第六七話 番外篇 北からの訪問者 中編
今晩は。
投稿です。
この二人、周囲から見れば異質であった。
ナマハゲの一族は子供でも170㎝は軽くある。
この一族は決してイジメなどしないが、周囲は違った。
人族や妖精族、ドワーフの子供達が小さい二人をからかい始めた。
それは段々とエスカレートしていき、一方的な暴力になった。
「やめな、お前らそれじゃ外の(結界の外のことです)ゴブどもと変わんねぇだろ」
ティブイが注意する。
それは警告でもあった。これ以上はするなよ、と。
「……悪い子戒める、ナマハゲ一族のオリ達が、イジメに遭うとはこれ如何に?」
面白がり屋のベニトラは、誰とはなしに問い掛ける。
「おねぇちゃん、逃げる?それとも?」
「……」
いつもは返事をしてくれる姉が、最近はしてくれない。
何を考えているのだろう?
ベニトラはそっちの方が心配である。
……なんだこのチビ!……
……戒める?できるのもか!……
10人近くいる人族、妖精族の子供達。
「……悪い子はいねぇがぁ……」
ベニトラが呟く。
その目は真剣で、妖しく光っていた。
みな笑ったが、その笑いが一瞬で恐怖に変わる!
辺りが真っ暗になったのだ!
陽は高く昇っているが、暗いのだ!
……え?……
……ひっ!?……
そしてボコッ!と大地から、鬼の生首が無数に現れる!
……わるいごはいねぇがぁあああ……
青白く光り、飛び交う鬼の生首!
……ひいいいいいいいっ!?……
……ぎゃあああああっ!……
走り出し、逃げ去るが思うように動けない!悪夢の感覚だ!
鬼の生首は、それぞれの子供に憑いて飛んで行く!
家に帰っても生首は家の周りを飛び交い、時々窓から中を覗く!
それは、もう悪いことはしません、と誓いを立てるまで何日も続いた。
さて、この子達の親はどうしたか?
親はナマハゲの一族に猛抗議したが、ナマハゲ達はどこ吹く風ぞ。
「お前の子等は、それだけのことをしたのだ、あれは応じ返しの術、100の悪行は100の報いを受ける、99でも101でもない。ちゃんと育てないと心を異界の者に喰われ、ゴブリンになるぞ!」
そう言って、あとは無視した。
これ以降、イジメは無くなった。
ベニトラは両親と田んぼ仕事の帰り、姉を見つける。
今日も姉は山の方を向いている。
「なぁ、おねぇちゃん、何を見ているのだろう」
「……」
両親は答えない。
何か知っているようだが。
家では、ちゃんと夕餉が用意してあった。
姉は抜かりないのだ。
食事後、ベニトラは姉に尋ねる。
「なぁ、おねぇちゃん、何を見ているんだい?いつも山の方を見ているけど」
「……花の都に行きたい」
「え?」
「あそこに、私を待っている人がいる……いや、私が待っていた人?」
「え?何を言っているんだい?花の都?伝説の街じゃん!」
姉はこの街から出たことが無い。それなのに待っている人?この姉は何を言っているのだ?ベニトラは困惑する。
「最近親がうるさい!結婚しろとか、嫁に行け婿をもらえ?とか。私はやることがある、花の都に行きたい」
「花の都に誰がいるんだい?」
「オトネくんよ」
「オトネ!?……誰だよ!それ!」
この姉は、何を言っているのだ!?
ベニトラはとんでもなく心配になる。
どうする?シャーマンに聞いてみるか?
あ、シャーマンはオリのばぁちゃんで、もうこの街にはいないのだ。
「ん?まて……聞いたことがあるぞ、その名前!」
ベニトラは考え始めた。
「そう、オトネくんよ!」
姉は涙ぐみ、遙か山向こうの地、花の都に思いを馳せる。
「あ!?オトネって、数百年前の大侵攻の時、異界のラスボスと戦った戦士の一人だろ?」
「そう、そのオトネくん、もう起きているのかなぁ……逢いたい……グスッ……」
いつから我が姉はメンヘラになったのだ?
会ったこともない英雄に想いを寄せる?
ベニトラは、それ以上何も聞けなかった。
次回サブタイトルは 第六八話 番外篇 北からの訪問者 後編 の予定です。
……たぶん、あと1話では終らないと思います。
サブタイトル、どうしよう?
毎回ご愛読ありがとうございます。




