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勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~(連載版)  作者: さいらす


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エピソード1-2

 村にひとつだけの宿に部屋を取ると、ブレイジールが戻ってきた。


「いい部屋じゃありやせんか」


「取ったのは僕だけどね。それもひとりで」


 レギウスは寝台に腰かけ、膝の上で小さな魔導人形を調整していた。人形が着ている真紅のドレスは、旅の間に縫ってやったものだ。


 ブレイジールが、手元を覗き込んでくる。


「村娘の名前を五人覚えやしたよ」


「本当に自由だね、おまえは」


「そのうちのひとりが『勇者さまは、お人形みたいにお綺麗』って言ってやした」


「人形は、おまえの顔のほうでしょ」


「お嬢は今夜も、人形に可愛い服をお着せなさる」


「……悪い?」


「いいえ、ちっとも。ただ」


 金色に戻った目が、いたずらっぽく笑った。


「お嬢が着たほうが、よっぽど似合うでしょうにねえ」


「勇者がドレスを着てどうするの」


「勇者だって、着たいもんを着りゃあいいんでさ」


「……着る機会なんて、ないよ」


 人形の髪を直すふりをして、そっぽを向いた。生まれたときから、勇者候補として、男の子のように育てられたレギウスは、ドレスを着たことすらなかった。


 ブレイジールはそれ以上からかわず、窓の外へ目をやった。


「――で、お嬢。あの村長、どうご覧になりやした」


「歩き方が、変だった」


 昼間の違和感の正体には、もう気づいていた。


「できそこないの魔導人形みたいに、ぎこちなかった。物心つく前から人形をいじってきた僕が言うんだから、間違いない。……それに、ミルカの話」


「へえ。さすがはお嬢でさ」


 ブレイジールの声から、軽さが消えた。


「あの村長――魔族ですぜ」


 人形をいじる手が、止まった。


「下級の魔族のなかにゃ、人に化けるのだけが取り柄って連中がおりやしてね。化けて、入り込んで――食うんでさ」


「……!?」


 レギウスは、唇を噛んだ。下級の魔族は、人を食べる。……知識で知っているのと、実際にそれが目の前で起こっているのとでは、まるで違った。


「お嬢。朝一番で、この村を発ちやしょう」


「は?」


「こっちが気づいたことにゃ、向こうも気づいてやす。幸い、あっしは気配を消してやすから、正体まではバレちゃいねえでしょうが、長居は災いのもとでさ」


「魔族がいるってわかってて、村を見捨てて逃げろって言うの? ミルカだっているんだよ。あいつがまたお腹を空かせたら、次は誰?」


「村の百人の生命なんかより、お嬢のかすり傷ひとつのほうが、あっしにとっちゃあ重いんですぜ?」


 悪びれもせず、ブレイジールは肩をすくめた。


「だいたい、あっしは腕っぷしのほうはからっきしでやしてね。得意なのは、結界を張ることだけ。守って、隠れて、嵐が過ぎるのを待つ。争いの嫌いな、へなちょこ魔族なんでさ。鬼退治を期待されちゃあ困りやす」


「嘘だ。おまえ、本当は強いでしょ」


「さあ、どうでやすかねえ」


(出た。すぐ、はぐらかす)


(でも……もう、決めた)


 レギウスは人形を置いて、従者にまっすぐ向き直った。


「命令だよ。あの村長の正体を暴いて、村を助ける。付き合って」


「へえへえ……」


 ブレイジールは、降参するように両手を上げた。


「それが、あっしのお嬢でやしたね。なら、まずは今夜、あっしがようすを見てきやしょう」


「見てくるって、どうやって?」


 問いの途中で、従者の姿が、ふわりと縮んだ。


 寝台の上に、黒っぽい金色と白っぽい金色の、ふわふわの長毛の猫が座っていた。


「……何度見ても、その可愛さはずるいと思う」


「にゃあ」


 わざとらしくひと声鳴いて、猫は窓から夜の村へ滑り出ていった。


◇


 レギウスは眠れないまま、寝台の上で人形のドレスの裾を何度も直した。


(まさか猫のまま、娘さんの家へ寄り道してないよね)


 猫が戻ったのは、真夜中だった。


 窓枠から音もなく降り、人の姿に戻る。その顔に、いつもの軽さはない。


「ミルカ嬢ちゃんの言うとおりでさ。あの家、血の匂いがしみついてやす。……もっとも、魔族のあっしの鼻でなけりゃわからねえほどの、うっすい匂いでやすがね」


「……そう」


 人間には確かめようのない証拠。それでも疑いは確信に変わった。


(さて。どうやって村長の正体を暴く?)


 考えはじめた、そのときだった。


 窓の外に、いくつもの松明の火が揺れた。足音と押し殺したざわめき。宿の戸が、乱暴に叩かれた。


「勇者さま! 夜分に相すみませぬ! ……そちらの、お連れの方に用があるんですじゃ」


 村長の声だった。


 戸を開けると、松明を掲げた男たちが宿を囲んでいた。手には縄と、鎌や斧。クワを持った者もいる。先頭の村長が、悲しげに眉を寄せてみせた。


「わしは、この目で見てしもうたのじゃ。そちらのお方の目が……闇のなかで、獣のように、金色に光っておるのを」


(嘘だ。ブレイジールが猫に変わるところは見られてない……先に、仕掛けてきた)


「目の色なら、ご覧のとおり青ですよ。見間違いでしょう」


 レギウスが言うと、村長は大げさに首を振った。


「勇者さま。魔族というのは、人の目を欺く生き物ですのじゃ。目の色のひとつやふたつ、いくらでも変えられますのじゃ」


 でも、子供たちが消えたのは僕たちが来る前じゃないか――そう言いかけて、レギウスは村人たちの表情に気づいた。松明に照らされた顔、顔、顔。どれも、村長の言葉をすっかり信じ切っている。


 ブレイジールが本当に魔族かどうかは関係なかった。村人たちは、ただ、村のなかに魔族がいるという恐怖を早く取り除いて、安心したいだけなのだ。


(どうする。どう言えば……)


「――お嬢」


 迷う主の隣で、ブレイジールが静かに前へ出た。恐ろしいほど整った顔が、レギウスだけを見て、微笑んだ。


(なに、その笑顔。なんの合図……?)


 止める間もなかった。村人たちの前で、ブレイジールは目をつぶった。


 次に開かれた目は、松明の明かりの下で、鮮やかな金色に輝いていた。


「勇者レギウス ~最弱勇者と最強従者~」1-2を読んでいただき、本当にありがとうございます!!


元々、短編として一話完結で書いたのですが、長いので二話に分割しました。一度、読んだのにもう一度、見てしまった方、申し訳ございません。


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※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。

・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿

・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック

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本編も連載中です! 四百年前――魔王を倒したまま姿を消し、伝説となった勇者がいた。人々は彼を"帰らずの勇者"と呼んだ。
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