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幼馴染領主を処刑される運命から救いたくて  作者: myano


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第4話 念願叶う

 翌日。サディスは占い師とともにレイナの居城を訪ねていた。

 二人は使用人によって城内の応接室に通される。

「ここがスモーフ家の城内ですか。……なんだか緊張してきました」

 占い師はそう言うが、フードを深く被っているので口元以外は見えない。

「アンタでも緊張とかするんだな」

「うちを何だと思ってるんですか! こう見えてもサディス様と初めて話すときも緊張してたんですよ!」

 サディスは1か月ほど前のことを思い出す。

「……全然緊張しているようには見えなかったぞ」

 フードのせいで顔は見えなかったが、少なくとも声や身体が震えている様子は無かった。


「それより、フードで顔を隠すのはダメじゃないか? レイナ様も気を悪くすると思うぞ」

「意外とそうでもないですよ。この格好は私の正装ですので、今まで注意されたこともありません」

(それは単に大目に見てくれただけでは?)

 そんなやり取りをしていると、応接室の扉が開く。入ってきたのはもちろん、レイナだった。

 彼女は占い師を見て怪訝な表情を浮かべる。

(やっぱりフードは外させるべきだったか……?)

 だが、すでに手遅れだと考え、成り行きに身を任せることにした。


「初めまして。レイナ・スモーフです」

「レイナ様、お会いできて光栄です。ミル・ディーパと申します」

(ミル・ディーパ……。やっぱり聞き覚えが無いな)

 サディスは内心で首をかしげる。


「それで、占い師さんがどういったご用件でしょうか? ……サディスと一緒に」

 レイナが凍てつくような目で占い師を見る。

 だが、ミルは物怖じすることなく来訪の理由を告げた。

「うちはレイナ様に占いの結果をお伝えするべく参りました」

「はあ……。頼んだ覚えはありませんが?」

「まあそうおっしゃらず。それに、サディス様のお願いですので」

「……サディスの?」

 レイナの目がさらに鋭くなる。彼女は非難するような眼をサディスに向けていた。

 その視線はサディスが初めて見るほど冷たいものだったので、彼は思わず目を逸らした。


「はい! この地とレイナ様の安寧のために何が必要かを占ってほしいと」

「サディスは占いなんて信じるタイプじゃないと思いますが……」

(さすがレイナ様だ。オレのことをよく分かっている)

 二人の会話を見守っていたサディスの表情が緩む。

「それは……サディス様を変えるほどの出会いがあったのかもしれませんね」

「ふぅーん」

(おい! レイナ様を怒らせてどうするんだ!)

 レイナが面白くなさそうな表情になったのを見て、サディスの内心は穏やかではなかった。


「それで、占いの結果を教えていただけますか?」

「承知いたしました。まず、この地についてですが、外敵に注意せよとの結果が出ました」

「……そのくらいは私が占っても分かりそうですね」

 どうやらレイナもミルの言葉を鵜呑みにするつもりはなさそうだ。

 サディスは密かに安堵する。

「そして、この局面を打破するためにはサディス様の力が必要であると出ました」

「……それぐらい私にも分かっていますよ」

 レイナが小さな声でつぶやいた言葉は、サディスたちの耳には届かなかったようだ。


「ここはサディス様と力を合わせ、この難局を乗り越えるべきかと存じます」

 ミルの言葉を聞いたレイナは一度深く息を吐く。

 そして、サディスたちを見据えた。

「お断りします。サディスは約束通り、18歳になるまで領地の外で修行してきてください」

(そんな……)

 サディスが愕然とした表情でうつむく。

 2度も帰参を拒否されたことで、レイナの意志の固さを実感してしまったのだ。


 ミルは小さく息を吐いて立ち上がると、サディスに向かって手を差し出した。

「仕方ありませんね。サディス様、一緒に行きましょうか」

「えっ……?」

 ミルの言葉に、レイナが驚いた表情を見せる。

「うちはもうサディス様をお支えすると決めてますので、18歳の誕生日までずっとおそばに――」

「ダメっ!」

 レイナが大声を出してミルの言葉を遮る。

「レイナ様?」

 サディスたちは面食らい、何も言えずに固まってしまう。

 我に返ったレイナは、二人の視線を受けてばつが悪そうに身をすくめた。

「……それ、二人で行かないとダメですか?」

「サディス様が修練しているのに、うちだけが遊んでるわけにはいきません。それに二人で修行した方が効率も良さそうですからね」

 レイナが真っ赤な顔をしてうつむき、苦悶の声を漏らす。

「…………サディスの帰参を、認めます」

 長い沈黙の末、ついにレイナが陥落した。

 こうして、サディスはスモーフ家に戻ることができたのだった。



 ◇



 その日の夜。レイナは私室で悶えていた。

「どうして、どうして私は……」

 サディスたちが帰ってからレイナはずっとこんな調子だ。

 そんな彼女を見かねて声を掛ける人物がいた。もちろん、侍女のシンシアだ。

「良かったのではありませんか? この難局を乗り越えるためには、サディス様のお力が必要になるはずですよ」

「そのくらい、私にもわかってますよ……」

 レイナは枕に顔を(うず)めてつぶやく。

 どうやら、頭では理解しているが、心が納得していないようだ。

 衝動的にサディスの帰参を認めてしまったので、気持ちの整理がつかないのだろう。


「それに、サディス様が他の女性に取られずに済みそうですし……おっと、これは失言でしたね」

 レイナは枕から顔を上げ、ジトっとした目でシンシアを見つめる。

「……わざとやってませんか?」

「はて。何のことやら」

 はたから見ると主従関係とは思えない二人だが、これが彼女たちの日常だ。

 シンシアは穏やかな目で妹のような主君を見つめた。

「ですが、きっとこれで良かったのだと思いますよ。昔の二人はずっと一緒でしたし、やっとあるべき姿に戻ったような気がします」

「そ、そんな……。お似合いだなんて……」

「そこまでは言ってませんからね?」

 頬を染めて変な動きをする主を見て呆れつつも、シンシアは「本当に良かったですね」と漏らした。

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