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破滅世界の俺、エルフ。(2025.12)  作者: MAYAKO
第一章 日常

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第七一話 番外編 博物館の竜 前編     

番外篇、投稿です。


 その博物館は小さな町の博物館。

 2階建てで、中は吹き抜けだ。

 それは大きな恐竜の化石を展示するため。


 休日となると、列が出来るくらい沢山の人が集まった。

 家族連れも多く、小さな子供達はその化石の大きさに圧倒され、ある者は怖がり、ある者は大感動した。

 展示物は多かった。

 ここぞとばかり詰め込まれた一分の一サイズの恐竜達。

 当然、オリジナルもあればレプリカもある。

 しかしそんなことは気にしていられない、それらは圧倒的な存在なのだ。


 ……でかい……

 ……大きい……

 ……うそだ……

 ……こんなの、いたの?……


 ティラノサウルス、ステゴサウルス、トリケラトプス、プテラノドン、有名無名の巨大な恐ろしい竜。あるものは天井から吊され、あるものは捕食のポーズをとる。

 それらは、見る者に感動と驚きを与える。

 恐ろしい牙だらけの口も鋭い爪も、子供達にとっては格好いい武器なのだ。

 遙か過去に思いを馳せる特別な場所、博物館。

 子供達の、いや皆の憧れの場所だ。


「お前、アンキロザウルス好きだよな」

「うん、カッコいい!」


 一組の親子が熱心にアンキロサウルスの化石を観察している。

 父親は30代後半、子どもはまだ就学前のようである。


「ねぇ、パパさん」


 その子どもは父親のことをパパさんと呼ぶ。

 母親が、パパさんと呼んでいるからだ。


「なんだ?」

「アンキロサウルスだよ」

「俺はアンキロザウルスって習ったんだ!」


 (こだわ)りがあるようである。


「あとね、アンキロサウルスって、どんな鳴き声なのかな?」

「そりゃお前、アンキロ、アンキロだろ?」

「ほんと!?」


 かなり驚くチビちゃん。


「ああ、ホントさ」

「じゃ、ステゴサウルスは?」

「ステゴザウルスは……ゴザル、ゴザルだよ」


 この時、子どもは思った。


 大人って信用できないっ!


「じゃチタノは?」

「チラノは大きくて肉食だからガオーだろ」


 子どもは確信した、大人は適当でイイカゲンだ。

 そして誓う。

 オリはこんな大人には、ならないっと!


 家に帰っても恐竜の話しは続いた。

 母親に報告しているのだ。


 ……それでね、パパさんがね……アンキロ、アンキロって言うんだよ!……

 ……それは、どうかしら?……

 ……おかしいよねぇ……


 料理をしながら受答えをしてくれる、優しいお母さん。

 そう、チビちゃん、自慢のお母さんである。


「今度、おかさんも一緒に行こうよ!」

「お母さん、恐竜怖いの、あの大きさ、牙、足が竦んじゃうわ」

「ええぇ?大丈夫だよ!噛みついたりしないよ!オリの大好きなアンキロサウルス紹介してあげるからさぁ」


 まるで彼女でも紹介するように話す、アンキロサウルス大好きのちびちゃん。


 時間さえあれば恐竜博物館に足を運ぶ親子。

 そしてついに年間パスポートを手に入れる。

 恐竜の化石が所狭しと、何体も展示されている特別な場所。

 何回来ても、何度見ても飽きない。

 少年の夢は膨らみ続けた。


「飼うんだったらアンキロがいい、お庭の草を食べてもらおう」


 この子は何を言い出すのだ?と両親は思った。


「チタノは大きいからダメだ、お家に入らないし、お外は可哀想」


 犬猫存在?


「それにお外で、皆を食べたら警察に怒られるし」

「おい、飼うつもりか?」


 父親が笑って尋ねる。


「え?飼ったらダメ?アンキロちゃんは暖かい原っぱにいるんだって」


 少年は小学校2年生まで本気でアンキロサウルスを飼う気でいた。

 そして父親から衝撃の事実を聞かされる。


「恐竜はもう遙か昔に絶滅しているぞ」

「うそだ、骨があるじゃん」

「そう、骨、化石だけだ」


 少年は声をあげて泣いた。


 その日から、更に博物館に通う回数が増えた。


 文字を読むようになったのだ!


 そう、少年は何年も博物館に通いながら、恐竜の名前以外、一切文字、説明文は読んでいなかったのだ!

 その小さな博物館は今日も大人気だった。


 だが、そこにあの親子の姿はなかった。

 季節が変わり、一年が経った。


 ふらりと現われる少年。


 少年は歩き慣れた足取りで、博物館内のアンキロサウルスを目指す。


「よう、久しぶり」


 いつもの場所にアンキロサウルスはいた。


「パパさんが病気で死んだんだ、心臓の病気。おかさん、毎日泣いているよ、オリも悲しい」


 アンキロサウルスの化石は黙して動かない。


「それでさぁ、オリも同じ心臓の病気なんだって、遺伝だってさ」


 悲しみが重なり、少年の眼に涙が膨れ上がる。


「とても珍しい病気で薬が無いんだって。お金にならないと薬を作らないらしい……オリ、お金嫌いだ……」


 少年は周りを見る。


 視線を感じたのだ。

 まるでティラノサウルスやステゴサウルスがこっちを見ているような気がしたのだ。


「アンキロちゃん、皆!また来るね、今日はオリの話し聞いてくれてありがとう……」


 少年はパパさんの思い出と共に、博物館内を一周りすると、静かに家路についた。


 ここは少年にとって、特別な場所なのだ。


第七二話 番外編 博物館の竜 後編 は30分後くらいに投稿です。

少々お待ち下さい。

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