↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

ch.7 侵入開始

 午前十時五十五分


「に、二回で終わりかな……?」


 ベルタはそう言いながら、ゆっくり起き上がると、コンソールの前に座り直した。

「シェリ……。大丈夫?」


 シェリは少しぼんやりした顔で尋ねた。

「艦長のキーがあったら、何ができるの?」

「VLS、機銃の制御。あとは操船、友軍とのデータ連携、通信撹乱、普通のネットだってなんだって……」

「なんでもできるじゃん……」


 放心した表情のシェリにベルタが初めて笑顔を向けた。

「でも、今はシェリの方が頼れるよ」


 シェリも微かな笑みを浮かべた。

「マシンガンとかショットガンは苦手だけどね」


 ベルタはコンソールを向き直りながら、話す。

「やっぱり、『明確に自分を狙っている攻撃』じゃないと――」

「そ。適当にばらまかれたら無理。流れ弾とか跳弾も無理。下手くその無駄撃ちも苦手」


 シェリが落としていたナイフを拾いながらまとめると、二人は機嫌良く目を合わせた。


「あなたがそれを作ったエンジニアなんだね。だからあたしのことも何でも知ってる」

「あたしに覗けない情報なんて、ほぼ無いからね。って、あれ!?」

「どうしたの?」


 急に両手を突いてコンソールを見始めたベルタを見て、シェリも覗く。

 船体後方を映した映像に、ボートでやってきた二人の人影が取り付き、何かをしている。


「なんか。特殊部隊にしては服装が……カジュアル過ぎるというか……」

「エザキ……」

「え? 旦那……じゃなくて……」

「エザキとエド!」

「T室から入るんだわ」

「何それ?」

「このサーバーのログを見るためのテレコム室。外と通じるハッチがあるの」



 同時刻


「梯子ってこれかな?」

「引っ張れば降りてくるって言ってたぞ? おい落ちるなよ、エザキ」


 エドはエザキを不安そうに見守るが、エザキは意にも介さず、岸壁とボートで体を支えながら、無理矢理ラダーらしきものを引っ張り出そうとする。


 だが、指がギリギリ届かない。

 見かねたエドが交代を申し出る。


「俺の方が背高いからさ、ちょっと代わろうぜ」


 エドがそれまでのエザキと同じ体勢で手を伸ばし、段差に手を掛けると、それはあっけなく動いた。


「開きそうだ」

「大丈夫?」

「ほれ。どうよ?」


 無事に降りたラダーを見て、エザキを振り返ると、エザキはすでに次の仕事に取りかかっていた。

 エザキは舫い縄を丸くまとめると肩に掛け、手でエドに登るように合図した。


 エドが背負っていたライフルと、ポケットのマガジンを確認し、昇り始める。

 ラダーを登り切ると、ハッチとハンドルが見えたので回すが、びくともしない。


「あれ?」

 手こずるエドを下で見守るエザキがモヤ付いた顔で見守る。



 同時刻


「ハッチとかって開けられるんじゃないの?」

「やってるって。パスワードとか色々あるのあ、通路の照明もいじれるかな?」

「早くして」

 煙たそうな顔で操作を急ぐベルタを、シェリがモヤ付いた顔で見守る。



 午前十一時五分


「エド!」

「うおっ!?」


 突然、ハッチが外側に開き始め、ハンドルに捕まっていたエドが振り落とされそうになる。ハッチは横方向に開閉し、外側のハンドルに掴まっていたエドは宙づりとなった。


「いてて! 無理だこれ!」


 エドは下を確かめると、手を離してボートに飛び降りた。

 ボートが転覆ギリギリまで傾き、水が激しく流れ込む。


「ちょっと!」


 エザキが情けない声を上げるのを無視して、エドは中腰でボートのバランスを取り直し、それを見たエザキも慌てて同じようにする。


 船が落ち着くとエドは、ホッとした顔のエザキを見てぽつりと言った。

「中腰ブラザーズ……」

「え?」

「なんでもない。開いたぜ?」


 エザキは再度、縄を肩に掛けるとラダーを昇る。エドもそれに続く。

 二人はハッチの先の通路に入ると、舫い縄を通路脇の配管に結びつけた。


 舫い縄を結び終えると、エドはハッチを閉めた。


「開けっぱなしで時間がたつとアラートが鳴るって話だったよな」

「エド、この先がカプラーの部屋だっけ?」

「T室ってやつか」


 エザキが水密ドアのハンドルを動かしてドアを開けると、即座に銃声が聞こえたが、エザキはかまわず室内に飛び込んだ。


 エドは息を止め、エザキが床を転がって攻撃をかわす間に、標的に照準を合わせた。

 サイト上に男の青い目を瞬時に捉えると、銃口を少し下げて一発。


 弾丸は男の手に当たった後、後方の機器類に当たり、男は銃を落として自分の左手を見ながら叫び出した。


「ひあぁぁ! 指がぁぁ!」


 エザキが悲鳴を上げる男の髪の毛を掴むと、エドはその頭をライフルの台尻で何度も繰り返し殴った。

 男が静かになると、二人はそのまま男を後部ハッチから海へ投げ落とした。


「ごめんね……」

「気の毒だけど、騒がれちゃ困るからな」


 エドの言葉にただ神妙な面持ちのエザキ。

 そして二人は艦内へ戻った。


 T室に戻って改めて見ると、その壁には機械とデータ入出力ポートが模様のように並んでいる。弾丸が当たって空いた穴から細い煙の筋が昇っていた。


「機械大丈夫かな?」


 エザキが少し心配そうに言うが、エドは気にしない。


「行こうぜ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。