第三十話 弓
今晩は。
投稿です。
「門王さま」
「なんだ?トリよ」
「これだけの英雄というか精霊が集うということは、これから先、とんでもない敵が待っているのでは?」
アンキロちゃんだってそうだし。
「……それはお前が確かめることだ」
ああ、言えないくらい大事なことなんだ。
「だが、一つだけ教えてやる」
お?
「お前の国、球州には世界でも稀な山が聳えておろう?」
「え?」
「たぶん、カルデラのあの山ばい」
「その山の、火山の力を通して外妖が侵略してきた」
「!」
「外妖の本拠地は球州ということですか?」
「……」
門王は話さない。
いや、話せないのであろう。
このことは、俺達がこれから調べていかなければ、いけないことなんだ。
でもそこまで言ったら、間違いなく本拠地は球州やん!
「オトネ、西へ向えば向うほど敵が強くなるらしい」
「そげんごたる」
「いつ出発するの?」
「今から」
「「!」」
「武器はトリくん」
「取敢えず、勇気が一つだけある」
「……はっ!なんば武者んよかこつばいいよるとか?」
「ははっ、いつ死ぬか分からない旅だよ、カッコいいセリフの一つくらい言いたいよ」
「この弓を持っていけ」
差し出される弓と矢。
矢筒の矢は全部で8本。
弓はそれ程大きくない。
「矢はどんなに使っても、一晩経てば8本になる」
「え?」
「新品の矢になり、矢筒に戻る。そしてこの弓は我を滅ぼした弓だ」
「!」
「ふふっ……その弓を我に預けるとは、なんとも剛毅なお方よ……この弓を持っていけ、きっとお前の役に立つ」
「なんか怖いんですけど?」
「ああ、この弓は恐ろしくも頼もしい弓じゃ、我らが名付けることもできぬ高貴な弓、粗末にするでないぞ」
「いいんですか?そんなとんでもない弓、俺が使っても?」
「お前に渡すように言われておる」
誰からとは聞けない。
多分聞いてはいけない気がする。
その弓を、目を細めて見ているアンキロちゃん。
そんなアンキロちゃんを見ていると、弓の名が浮かんだ。
「……約束の弓……ですか?」
「!……おお、そうじゃ、これは約束の弓だ、大事にするように」
俺は門王さまから、その約束の弓を受け取った。
「!!!!!!」
バチッ!と静電気みたいな衝撃が全身を襲った!
いや静電気なんてモノじゃない!
息が止まるような熱量?力の固まり?
これは本来、人が使っていいものではない!
そして弓から伝わる猛々しさと高貴さ、神々しい?
ああ、この弓の持ち主は女性だ!
それもとんでもなく優しく、途轍もなく強い朝日のような方だ。
誰だろう?
そして朝日は反転し、銀色の月なる。
闇に浮かぶ月。
全てを影から支える月、決して表にでることがない静かなる銀色。
ああ、この弓は月の弓でもあるんだ。
とても静かなる月、誰もその恩恵に気づかない。
それでもあの月は今日も空に浮かんでいるのだ。
「門王さま、たしかに約束の弓受け取りました、ありがとうございます。今より西を目指します」
「うむ、無事を祈っておるぞ、何かあったら呼べ、駆けつけようぞ!」
「この地は任せておけ、ととさまや無数の精霊が集う地だ、安心して西へ向うがよい」
「では、行って参ります」
俺は振り返らず歩き始めた。
……アンキロオオオオオオオッ……
アンキロちゃんが咆え、オトネと白鳥さんが追い掛けてきた。
俺はなりふり構わず西へ向けて走り出した!
次回サブタイトルは 第三一話 では、皆で西へ の予定です。
毎回ご愛読ありがとうございます。




