↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第2話 失われた『幸せ』な日々(2)

 フルーラとシリウスは、また王妃に内緒でこっそり王宮を抜け出していた。


「フルーラ様、いいのですか? 王妃様に内緒で」

「いいのよ! すぐそこのキリアン子爵邸までだし」


 坂道を駆け下りていくフルーラにシリウスは尋ねる。


「何しに行かれるのですか?」

「お父様、今日誕生日なの。だから、キリアン子爵からワインを買わせてもらうの」


 その言葉にシリウスの心は温かくなる。

 少女の思いやりに触れて、彼は言う。


「そうですか。では、お供します」

「ええ!」


 元気のいいフルーラの返事が響いた。


 そして、キリアン子爵邸から戻る時、なぜか夕方なのに王宮のほうが明るいことに二人は気づく。


「今日はやけに灯りが強いような……」


 フルーラは王宮へ続く門に向かおうとする。

 しかし、シリウスはその「異変」に気づいた。


「まさか……!」


 彼が異変に気づいた瞬間、城門のほうから声があがる。


「いたぞ! フルーラ王女だ!」

「え……?」


 武装した兵たちがわらわらと集まってくる。


「どういう、こと……?」


 状況が呑み込めないフルーラはその場に立ち尽くした。

 そんな彼女の手を強く引き、シリウスが叫ぶ。


「フルーラ様! まずいです、こちらへ!」


 フルーラの手を引いて走るが、このままでは追いつかれてしまう。

 シリウスは半年前の傷が痛み、顔を一瞬歪めたが、構わずフルーラを抱き上げた。

 そして、フルーラを抱えたまま人間とは思えないほどの速さで走る。


 あまりの速度にフルーラは驚く。

 シリウスは追手をちらりと見て追いつかれると感じると、フルーラに声をかける。


「フルーラ様! 息を止めてください」

「え!?」

「少しだけ我慢してください」


 そう言うと、シリウスは崖から川へ飛び込んだ。

 冷たい水が彼らの服に侵入していき、どんどん深くへ沈んでいく。


「この高さからじゃ生きていないだろう」


 川に飛び込んだ二人を見て、追手の武装兵は呟いた。



 フルーラとシリウスが川からようやく上がってみたのは、焼け落ちた王城だった。


「お父様っ! お母様っ!」


 叫ぶフルーラを必死に抱き留めるが、彼の腕を振り切って王城へ走っていった。


(そんな……うそよ……うそよ……!)


 一縷の望みをかけて走ったフルーラを待ち受けていたのは、絶望だった。

 王城は瓦礫の山になっており、メイスティア王家の旗や王冠が落ちているではないか。


「どうして……」

「先程の追手は恐らく反乱軍だったのでしょう。かなりの数に囲まれていましたから、恐らく国王陛下と王妃様は……」


 シリウスの言葉はフルーラの耳に届いていない。

 フルーラは焼け跡の中にあった一枚の絵画を抱きしめる。

 その画には家族が描かれていた。


「うわあああああああああ!!!!!」


 フルーラの傍には、国王と王妃が寄り添うように倒れている亡骸。

 二人の手には結婚指輪だけが光っていた。


 フルーラはシリウスのほうへ振り返らず、尋ねる。


「シリウス、私はどうすればいい?」


 そう尋ねるフルーラに、シリウスは言う。


「『悪魔』に契約を持ちかければいい。その『悪魔』はあなたの傍で共に悲しみを抱えつつ、あなたの願いを叶えるでしょう」


 その言葉にフルーラはハッとして振り返った。

 シリウスの瞳はそれまでと違い、赤く光っている。


「シリウス、あなたまさか……」

「さあ、あなたはどうされますか?」


 シリウスの言葉を聞いて、フルーラは下を向く。

 そうして、顔を上げると、月に手を伸ばして掴み取ろうとした。

 その手を降ろして胸元を掴んで、願いを込めるように彼に言う。


「シリウス、私の執事として永遠に傍にいて。そして、私のこの願いを叶えてちょうだい」


 彼は少女の前に跪き、誓う。


「仰せのままに、お嬢様」


(絶対に、お父様とお母様……そしてみんなを苦しめた者たちに復讐してあげる)


 二人は静かにその場を去った。




*****



 時が経ち、フルーラは18歳となった。


 彼女はキリアン子爵邸の自室であの日拾った家族の絵を見る。

 そして、その前に置いてあった両親二人の結婚指輪をかけたネックレスを首にかけた。


「お嬢様、いよいよですね」

「ええ」


 フルーラはバーナー子爵令息からの手紙を手に、不敵な笑みを浮かべる。



「さあ、復讐の始まりよ」

第1、2話を読んでいただき、ありがとうございます!

悪魔の執事との復讐物語です!復讐と溺愛に揺れつつ…というお話になります!

気になる方、興味を持ってくださった方はよかったら、ブクマや評価などしていただけると大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。