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破滅世界の俺、エルフ。(2025.12)  作者: MAYAKO
第一章 日常

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第七二話 番外編 博物館の竜 後編     

投稿です。


 少年は小学生高学年になり、中学生になり、高校生になった。

 日常生活には影響はないと医者は言っていたが、少年は信じていなかった。


 時々、体中を走る違和感。

 そう、何かが走るのだ。


「パパさんは30過ぎまで頑張ったけど、俺はどうかなぁ」


 目の前にはアンキロサウルス。


「俺、明日から修学旅行なんだ、行き先は花の都。母さんを一人置いていくのは心配だけど、なんかあったら皆で助けてくれよな?」


 少年にとって最早、太古の化石達は家族であった。

 そして感じる視線。

 少年は確信している。

 こいつらは動かないだけだ、生きている。

 骨だけの存在だけど、黙して皆を見守っているんだ。


 皆の憧れ、博物館の竜。


 そして運命の日が来る。


 その日、お母さんは一人博物館を訪れた。

 何年振りであろうか?


「あのころから……そう、今もあなたにちょっとだけ嫉妬してるの、アンキロちゃん。あなたまるで彼女なのよ!息子の彼女に嫉妬する母親、変かしら?」


 でもこの化石達のどこがいいのかしら?

 やはり、怖いだけなのだが。

 骨だし。

 まったく良さがわからん!


「!?」


 激しい目眩に、倒れ込む母親。


 ……地震か……

 ……最近多いなぁ……

 ……停電とかさぁ……

 ……おい、これは!?……


 ドオオオオオオオオオオンッ!


 外からもの凄い音が響いてきた。

 それはスターダストの落ちる音。


 照明が落ち、辺りに悲鳴が響いた。


 ゴブリンが館内に雪崩れ込んできたのだ!


 ……なんだこいつらは!?……

 ……逃げろ!……

 ……どこへ!?……

 ……ぎゃあっ!……


 悲鳴が館内に響き渡る!緑色の大小様々なゴブリンどもが、入場者を襲い始めたのだ!

 勇敢に戦った者もいるが、ゴブリンどもの数が多すぎである!

 怪我をし、倒れていく大人達。

 皆、子どもかばい、血を流していく。


 ……お父さん!……

 ……どうしよう!……

 ……わーん……


 その母親も、襲われている子どもを抱きしめ、ゴブリンの爪に裂かれた。


 薄れゆく意識の中で、アンキロザウルスに願った。


 ……皆をたすけて……


 子ども達は祈った。


 ……チラノ!彼奴らをやっつけて!……


 巨大な龍が動いた!


 ……祈りの声が聞こえる……

 ……ああ、あそこに綺麗なフェアリーサークルが見える……

 ……あの太古の竜達も咆えている……

 ……悔しそうだなぁ……

 ……あれにしよう……あれがいい……

 ……あれこそ我々に相応しく思うぞ!……


 化石達がキラキラと銀色に輝き出す!

 化石だけではない、粘土や樹脂のレプリカも輝き始めた!


 ビキビキ、ゴリゴリと異様な音を立て、骨格標本に血肉が満ち始める!

 空洞だった眼窩に血の通った瞳が宿る。


 そして、その母親にゴブリンが鋭い爪を突き刺そうとした瞬間!


「がぶ!」


 アンキロサウルスがゴブリンの腕に噛みついた!


 ……ガアアアッ!?……


 ゴブリンはその牙だらけの口から、驚きの悲鳴を吐き出す!

 アンキロサウルスの黒々とした眼は怒りに満ち、筋肉を脈動させゴブリンを投げ飛ばした! 

 そして尾のハンマーが唸り、侵入者を粉砕していく!


 次々に動き出す太古の竜達!それはもう、骨格の標本ではない!

 銀色の光はあらゆる展示物に宿り、太古の生物が蘇る!

 博物館の壁を突き破り、町に出て行く恐竜達!


 ゴブリン狩りだ!


 ザリガニの怪物を軽く踏み潰し、咆哮が響き渡る!


 町で人気の博物館は、難攻不落の砦になった。


 傷ついた母親に近づいてくるアンモナイト。

 ぺたぺたずるずる。

 不思議な足音である。


 ……アンモって陸上歩くんだっけ?……

 ……あ!……


 その触手を伸ばし、怪我人を次々に癒やしていく。


 ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇


 ……何でも聞いた話によると、北極と南極が入れ替わったそうだ。

 その影響で、全ての電子機器が壊れ、地球の周りを回っていた衛星やら、スターダストが地上に全て降り注いだらしい。

 発電所が止まり、交通機関が世界規模で麻痺した。

 異世界からの侵略がはじまり、世界はひっくり返った。


 そんな中、蘇った太古の竜達が暴れ周り、ゴブリンどもを食い散らかす町があった。

 もはやこの風景は日常である。


 ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇


 すりすり。


 アンキロザウルスが母親に硬い頭を擦り付ける。


「ありがとう、皆をたすけてくれて……」


 ここで一つ疑問が湧いた。

 いや疑問は一つではないのだが、大事な疑問だ。

 彼女は聞いてみることにした。


「ねぇ、アンキロちゃん、あなたはどんな声で鳴くの?」

「アンキロ!アンキロ!」


 驚いたのは、彼女に抱きしめられていた男の子である。


「えええっ!?がおーじゃないの!?」

「ないみたいね」

「あ…おば……お姉さん!たすけてくれてありがとうございます!」


 あら、私、まだお姉さんで通用するのかしら?とか考えているお母さん。

 そこにどしん、どしん、と現われるステゴサウルス。


「お前はなんて鳴くんだい?ステゴザウルス!」


 恐怖も何も感じず、ただ大好きな恐竜に話し掛ける男の子。


「ゴザル、ゴザル!」


「「うわぁ、まじかぁ……」」


 お母さんは思った。

 パパさん、嘘つきではなかったみたい。


 そして月日は流れる。


 今日もその母親は小高い丘に立っていた。

 恐竜博物館の横に設置されている無駄に広い公園だ。

 今ではとんでもなく役に立っている。

 人々が暮らし始めたのだ。


 いつも同じ方向を見て涙する母親。

 その先には花の都がある。

 大丈夫だろうか、知る術がない。

 無事だとは思う、だが。

 そしてその足下には、いつもアンキロサウルスがいた。


 その日はいつもと違い、アンキロサウルスが勇んでいた。

 アンキロサウルスは母親にすりすりすると、振り向かず歩き出した。


 ベシベシ。


 アンキロサウルスは尾のハンマーで大地を叩いた。


「ああ、会いに行くんだ」


 アンキロサウルスはしっかりした足取りで、花の都を目指し歩き始めた。


 月日はさらに流れる。


「覚醒しても、心臓病はそのままなの?」

「ああ、だけどもうオヤジの年齢は越えたよ」


 少年は立派な大人になっていた。


「トリのヤツ、いい加減に起きろってんだ!いつまで寝てやがる!」

「だよね」

「オトネも!白鳥さんもっ!」

「だよねぇ」

「せめてあいつらが目覚めるまで、死んでたまるか!起きたら、俺達の苦労話、山のように聞かせてやる!」

「だよね!」


 ゴブリンを斬り伏せる屈強な男。

 だがアンキロサウルスの目には、あの日、あの時の少年にしか見えない!

 少年を見つけてアンキロサウルスは、喜び勇んで走って行く!

 そして雄叫びをあげた!


 ……アンキロ、アンキロ!……


        番外篇 おわり


以上、番外編でした。 

はい、何でも登場します。

世界がひっくり返った話しですから。

そう、なんでもアリです。

では本編は夏再開予定です。

もちろんアンキロちゃんも登場します、楽しみにお待ち下さい。


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