとその従者の物語です。

 街道の轍を拾うたび、乗合馬車はぎしぎしと文句を言った。


 レギウスは膝の上の包みを抱え直した。布の中身は、旅の相棒の小さな魔導人形だ。


 向かいの席では、従者が腕を組んで眠っている。絹糸のような金髪が、揺れるたびに肩の上で光った。


 相席の娘がふたり。さっきからちらちらとこちらを見ては、小声でなにかを言い合っている。視線はぜんぶ、眠る男の顔に注がれていた。


(どこへ行っても、これだ)


「……お嬢。そりゃあ、小金貨でさ……」


 眠ったままの従者の口から、寝言がこぼれた。相席の娘たちが、そろって首をかしげる。


(……夢のなかでまで、あの日のことを言わないでほしい)


 王都を発って、十日あまり。


 車輪の音を数えるうちに、レギウスは、この厄介な“拾いもの”をした日のことを、思い出していた。


◇


「レギウス。おまえの名前は、トロワールの英雄からもらった勇ましくて、縁起のいい名前なのだ。恥ずかしがることなどなにもない」


 物心ついたばかりの娘に、父はそう言って木剣を握らせた。


 英雄公レギウス――。


 トロワール生まれの平民の青年で、ドワンテロの勇者ウルリックに三人いた従者のひとり。剣技に優れ、魔王討伐の功により、トロワールの姫を娶ったといわれている。


 この国の勇者は、金色の髪と紅い瞳を持つ者でなければならない。四百年に一度、王宮に眠る勇者の剣と盾が、次の主をそのなかから選ぶのだ。


 初代勇者ガリウスの血を引く大公国は、みっつ。ユヌリスは八百年前に勇者シリウスを、ドワンテロは四百年前に勇者ウルリックを出した。


 まだ勇者を出したことがないのは、トロワールだけ。


 だから、金髪紅眼の娘が生まれたとき、父がなにを夢見たかは、聞くまでもない。


 それから十年、英雄の名をつけられた娘は剣を振りつづけた。


 結果から言えば、戦神マレスは彼女に微笑まなかった。才能は影も形もなく、運動神経は絶望的で、剣術士ランクは1のまま。


 代わりに伸びたのは、同時に習わされた神聖術だった。十五歳でランク5。神童と教師たちはもてはやした。


 もっとも、本人が一番夢中だったのは、剣でも神聖術でもない。


「またおまえか、レギウス」


 叔父のベリックは、工房の戸口で天を仰いだ。油の匂いのする作業台で、レギウスは魔導人形の膝関節と格闘していた。


「兄上に知れたら、また雷が落ちるぞ」


「知られなければ落ちません。それより叔父上、この歯車、ひとまわり小さいのに替えたいんですけど」


「……貸してみなさい」


 なんだかんだで、教えてくれる叔父なのだった。


 魔導人形の制作は、はるか昔、トロワールの大公女がこの地に遺したものだという。よりにもよって勇者候補の娘が、魔王討伐には役立たないその技術に骨まで浸かっているのだから、父の頭痛の種は尽きなかったはずだ。


 やがて、勇者選定の儀式が近づいてきた。


 筆頭候補は、ユヌリス大公家のシリウス。十九歳。剣術士ランク7の天才で、もちろん金髪紅眼。期待を込めて、自分の家が出した勇者の名を与えられた男だった。


 次の勇者はシリウスさまで決まりだ――誰もがそう言っていたし、レギウスもそう思っていた。


 トロワールは娘に従者の名前をつけたから、今回も従者止まりに違いない。


 そんな笑い話が、社交の席をひと巡りしたらしい。父は歯噛みし、それでも娘の剣については、とうにあきらめていた。


 好都合、とレギウスはひそかに思っていた。勇者の従者なら、人形の道具箱を抱えて旅ができる。回復役として、この神聖術も役に立つ。自己治癒力を上げる修練には、これまで以上に身が入った。


 その矢先だった。


 儀式を数日後に控えて、シリウスが死んだ。


 いつものように数人を同時に相手取っての稽古中、油断していたのか、格下の放った突きを払い損ねたのだという。切っ先は首筋に入り、神聖術は間に合わず、剣の天才はこの世を去った。


 父は、狂喜した。


 儀式の日、レギウスは騎士服で王の前に立った。貴族の娘なら、玉座の前ではドレスで着飾るものなのだろう。あいにく、ドレスというものを一度も着たことがなかった。


 祭壇の剣と盾は、拍子抜けするほどあっさりと、白い光を放った。


 こうして、剣も振れない十五の娘が、四代目の勇者になった。


「勇者というのはな、存外、自分では戦わんものだ」


 旅支度をするレギウスに、叔父は言った。


「八百年前の魔王討伐も、追いつめたのは従者のセンチュリオで、勇者シリウスはとどめの一太刀と伝わっている。だからおまえは、国中を回って、おまえの代わりに戦える強者を見つけなさい。魔王が出てくるまでに集められれば、おまえの勝ちだ」


 この絶望的な状況を覆すには、それしかないとレギウスは思った。


 四百年に一度、魔王は魔界から魔族を率いてあらわれる。


 それは、もうすぐかもしれない。


(魔王があらわれる前に、強い従者たちを集めないと……)


 従者を探す旅は、そうして始まった。


「勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~」2-1を読んでいただき、本当にありがとうございます!!


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ブレイジールのイメージ画像をChatGPTに描いてもらいました!


挿絵(By みてみん)


※本編へのリンクはあとがきの下にあります!




※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。

・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿

・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック

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本編も連載中です! 四百年前――魔王を倒したまま姿を消し、伝説となった勇者がいた。人々は彼を"帰らずの勇者"と呼んだ。
『記憶喪失勇者』はこちら
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