第一〇話 お芝居もある
今晩は。
投稿です。
「以上、戦士陽野と戦士本多の悲恋、エルフ様の前で披露できたことを嬉しく思います」
悲恋かぁ。
……お前ら……みどり、ひかり……陽野に本多さん……俺を、俺達を置いてどこに行ったんだよ!
俺にとっては昨日のことだぜ、目が覚めて起きたら……
ああ、なんかこんな話しの昔話、あったよな?
そう、浦島太郎だ。
玉手箱を開けたら、歳を一気にとるんだ。
乙姫様が、『歳』を玉手箱に封印してくれていたのに、あいつは開けてしまった。
俺は周りを見る。
オトネ、白鳥さん、老いた鈴木さんと満岡。
この世界で、生きていくしかないんだな。
「心打つ口伝、ありがとうございます。よくぞ残してくれました、心から礼をいいます」
俺は深々と頭を下げた。
……!……
……エルフ様の言葉だ……
……我らに礼を……
……我らの先祖と共に、異界の悪鬼を討った英雄……
「エルフ様、私達こそありがとうございます。今こうしているのは、エルフさま達が戦ってくれたお陰。私達はオトネ様、白鳥様、エルフ様には特別な思い入れがあります……」
「ありがとう、でも俺は戦って負けてしまった。残ったひかりや緑、陽野や本多さんの苦労はとんでもなかったはずだ、今があるのは、彼らのお陰だよ」
「みな、必死に頑張ったけん今があっとよ……」
「ん?なんだいオトネ?」
「実は芝居もあるとよ」
「え?」
「毎年一回、街をあげての一大イベントたい。ひかりや緑が始めたらしか」
「……どんな芝居だ?」
ひかり?みどり?俺はイヤな予感しかしない。
「タコ足との戦いから始まり、ひかりと緑が大地に帰るまでの一幕たい」
「……キャスティングは?」
「女若衆で一番胸のデカいのがひかりの役たい」
「……(ひかりいいいいいっ!)」
「んで、男若衆で一番背か高いのが緑役」
「……(みどりいいいいいっ!)」
「ほっで……」
「わかったよ、一番背が低いのが俺の役だろ?」
「そぎゃんたい、ようわかったね?」
あいつらっ!
ああ、アイツらの笑っている顔が、一瞬見えた気がした。
俺は目の前にある石に手を合せ、呟いた。
「やってくれたな、ひかり、みどり!一緒に笑いたかったよ……ぐすっ……」
「うっ……うっ……」
白鳥さんの嗚咽が聞こえてきた。
次回サブタイトルは 第一一話 泣いてばかりもいられない の予定です。
毎回ご愛読ありがとうございます。




