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幼馴染領主を、処刑される運命から救いたくて  作者: myano


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第5話 初めての登城

 次の日、サディスはレイナの居城に呼び出された。

 どうやら家臣たちとの顔合わせを行うようだ。

 城に向かって歩いている途中、サディスは後ろから声を掛けられる。

「サディス様、おはようございます! ついにこの時が来ましたね!」

 振り向くと、そこにいたのはサディスが見たことの無い少女だった。

「アンタ誰?」

「うちですようち! ミルです!」

「ミル!?」

 今日のミルは昨日までのローブ姿とは異なり、オーソドックスな服装をしていた。

 ミルといえばローブという認識だったので、サディスは話しかけてきた相手がミルだと気づかなかったのだ。


(こいつ、こんな顔だったのか。……黙ってたら可愛いのにな)

 サディスが内心残念な気持ちでミルを見ていると、彼女はその視線に気づいたようだ。

「……何ですか、その表情は。まさか初めて見るうちの顔にときめいちゃいましたか!?」

(そういうところだぞ)

 サディスはミルに聞こえないように、小さくため息をついた。



 レイナの居城に着いた二人は、会議用の部屋に案内される。

 部屋の中央には大きな円卓があり、既に10人ほどの男女が席に着いていた。

 二人は目立つのを避けるべく、入り口すぐの席に座る。だが、どうしても好奇の視線を集めていた。

「あれ? お前、もしかしてサディスか? ハーク家の」

 サディスの隣に座る青年が、サディスに気づく。

 だが、サディスは青年が誰なのか分からなかった。

「は、はい。ええと……?」

「悪い悪い。ネスト・フレンデルだ。最後に会ったのは10年以上前だよな」

(ああ、ネスト兄さんか。昔、オレたちとよく遊んでくれたっけ)

 彼は、サディスがこの街に住んでいた頃に仲良くしてくれた、年上のお兄さんだった。

「お久しぶりです。数日前に修行を終えて戻ってきたんです」

「そうかそうか。それにしても大きくなったなぁ……」

 ネストはそう言って目を細める。

 話が切れたタイミングを見計らったかのように、ネストの隣に座る男性も会話に加わってきた。

「ところで、サディスの隣にいるお嬢ちゃんは誰だい? その……アレか?」

「違いますよ。彼女はミル・ディーパ。昨日仕官した、レイナ様の部下です」

「うちはサディス様の――」

 ミルが訂正しようとしたが、その声はネストの笑い声でかき消される。

「ははは、サディスに限ってそれは無いでしょう。仮にそうならレイナ様が黙っていませんよ」

「それもそうか。わはは」

 どうやら、彼らはサディスが恋人を連れてくるはずがないと思っているようだ。

(モテないって言われている気分だ……)

 だが、恋人が居ないのは事実なので、サディスは反論しない。

 その隣では、ミルが不機嫌そうに口を尖らせていた。



 参加者が全員揃い、評定(ひょうじょう)が始まった。

 冒頭、レイナがサディスとミルを紹介し、二人が配下に加わったことを説明する。

 その説明が終わると同時に、家臣の一人が手を上げた。レイナが発言を許可すると、彼は言葉を選ぶように話し始める。

「レイナ様にお尋ねいたします。貴女は以前、サディス殿が戻ってきたら軍師を任せたいとおっしゃっていましたが、その気持ちにお変わりはございませんか?」

「ええ。彼はそのために修行に出ていましたので」

(オレが軍師!?)

 当事者でありながらその話を知らないサディスは、椅子から転げ落ちそうなほど驚いた。


「ですが、サディス殿は領地に戻って間もないので、現状を把握する時間が必要でしょう。それに実力も未知数ですので、今しばらく様子を見られてはいかがでしょうか?」

 出席者の約半数が彼の言葉にうなずく。残りの半数も不安げな表情を浮かべていた。

(どうやら、オレが軍師に就任するのを歓迎してくれる雰囲気ではない。何か実績をもって認めさせないといけないな)

 サディスはそう決意すると、レイナから発言の許可を貰って話し始めた。

「レイナ様、オレもその意見に賛成です。何の手柄も立てていない新参者が軍師になったとしても、誰もついてこないでしょう。最悪、スモーフ家が瓦解(がかい)してしまいます」

「そ、それは……」

 レイナが悲しそうな顔で俯く。サディスは一瞬だけ優しい視線をレイナに送ったのち、表情を引き締めて高らかに宣言する。

「ですので、1か月以内にみなさんに認めてもらえるだけの手柄を立てましょう。そのときはオレを軍師に取り立ててもらえますか?」

「分かりました。みなさんもそれで納得いただけますか?」

「良いでしょう。お手並み拝見といきましょうか」

 サディスの提案に反対する者は居なかった。



 ◇



 ところ変わって、ここはスモーフ家の西側にある国の本拠地。

 この国の当主と重臣たちが戦略会議を行っていた。

「やはり、ぼくらが単独で攻めてもスモーフ家の本拠を落とすのは難しそうだね」

「はい。両家の兵数はほぼ同じですので、まともにぶつかると我々の被害も大きくなります。そこを別の国に攻められてはひとたまりもありません」

「うーん、残念。もっと兵がいれば、すぐにでもスモーフ家を滅ぼすことができるのに」

 当主はそう言って肩をすくめる。だが、すぐに思い直したように手を叩いた。

「まあ良いや。クシュー・スモーフ亡き今、スモーフ家にぼくを楽しませてくれそうな人間はいない。そんな相手と正面から戦う必要は無いね」

「では、方針はこれまで通りですか?」

「うん。ルーザス家がスモーフ家に攻め込み次第、ぼくらも便乗しよう。いつでも出撃できるよう、準備を怠らないように」

 重臣たちが「かしこまりました」と言って頭を下げる。

 それを見た当主は、にこりと笑った。

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