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第42話 魔王、正体を明かす時

翌日、ディアボロスは、セシリアを魔王城の一室に招き入れていた。


「ディオ様、今日は改まって、どのようなご用件でしょうか」


セシリアが、少し緊張した様子で尋ねた。


ディアボロスは、深く息を吸い込むと、これまでの覚悟を胸に、静かに口を開いた。


「セシル。貴殿に、伝えねばならぬことがある」


「な、なんでしょう」


「これまで、貴殿には、変装した姿でしか会ってこなかった。だが――」


彼は、手を胸元へとやると、これまで纏っていた黒髪の鬘と、変装用の魔法を、一気に解除した。


まばゆい光が、彼の全身を包み込む。


その光が収まった後、そこに現れたのは、漆黒の髪と紅蓮の瞳を持つ、絶世の美丈夫の姿だった。これまでの地味な黒髪の青年とは、まるで別人のような、圧倒的な気品と威圧感を纏っている。


「――俺の、本当の姿だ」


ディアボロスは、静かに、しかし確かな声で告げた。


「セシリア殿。俺は――魔界を統べる魔王、ディアボロスだ」


 



 


その告白に、セシリアは、大きく目を見開いた。


「デ、ディオ様が……魔王様、だったのですか……!?」


彼女は、しばし言葉を失ったまま、目の前に立つディアボロスの姿を、まじまじと見つめていた。


「驚かせてしまい、すまない」


ディアボロスは、少し申し訳なさそうに続けた。


「貴殿が最初にこの城に攻め込んできた日、俺は生き延びるために、貴殿に『婚活の練習相手』を提案した。それは、正体を隠したままの、いわば方便だったのだ」


「そう、だったのですね……」


セシリアは、静かにそう呟くと、これまでの日々を思い返すように、視線を落とした。


石畳を粉砕した待ち合わせの日。光る弁当を、涙目になりながらも完食してくれた彼。試着室から出てきた時の、あの整った姿。そして、中庭で交わした、真剣な告白。


(あの時の彼は、いつも、私を気遣ってくれていました。それが――魔王様であったとしても、その優しさは、変わらないものだったのですね)


セシリアは、ゆっくりと顔を上げると、これまでにない、穏やかな微笑みを浮かべた。


 



 


「あの……セシリア殿」


ディアボロスは、彼女の反応を窺うように、慎重に尋ねた。


「その、正体を偽っていたことに対して、怒りは感じていないのか」


「怒り、ですか?」


セシリアは、少し首をかしげた。


「いいえ、少しも」


「なぜ、そう言い切れるのだ」


「だって」


セシリアは、真っ直ぐに彼の目を見つめながら、答えた。


「私が好きになったのは、ディオ様――いいえ、ディアボロス様の、優しさや、不器用さや、私のことを真剣に考えてくださる、そのお人柄そのものですから。それが、魔王様であろうと、一介の青年であろうと、私の気持ちが変わることは、ありません」


その言葉に、ディアボロスは、思わず息を呑んだ。


(この女は……本当に、真っ直ぐだな)


彼の胸の内に、これまでにない、深い安堵と、そして愛おしさが、じんわりと広がっていった。


「セシリア殿……。ありがとう」


その言葉に、ディアボロスの胸の内に、これまでにない、深い安堵と、そして愛おしさが、じんわりと広がっていった。


 



 


「――さて」


ディアボロスは、改めて表情を引き締めると、続けた。


「俺は、貴殿に伝えねばならぬことが、もう一つある」


「まだ、何か?」


「ああ。俺は、人間界と魔界の和平を、正式に宣言しようと思っている。そして――」


彼は、一拍置いてから、真剣な眼差しで告げた。


「貴殿を、正式に、俺の妻として迎えたい」


その言葉に、セシリアは、大きく目を見開いた。


彼女の頬が、みるみる赤く染まっていく。


「ディアボロス様……」


「これは、正式な求婚だ。改めて、返事を聞かせてほしい」


セシリアは、しばし言葉を失ったまま、彼を見つめていた。


やがて、彼女の瞳から、大粒の涙が、静かに零れ落ちていった。

ここまで読んでいただいた方、誠にありがとうございます。

実は、当初より短めの話を予定しており、50話で完結の予定です。

残り8話。楽しんでいただけると幸いです。

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