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第44話 魔界と人間界への緊急記者会見

セシリアとの婚約が正式に決まったその翌日、ディアボロスは、四天王たちを招集し、今後の方針について話し合いの場を設けた。


「――というわけで、俺は人間界との和平と、セシリア殿との婚約を、同時に発表しようと思う」


会議室に集った四天王たちは、その宣言を聞き、しばし静まり返っていた。


「な、なんと……! ついに、我が君が……!」


ガルドスが、感激した様子で涙を浮かべた。


「これぞ、我が君が身を挺して成し遂げられた、真の勝利の証ですな!」


リリアーナも、扇の陰で、感慨深げに頷いた。


四天王たちの間では、依然として「魔王が命がけの交渉の末、聖女を懐柔した」という誤解が、確固たる真実として根付いたままだった。もっとも、この期に及んでは、ディアボロス自身も、その誤解をあえて正すことに、さほど意味を見出せなくなっていた。


「魔界と人間界、双方に向けて、正式な記者会見の場を設けたいと思う。手配を頼めるか」


「かしこまりました! 直ちに準備に取り掛かります!」


ファウストが、力強く頷いた。


 



 


数日後、魔界と人間界の境界に位置する、中立地帯の広場に、両世界からの報道関係者や、各国の要人たちが、続々と集結していた。


「本日は、魔王ディアボロス様より、重大な発表があるとのことで――」


「聖ルスニア王国からも、大聖女セシリア様が、同席されるという話ですが」


会場には、これまでにない緊張感と、期待の入り混じった空気が漂っていた。


やがて、壇上に、ディアボロスとセシリアが、並んで姿を現した。


漆黒の髪と紅蓮の瞳を持つ、絶世の美丈夫と、プラチナブロンドの髪をなびかせる、聖女セシリア。その二人が、共に壇上に立つ光景に、会場は大きくどよめいた。


「静粛に」


ディアボロスが、落ち着いた声で告げると、会場は瞬時に静まり返った。


 



 


「――皆に、重要な発表をする」


ディアボロスは、集まった人々を見渡しながら、力強く語り始めた。


「まず一つ目。長年にわたり、人間界と魔界は、争いを続けてきた。だが、今この時をもって、俺は、人間界との完全なる和平を、正式に宣言する」


会場が、大きくどよめいた。


「な、なんと……!」


「魔王が、和平を……!?」


「これまでの戦いは、双方に多くの犠牲をもたらしてきた。だが、これ以上、無益な争いを続ける理由は、もはやない。魔界は、これより人間界との共存の道を歩む」


ディアボロスの宣言に、会場からは、驚きと、そして安堵の声が、次第に広がっていった。


「そして――もう一つ、皆に伝えねばならぬことがある」


彼は、隣に立つセシリアの方へと視線を向けた。


「俺は、この聖女セシリア殿と、正式に婚約することを、ここに発表する」


その瞬間、会場は、これまで以上の大歓声と、そして戸惑いの声に包まれた。


「せ、聖女様が、魔王様と……!?」


「まさか、そんなことが……!」


「いや、しかし、これで本当に、世界に平和が訪れるということでは……!」


 



 


会場の混乱をよそに、セシリアが、一歩前に出て、皆に向けて微笑みかけた。


「皆様、驚かせてしまい、申し訳ございません」


彼女は、これまでにない、落ち着いた聖女としての威厳を纏いながら、続けた。


「私は、ディアボロス様と共に、これからの世界を、人間と魔族が手を取り合って歩んでいける、真に平和なものにしていきたいと思っております」


その言葉に、会場の空気が、次第に落ち着きを取り戻していった。


「聖女様が、そう仰るのなら……」


「確かに、あの規格外の聖女様のお相手として、魔王様ほどの器の方は、他にいないかもしれぬ」


人々の間に、次第に、この発表を受け入れようとする機運が、静かに広がり始めていた。


もっとも、その受け入れの背景には、「あの聖女を相手にできるのは、魔王くらいしかいないだろう」という、ある種の諦観にも似た納得が含まれていたことは、想像に難くない。


「では、これより、両世界の和平と、我々の婚約を祝し、しかるべき準備を進めていきたいと思う」


ディアボロスが、そう締めくくると、会場からは、割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。


こうして、世界を揺るがす大発表は、幾多の驚きと戸惑いを伴いながらも、多くの人々に受け入れられていくこととなったのだった。

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