第二三話 ビジョン再び
今晩は。
投稿です。
(ち、父上、め、眼が離せません、心の臓が早鐘を打ち、まるで我がことのように……父上?)
口元に手をあて、こちらを真っ赤なお顔でガン見している滝夜叉姫さま。
(はっ!?い、いかん!わしも魅入ってしまった!なんとも危うくも気高い抱擁、まるで星の恋、牽と織のようではないか)
悲しそうな白鳥さんの目。
いや悲しい目だ、泣いているし。
ここで俺は躊躇った。
躊躇したのだ。
(俺は白鳥さんに惹かれる。でもこの感情はエルフの感情で、俺の感情ではないのでは?白鳥さんはどうだろう?俺に対して愛情を示してくれるけど、その感情は前世の『姫』感情で白鳥さんの感情ではないのでは?)
(トリは何やら勘違いしているようだな?)
(何をです?父上?)
パキッ!
(え?父上?)
「!?」
門王さまを奉っている大きな鳥居から、音がした。
小さな音だけど、その音だけで充分!
俺の意識はブレるほど揺さぶられた!
目眩と同時に世界が広がる!
またビジョンだ!
今度は何を見せようと?
夜?
ピン!
直感!俺が目覚めた夜!?
「はぁ」
白鳥さんの溜息?
「どげんしたとね?白鳥さん、トリのヤツ、目覚めたばい」
白鳥さんに歩み寄るオトネ。
「…オトネくんかぁ」
「?……おっじゃいかんとね?」
「トイレ友達が欲しい」
「は?」
「ふふっでは私が」
あ、鈴木さん!
闇の中から現われる、杖をついたお婆さんが一人。
「はぁ、嫉妬するよ白鳥さん!」
あ、口調があの頃の鈴木さんだ!
「え?」
この二人、話し出すと時間が戻るらしい。
そう、あの頃の二人になるのだ。
「嫉妬?」
「そう、私はもうお婆ちゃん、球磨本への旅にも参加出来ないわ」
「そ、それは……」
「それで?なにか悩み事?これでもとんでもない苦労をしてきたのよ?聞いてあげるわよ?この長老さまが!エッヘン!」
「鈴木さんの大変さに比べたら……」
「それでも悩みでしょう?」
「……身長、体重だけではなく、年齢も上回ってしまった」
「ああ、トリくんかぁ」
「なんね、そげんこつね」
「こら!オトネくん!白鳥さんにとっては譲れないことなのよ!」
「そぎゃんね、おっには分からん」
「小さいときは、トリくんが上だったのに」
「え?いつの話し?」
「保育園だったかな?幼稚園だったかな?」
「そのころから?」
「小学生?とにかく小さかった頃」
……いつの話しだ?すまん、白鳥さん、俺憶えていない。
いや、それ俺か?
「私が怪我したとき、多分手だった、薬指。ここを紙で切ったの」
あ、あの痛いヤツだ!
「「ほうほう」」
器用にハモるオトネと鈴木さん。
「それでビックリして、痛くて泣いていたら、トリくんが『ばんこうそう、ばんこうそう』って叫びながら先生を呼びに行ったの」
「「ほうほう、それで?」」
「トリくん、途中の階段で転んで怪我して」
「「は?」」
「救急車で運ばれたんだけど」
「「は?」」
何やってんだ!?俺!?
「それでも、私の『ばんこうそう』が先だって言ったらしくて」
「「は?」」
「トリくん、忘れていると思うけど、肩に三針縫った痕があるはず」
!?
確かに痕はある!でもこれは!?
「はぁあああ!?よ、よく憶えているわね?鳥庭くんは知っているの!?」
だよね、鈴木さん。
すまん、俺は憶えていない、それホントに俺か?痕はあるけど?
「多分、憶えていないと思う。あれ、トリくんだと思うんだけどだんだん記憶が曖昧になって……それも悲しくて……」
次回サブタイトルは未定です。
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